西太后と政子
先日、訪問した泉州の旧家で拝見した写真の一部を公開。
中国人ぽい、というか、完全に中国人の服装だが、現代のものではないのはわかるだろう。
そう、清国の時代のものである。それも、清国の貴族の装いだ。
着ているのは、内田政子。もちろん日本人。正確には、当時の清国大使館に勤務した内田康哉公使の夫人である。
そして、土倉庄三郎の次女。当時、アメリカに長く留学して完璧な英語に加えてフランス語、ドイツ語もマスター。帰国後、内田に見初められて結婚するが、清国に赴任するや、北京語まで覚えてしまった。
そして、外交官夫人として各国の外交官の社交界に参加するが、そこで彼女を気に入ったのが、西太后だ。多少とも近代中国史をかじった人なら知っているだろうが、清王朝の末期に皇帝の后にして、母として皇帝を支配して、実質的に政権を掌握した。
その残虐さは映画にもなって描かれたが、同時に崩れ行く王朝の命運を左右した。洋務運動など改革指向もあるが、義和団事変に乗っかるなど国を滅ぼすきっかけをつくる。
政子夫人は、西太后の寝室まで入れるほど親しくしていた。これは、ほかの外交官の誰一人できないことだった。
そして日露戦争が勃発。苦戦した日本軍は、奉天会戦で乃木大将がロシア軍の後ろに回り込む大迂回作戦を展開する。が、その時のルートは、清国の中立地帯だった。
そこを通ってロシア軍の裏をかくことができたのは、政子夫人の西太后への口添えがあったからだ。おかげで清国は日本の国際法違反を黙認したのである。
(そのとき、内田公使は何をしていたのか? )
ともあれ日露戦争で日本は勝利し、内田は帰国後外務大臣にもなるが、あまりその後は評判よくない。ただ政子夫人の賢さばかりが目立った。
この写真は、そんな頃の政子夫人の姿。帰国時は、西太后から莫大なお土産をいただいたと伝わる。チャウチャウもいたという……。
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かのえばあちゃんのかたっていた鹿鳴館にかよう本家のお姉さんの話は本当だったのですね 分家平三郎の孫で腹のおばさんの家で花嫁修業をし 泉州の田舎に嫁いだかのえは布団の中でかくれて小説をよみ 子どもができてからも 家出をして看護師で自立する生活をひそかに夢見ていた乙女でした。子どものころから母屋で男女一緒に漢籍を庄三郎に長キセルでたたきながら教えられたことも原体験かもしれません。
かのえの嫁いだ小川は明治の中頃に近所に落ちた雷で類焼しています かのえさん(長女)の弟妹からの写真なんでしょうか それとも泉州に小川以外に 土倉の関係者がおられるのでしょうか
義妹の祥子さんが庄三郎の評伝をかいておられます
梅造おじさんから 祥子さんのかかれた奈良新聞のエッセーを本にしたものを記念でいただきよんでいたのですが えっせーなので 断片でしかわからなくて じれったい思いでおりました
女性教育に熱心であった 庄三郎さんを尊敬いたします
(分家の孫の孫)
投稿: 井上 朱實 | 2017/08/22 18:38
かのえさんの話、興味あります。
政子さんが鹿鳴館に通っていたのなら、本ブログの『明治乙女物語』と土倉翁http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2017/07/post-d8cf.html も繋がりますね。
投稿: 田中淳夫 | 2017/08/23 21:55
先日奈良に家族旅行をしました。奈良の木(吉野杉)を紹介するパンフレットに土倉庄三郎の紹介をされていてうれしくなりました。田中さんのお仕事のおかげかな とおもいました。
昨年は奥若草山にでかけて雨の中少し奈良の原生林を味わいました。
最近奈良から吉野をドライブすることが多くかのゑばちゃんの言葉を思い出しています。
土倉梅造さん(かのゑの弟)と畝部中学で同級だった奈良岡谷病院の初代院長の関係者で古くからの知人が 東大寺の壷法師の個人秘書のようなかただったので二月堂 東大寺は身近にお話しをきいていました。みな年をとって消えていくので大切な思い出です。
奈良は古代から現代への架け橋をのこしている場所かと思うようになりました
田中さんのご活躍 祈念しております
井上朱實
投稿: かのゑの孫 | 2021/03/24 22:57
お久しぶりです。随分古いスレッドですが……。
奈良に来られているのでしたら、一度お会いしたかったですね(^o^)。
今は、少し方向を買えて龍次郎(庄三郎次男)のことを調べていますが、土倉一族はみんな面白いです。面白いというと、語弊があるか。時代に棹さしたり、流されたり、その生きざまに興味がわきます。
投稿: 田中淳夫 | 2021/03/25 00:01