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2014/02/26

旧関善酒店の木造架構

今回訪れた秋田県鹿角市は、「例年になく、雪が少なかった」そうである。

まあ、こんなことを書くとムカッと来る人もいるだろう(とくに関東甲信地方)が、実は北東北地方は雪が少なかったらしい。事実、私も地面が見えていて拍子抜けした。バスに閉じ込められることを想定して、水と食料買い込んだのに……。
もっとも、「今年、関東で降った雪の量が毎年続くのが本来の鹿角」らしい。つまり、豪雪地帯なのだ。

通常、豪雪地帯の通りに並ぶ家屋は、屋根が道に対して90度向くよう建設する。なぜなら、屋根の雪がそのまま道に落ちると、通行人に危険だからだ。

ところが、鹿角花輪の大通りでは、古い家屋の屋根は道と平行している。豪雪地帯としては異例なのである。その代わり、屋根の庇を長く延ばして、その下に通路を作っている。雁木づくりと呼ばれる雪の中の通り道だ。秋田では小道とも呼ぶそうだが……。

なぜか。それは鹿角の町並みは京様式だからだそうだ。

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実は、鹿角には江戸時代から多くの京都人が移り住み、京文化が花咲いたのである。

なぜなら、鹿角~能代地方には多くの鉱山があり、非常に景気がよかったから。そのため坑夫も豊かで、京都の商人が多くやってきて、そのまま居ついたためだ。その挙げ句、建築様式まで変えてしまったわけか。

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さて、上記と左記の写真は、旧関善酒店。そんな華やかな時代にお折るあった造り酒屋の本店だ。一度焼けたから明治の建築だというが、貴重な当時の生活を忍ぶことができる。

国の登録有形文化財に指定されている。

とにかく大金持ちだったから、嫁さんも大阪から迎えたとか、街の半分の土地を所有していたとか、いろいろ大金持ち話が伝わるそうだが、屋敷内は意外なほど質素。

金持ちぶりをオープンにしなかったのである。

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ここで注目すべきは、この本店の構造だ。巨大な屋根があるが、内部は2階建てで、そこに主家だけでなく奉公人もみな一緒に寝起きしたそうだ。そして、天井は吹き抜け。寒さより湿気を嫌ったからだそうだ。

おかげで、このとおり屋根裏の構造が一目でわかる。その巨大な木造架構造が見られるという意味で面白いが、ちょっと不思議に思わないだろうか。

実は、太い梁や柱があまり見当たらないのだ。秋田杉の本場に近いのに……。

説明によると、太い構造材は、意外と弱い。なぜなら接点が限られてしまうから。重さだけで支えることになり、大黒柱に負担をかける。むしろ、小割りした角材や板材を組み合わせた方が地震にも強く、重みも絶えることができる。

そして、丸太を小割りするのに手間がかかるうえに、築造も技術がいる。当然、お金もいる。

だから農家など「貧しい家」は、太い柱を使うが、「豊かな商家」は小割りした木材を組み合わせた構造にするのだという。この家の屋根組みは豊かさを表しているのだそう。

これは京の建築物にも通じるのだろうか? たしかに、京町家にそんなに太い材は目立たないが……しかし寺院建築は太さを求める。

う~ん、とうなってしまった。本当だろうか。ただ建築技法的には一理ある。貫構造にクサビを打ち込んだ接点が幾重にもなっている方が、横揺れなどを吸収できるだろう。これは筋交いを使わない伝統構法にも通じる。
東日本大震災では、震度5だったそうだが、とくに傷ついたところはなかったそうである。

この当たりは、建築の専門家の意見を伺いたいが、つい太い柱のある家の方が立派に感じてしまう感覚は意外と新しく、むしろ科学に反しているのかもしれない。

そして、太い木材を求める建築は、実は古臭いのだよ、と伝えれば、今後細い木を使った巨大木造建築に可能性を広げることもできるかもしれない。

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コメント

建築的な話は、大好きです。古代ヨーロッパ等では、開口を付けるために石造りの家は、大きな重い木材が重要視されていました。全て石で開口を作るアーチは、高度な技術も必要です。堅く重い木を渡しせば、簡単に開口を作ることができます。堅くて重い材が高価で取引されるのは、成長も遅いため生産量も少ないことと高度な技術がいらないため用途は多いためかもしれません。木材の技術が高度になれば、堅く重い木でなくても開口を作ることができます。
これは、現代木材技術でも言えます。小さな断面でも、技術力が上がれば、大きなスパンができます。そのためには、自重が軽く重さの割に強度が出る材料がこれからの材と言えるのです。全国にあった大断面集成材工場が姿を消したのも時代の流れだけでなくそれだけ、技術が上がったという皮肉な結果だと思うのです。

大きな木を使わないと建てられない、というのは技術がない証拠、という認識が広がれば、多少は変わるかもしれませんね。

そういえば、一世風靡した大面積集成材、最近見かけませんね。CLTはどうなるだろう。

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