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森と林業の本

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2014/04/16

吉野山のカスミザクラ

吉野山を舞台にした物語を見た。

吉野山にある旅館の4姉妹を巡る物語なのだが、その中でちょっとひっかかった点がある。

それは「吉野山のサクラは、今はヤマザクラばかりだけど、昔はカスミザクラだった」というセリフ。

たしかに現在の吉野山のサクラは、大半がシロヤマザクラとされている。こぞって植えられたのである。ちょうど今が満開の季節。
ヤマザクラ系の野生種には、シロヤマザクラのほかオオヤマザクラ、そしてカスミザクラがある。オオヤマザクラは北方系種で、本来は吉野にはない。多少あるのは、誤ってか持ちこまれたものだ。

だが、昔はカスミザクラが多かったというのは……。私は初耳だ。本当だろうか。


 
カスミザクラは、ヤマザクラの中でも開花が遅い。4月下旬から5月に咲く。当時に葉も出るので、新緑と花が一緒になる。シロヤマザクラと比べると、ちょっと地味かもしれない。それが理由で植樹が少なく、吉野山ではシロヤマザクラに押されることになったのだろうか。

そういや、吉野山のサクラが弱っていることが問題になっている。どんどん枯死するだけでなく、ヤドリギがついたり天狗巣病に罹患しているのだ。
調査によると、その理由は、やはり同じ種を植えすぎで、しかも適地でないところに植えたり、密植したり、本来吉野にはない品種の持ち込み、そして管理不足……など総合的なものとされている。

ならば、シロヤマザクラよりカスミザクラに植え替える、少なくても枯れた跡にはカスミザクラにするという選択肢もあるかもしれない。

しかも、カスミザクラはシロヤマザクラが散った頃に咲き始めるから、吉野山の花期を延ばす効果も出る。4月だけでなく、5月も花を楽しめますよ、と売り出せる。またカスミザクラの葉は、紅葉が美しいというから、秋に観光客を呼び込むネタにもなるだろう。

もっとも、全山が桜色に染まることを名物とすると、カスミザクラは花の色が白いし、モザイク状になってまずいのかな。

Photo


春の吉野山。

遠方に、金峰山寺蔵王堂が見える。

 

  
  



   
ちなみに舞台では、西行が詠んだ「願はくは花の下にて春死なん、そのきさらぎの望月のころ」を紹介して、願ったとおり、桜の季節に亡くなった……と吉野山の西行庵に触れていた。
それに、ちょっと疑問を持って調べると、たしかに西行は如月(旧暦の2月)、現在の3~4月に亡くなっているから、サクラの花の時期に亡くなったのは事実だが、その場所は吉野ではなく、河内(大阪府)の弘川寺だった。これは蛇足。 

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