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森と林業の本

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2014/03/20

FITバイオマス価格決定の裏側

昨日のバイオマスエネルギー・セミナー。

そこで話した内容について、講演後、参加者と懇談する中で面白いことが見えてきた。

現在のFIT(固定価格買取制度)におけるバイオマスのうち未利用材価格は、33,6円である。ただし、これは32円プラフ消費税5%の場合だから、4月より34,56円に変わる。

これをバイオマス白書から引用すると、次の通り。

Photo

未利用材のほかは、一般木材で24円プラス税、リサイクル木材で13円プラス税だ。

それはともかく、私は講演の中で説明したドイツのバイオマスFIT価格は、年々上がっているのだが、2014年で6,24ユーロセントである。これは、日本円でざっと8~9円。

日本の価格は、あまりに高すぎないか? 

また価格を決定する調達価格等算定委員会で、実際の事業者代表として参加した会津バイオマス発電所をつくったグリーン・サーマル株式会社が委員会で要望したのは、31,8円だった。また一般バイオマスの買取価格は25,2円、リサイクルバイオマスは14,5円と要望していた。この金額はかなり高い。
なぜなら、その当時の業界関係者の中では、(未利用材の)適正価格は20円程度ではないか、と言われていた。それくらいで採算が採れるだろうというのである。

しかし、これは業界側の要望なのだから、おそらく高めに出して、委員会ではそれより少し下の金額に落ち着くのではないか、と想像していた。それが駆け引きというものである。

ところがふたを開けると、どれも満額回答というか要望価格より高い。

それはなぜ? なんか裏があるのではないか。。。

そんな話を雑談していたのだが、すると妙に政府内部の動きに詳しい人がいた。

で、名刺交換すると、肩書は「前衆議院議員」。しかも裏に書かれた経歴によると、「二〇〇九年環境大臣政務官を務める」とある。つまり民主党政権でFITの策定に関わる地位にいたわけだ。事実、買取価格の決定の現場にいたらしい。(決定に関わったわけではない。)

もっとも、なぜバイオマスの価格が下馬評よりも高くなったかは知らなかった。

そこで私がこれまで聞いた幾つかの説を披露した。

たとえば「原発再稼働に向けて、再生エネルギーを割高に設定したかった」説。これに対しては「それはないなあ」という。

反応したのは、「太陽光の価格が高く設定されたので、ならばとバイオマスも高くしろと農水省系が頑張った」説。

「あ、それならあり得る」という。その場の雰囲気は、各省庁が自らの管轄のものをいかに高く設定するか競っていたらしく、「太陽光がそんなに高いなら、もっと上げろ」とねじ込むことは十分考えられる……そうだ。

なるほど。そうした次元で政策は決められるのかね。

ちなみに当時の太陽光は42円プラス税(44,1円)だったはず。その1年後の見直しで引き下げられて、現在は36円プラス税で37,8円になった。これも4月から38,88円になる。

なにはともあれ、FITは見えない税金だ。その価格は電力料金に上乗せされるのだから。にもかかわらず、バイオマス発電所の建設には、助成金も出されるケースが少なくない。つまり税金を二重に取って進められているのだ。

さらに懇親会ではプラント業界に詳しい投資関係者から、コンサルが持ち込む発電施設の価格がバカ高いことも指摘された。欧米の数倍の価格なのだ。その高い分は、みなコンサルの取り分なのである。

こうした構造の中で、バイオマスを含む再生可能エネルギーとやらが推進されているのである。

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政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

怒られるかもしれないけれども。
施設建設にも、運転にも税金とFITが投入される。
さらに、そこに供給されるエネルギー原料の供給にも公共造林事業をはじめとする税金が・・・。あるいは、県単事業や関連団体の助成金が・・・・。

要は、エネルギー材料を山で生産するついでに、良質部分を造材して建築材料にするようなイメージが出てくるんじゃないか。

遠藤日雄氏もこの点を指摘しているようです。

エネルギー>合板>ラミナ>これまでの木取り・・・・

大径木生産林業になってくると、こういう感じになっていくのだろうか。その、経過措置としての森林環境保全直接支援制度とFIT制度なんだろうか。

う~ん、この評価は10年先や20年先になるのでしょう。

それまでに、後発人工造林地帯はどうなっているのかな。伝統的林業地帯はどうなっているんだろう。
わが、大井川流域は・・・・。
少しぐらいブレない林業地帯があってみいいように思ったりしています(私の業務引き継ぎ書の冒頭部分になると思います)、

私が怒ることではないけど(^^;)、幾重にも補助金を投入しているのがFITです。木を伐り出すのに補助金、それを燃やす施設に補助金、運転にもFITという形の見えない税金……。

しかし、本来は木材のマテリアル利用の残りを燃やすのが常道だけど、今はバイオマス利用の一部をマテリアルにするようになるのかもしれないのか。
奈良県の林業は、頑固に昔風のやり方を変えていないけど、それがよかったと言われるかもしれない……。

ある森林所有者からチョー怒られた話。
私「山を所有しているだけで、管理もしないで銭が入るのはおかしい、少なくとも境界を自分で管理して、山の状況を把握することをしてほしい。」
その方「財産だから・・・」
私「少なくとも不動産業は管理をして銭を得るもの。最低限の必要な法律とか制度の理解をしようとしないとならないんじゃないの?」
その方「だって、○○が施業をやらせていただければ、これだけお金になりますよって言ってるじゃないか。組合の金は払っているし、代打板町はそれに補助金を出しているじゃないか。」
私「そうなんですけど。」
その方「お前も税金で食ってるから同じなんだよ!」
私「それは違う。」
その方「同じだ」
私「はあ。」
という具合の会話をしばらく前にしたことを思い出しました。

経済が、家計が回らないと世の中上がったりになっちゃうのですが、こういう雰囲気が広まっていくと、ボデーブロウのように効いてくるんだろうなあと思ったりして、少しブルーになっっちゃたりしちゃったりしています。

もうすぐ担当が変わってしまうので、今のうちに。
市町村も、林業家も自分たちの感覚、状況をもっと主張するべきだと思います。ブログコメントでもいいし、SNSもあります。
もしも、主張した内容が足りなければ誰かがフォローしてくれるし、たしなめてもらえます。
そのようにして、正解とまではいかないけれども、一定の自分の立ち位置が確認できてくると思ったりします。
もちろん、自分の足で、いろんな方と直接話をしていくことが最も重要であることは言うまでもないですけど・・・。

会話K流れに、強気だったのが急に弱気になったり反撃したりする部分が生々しい(^^;)。

もっとヤクザ的に、相手の弱みにつけ込む論法を磨いてください。「境界線調べておかないと、財産なくなりますよお~」とか「森林組合がいつまでもあると思っているんですか?」とか。不安を煽って煽って、最後に「こうすれば救われます!」と誘導する。これぞ、振り込め詐欺の手口です(⌒ー⌒)。

スーパー公務員の鈴木さん、長きに渡りご苦労さまでした。と言っても、農林分野は分かちがたいですから、否応なく関わりますよ。

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