伊勢神宮の戦略
実は、昨日は伊勢神宮に行ってきた。
内宮の本殿前。これでも人が少ない瞬間を選んで撮影。
この奥は、撮影禁止。「石段より下で撮影してください」とあるから、鳥居の石段の下で撮ろうとしたら、注意された。
むかつく。
まあ、混んでいること。とくに大祭でもないのに、なんでこんなにごった返しているんだ? 地元のタクシーも驚いていた。おそらく、団体がいくつか入ったのだろう……と。
私は、伊勢は20年に一度、遷宮バブルがあるから、と軽口をたたくと、どうも前回はそうでもなかったよう。今回初めて「遷宮」の広報宣伝をして、それがヒットしてドドドッと人が押し寄せたのだそうだ。
考えてみたら、一般の人は「20年に一度建て替える」とか「木曽檜を運ぶ」なんて知らないだろう。
また、神宮(伊勢神宮というのは通称)は外宮と内宮があり、本当は二見浦、外宮を参ってから内宮を参拝することも宣伝したおかげで、これまで閑散としていた外宮にも人が殺到したそうな。見事な観光戦略だ。
そういえば、江戸時代の旅は、「おかげ参り」だった。実は当時の日本は世界に冠たる旅行大国だった。中期の人口は3000万人くらいとされるが、400万人以上が旅をしたという。百姓も町人も、意外や旅によく出たのだ。その多くは「お参り」名目。
もっとも、明治になり、天皇家と神宮が結びついたため、庶民のおかげ参りは急速に冷めてしまう。参拝客も激減する。ある意味、忘れられたのだ。今回の宣伝は、それを払拭しようとする意図があったのかもしれない。
そして伊勢市の人口の何倍もの参拝・観光客が来たのだから、日本でも冠たる観光都市になったといえる。
やるなあ。神社など宗教も、今やマーケティングと広報戦略の時代なのだよ。
さて、本殿は撮影禁止だし、中には入れない……と思っていたら、入っている人がいるではないか。ちゃんと、御祓いを申し込めば中に入れるのね。もちろん、お金を納めないといけないけれど……。ここにもグレードの差をつけて、賽銭を誘導する戦略がある(⌒ー⌒)。
ちなみに巫女さんバイトの経験のある娘によると、京都にある有名神社の御祓いの額は、一人3万円だそうで……。家族で入ればいくらかかるか。しかし、行列ができるほど希望者がいるのである。
憎まれ口をたたくばかりでは情けないから、一応、見てきた木造建築も。
御稲御倉。本殿は撮影禁止だが、こちらは通り道にあるから目の前で眺められる。
間近で見ると、見事なヒノキの白木。構法も、由緒正しいものだ。
基礎もなく、柱も砂利?の上に立つ。
本当に塗料を塗らないのかね。それでは、すぐに表面の色はくすむだろう。
これほど白い木肌を見られるのは、昨年遷宮したばかりだからと思うと、なんか有り難い(~_~;)。
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二見浦に先に行かなければならないというのは知りませんでした。いや、作法というの難しいものですね。ひょっとすると、戦略的に作られた作法でしょうか?
ところで、上下、内外ですから、下宮ではなく外宮ではないでしょうか?
あてずっぽうですが。
投稿: 平家 | 2014/04/15 10:59
あ、誤字です(~_~;)。正解は外宮で発音が「げぐう」なのですが、変換ミスしたわけです。直しました。
外宮-内宮は昔からでしょうが、二見浦は怪しいですね。後からくっつけたのかも? そもそも伊勢神宮が天皇家と結びつき、神道の総元締めになったのもよくわかりません。故郷をたどれば宮崎の高天ヶ原に置くべきではないかと。あと出雲系もありますが。
投稿: 田中淳夫 | 2014/04/15 11:11