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2013/11/06

吉野林業は量か質か

吉野林業と言えば、その材質の良さが有名だ。太くて完満の差が少なく、密で整った年輪。そして材の色合い。吉野杉は銘木と言われ、また低迷する今でも、森づくりなら日本一と自他ともに認めている。(今低迷しているのは売り方が下手なだけだ?)

が、私は以前からそれが疑問だった。本当に吉野の材は質を売り物にしていたのか? それが日本一の林業地と言われる根源なのか。

というのは、戦前の吉野林業の解説に、質を重視していた記述が見当たらないからである。むしろ計画的な森づくりと安定した出荷、そして商品開発と合致した材の提供……が評価されていたように思える。

つまり、古くからの森づくり(植林と育林)をしてきたおかげで、(明治時代は、全国的に山は荒れて木材不足が続く中で)蓄積が十分にあること、吉野は確実に材を出せることが、強みだった。

いわば、量の林業を展開していたように思えるのだ。

宮本常一 林道行政論集』という本がある。副題が~民族学の巨人 林道への遺産~とあり、出版元は日本林道協会だ。宮本常一の膨大な著作物の中から林道に関するものを集めたものである。

そこに、川上村(吉野)では、土倉庄三郎が道を開いた記述が載っている。そして基幹林道が完成すると、そこから木馬道が敷かれていき、筏流しからトラック輸送へと代わって行ったことを描いている。
どうやら明治後半から大正にかけて、林道をしっかり整備した林業地は、吉野が最初らしい林道先進地こそが吉野林業の特徴なのだ。

ただ戦争でトラックが減少したために、また戦後すぐは流送や馬車にもどってしまった。そのため吉野は木材を川で流しているというイメージが強くなってしまった。さらに木材価格の上昇で、少しでも林地を減らしたくない山主が林道を入れるのに抵抗した。

そして今や、吉野は林道があまり入っていない林業地として知られている。

ここで、見た目は量から質へと転換したのではないか。本当は、大量に安定して木材を供給する「量の林業」を指向していたのに、吉野材は質がいいから高く売れる「質の林業」を売り物にするようになったのではないか。。。。

今更、吉野に「再び量を指向せよ」というつもりはない。しかし、時代の流れと変遷をしっかり読まないと、昔から質を追求していたかのように唱えることになる。

ちなみに、大量安定供給体制をつくるために、計画的で理論的な森づくりを行わせ、結果として質のよい材を生産したのは間違いない。

それにしても、土倉庄三郎は木材搬出の重要性を昔から認識し、河川整備だけでなく林道を築き、木馬を導入し、五社峠にトンネルまで掘ろうとしたというから、やっぱり先見の明がある。いまだに認識していない林業家が多いのだから……。

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コメント

質問です。
最後部の記述→未だに認識していない林業家が多い===詳細というか、具体的に『どう言うことか』を(解説)教えてください。

単純に、自分の林地に道を入れたがらない山主が多い、ということです。道の通る分だけ林地が減るという理屈や、自分の山はまだ収穫期ではないから必要ない(周りの林地のことは考えない)、山は資産として持っているから道は必要ない(周りの林地のことは考えない)、木を伐ることなんてトンデモナイ! 木は生きているんだぞ……など(^^;)。

自分の森は自分で管理している(ぞぉ)という事ですね。そして、

何時伐採するかとか、その時の『手法』とか、誰に渡す(売る)とかも自身でも決める・・ということですかね。さらに、

水源涵養林として自治体(の管理下になり)からとやかく言われるのも、『余計なお世話!!』と言うのでしょうかね!?

回答頂きありがとうございます。(お陰で?!)またまた疑問も湧いてしまいました。森林は問題だらけですね。林政は大変ですね。

本当に「自分で」管理しているならいいんですけどね……。保有と経営は別次元で動いていますね。

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