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森と林業の本

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2013/09/09

「健康」は「美味しい」なら……

テレビで食材の生産者を訪ねる番組見ていたら、某和牛を取り上げていた。

そんで「美味しいお肉をつくるためには、ウシにストレスを与えず、健康に育てること」と言っている。

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だからウシの生育環境にものすごく気をつかっている。繁殖農家と肥育農家を分けず、離乳させず本当の母ウシの乳を飲ませる。もちろん餌も気をつかい、運動もしっかりさせる。


ここで健康なウシ = 美味しい牛肉 という図式が描かれる。

で、すごく美味いらしい。とくに赤身が。こちら、見ているだけだけど(^^;)。一般に霜降り肉が美味しいとされるが、あれは病的に脂身を増やした個体だから、健康なウシと言えないように思えるが。

しかし、ウシは食べられるために生きているわけではない(キリスト教的考え方では、そうなのかもしれないが)。健康だったら、美味く感じられることは、生存のために役立つのか。進化論的には、美味しいと思われたら襲われて食われる確率が増えて、淘汰圧を受けそうな気もするが……。不味い方が生き残れるのではないか。

それとも、人の手による繁殖という遺伝子拡散戦術を採用したら、美味いことは生存・拡散に有利になるだろうか。果実とか穀類など、農作物はそうだなあ。

フォアグラのようにガチョウを無理やり太らせた、病的な肝臓を珍味とする食材もある。この場合、健康と美味はつながらない。やはり「珍味」であり、王道ではないのかな。。

さて、これを木材に当てはめる。

まっすぐ、すくすく伸びた木は、木目も乱れがなく、適度に寒暖の差があれば、年輪も締まる。それは優良木になるだろう。

しかし、風に揺さぶられ、雪に圧迫され、虫害・獣害に会い、ストレスだらけで生きた樹木は、ねじれたり曲がったり、傷だらけでこぶをつくりBC材になってしまう。

ただ、ときには奇跡のような美しい木目が描かれ、役物になる可能性も秘めている。

それを真似ようと、北山杉の人工絞り丸太のように、当て木をして無理に表面を凸凹にするのは、いわばフォアグラの生産である。つまり役物は珍味。

しかし、今は木材の質を問わず、また役物も好まない。となると、早くぶくぶく太らせたブロイラー生産的な樹木を大量に供給する方が求められているようなもの。

しかし、一方で地鶏が人気を呼んでいる。大量供給の時代から、品質にこだわる世相になっている。ブロイラー材だけでなく、平飼いの木材も必要ではないか。

……ゆっくり樹木の時間で進む林業の将来を読むのに、流行が早く移り変わる食の世界に当てはめて考えるのもいいかもね。

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コメント

生駒山をよく歩き回り、美味しくなってくださいまし。

「遭難」がストレスか、ストレス解消かが謎ではありますが。。

わ、わたしが健康になっても、美味しくないと思うよ……(>_<)。

でも、フォアグラ~人工絞り丸太にはなりたくないな。

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