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2014/04/02

違法木材締め出し効果シミュレーション

木材は国際商品である。そして自由貿易を標榜する日本は、外材の輸入規制を行うことはできない。しかし国産材は、常に外材と対峙しつつ価格や生産量が左右される。

どうすれば国際的な納得を得ながら国産材の利用振興と価格下支えができるだろうか。

この問題に、私は以前から「違法木材を厳密に締め出すことで達成できる」と主張してきた。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakaatsuo/20131217-00030731/

ただ、これを数量的に証明することはできなかった。

ところが、そのシミュレーションが出た。

国際環境NGO FoE Japan地球・人間環境フォーラム熱帯林行動ネットワーク(JATAN)の3者が、法政大学の島本美保子教授に依頼して、

「違法伐採木材(または違法性が強く疑われる木材)が日本市場から排除された場合、国産合板価格と合板用丸太需要にどのように影響するか」を、導き出したのだ。

具体的には「日本と日本に合板を輸出している主要な3カ国(マレーシア、インドネシア、中国)を対象とした構造方程式モデルで、日本が違法材規制を行った場合、合板市場や合板用丸太市場にどのような影響が現れるのか、1990~2010年のデータを用いて」行ったのである。

https://www.fairwood.jp/news/pr_ev/2013/140317_pr_plywood.html

https://www.fairwood.jp/news/pr_ev/2013/1403somamichi0307p26-33.pdf

詳しくは、上記のサイトを見てほしいが、

2010年の国産合板出荷量の実績をもとに推計すると、マレーシアの合板が20%減少した時、国産合板の需要量は出荷量の9.3%にあたる307,487.5m3増加し、合板価格は4,766円(2010年の国産合板価格の8.06%)上昇する。この時、国産の合板用丸太需要は332,086.5m3(13.3%)増加する。さらにマレーシア産の合板用丸太も違法材規制で20%減少し、その分が国産材に置き変わったとすると、さらに合板用国産丸太需要量が2.62%増え、合計で15.92%合板用国産丸太需要量が増加する、という結果が得られた。

これは、合板用木材だけだが、ざっと16%も国産材需要が増えるという計算になった。価格も上がる。
ここに集成材や製材も含めたら、もう少し伸びるかもしれない。集成材や製材は欧米の木材が多いが、それなりに合法証明があるから劇的な影響はないだろうが、決してゼロではないだろう。

やっぱり効果抜群ではないか\(^o^)/。

ただし。これを素直に喜べないのは、違法木材の可能性を理由に輸入を禁止したら、そのロジックは国産材にも向けられることだ。国産材も合法を証明しなければならない。

国産材はほぼ人工林から出材されているし、合法証明も付いている……と安穏とはできない。なぜなら日本の「合法証明」は国際的に合法と言えないからだ。何より業界団体が自ら証明したのでは第三者が認証するというルールに反している。
それに100ヘクタール規模の皆伐をしている現場を見られて「合法だから環境に配慮している」と胸を張れるか?

輸出を締め出される国々は、当然日本の材にも同じ要求をしてくるだろう。それを林業界は受けて立つ覚悟があるか? 

加えて、16%の増産を安定的に行えるか? ここ1、2年の国産材価格の乱高下を見ていると、国産材の生産量は市場の動向にまったく寄り添えないことを証明してしまった。多分、上記のシミュレーションどおりに動かず、合板価格が乱高下して悲鳴が上がる。無理に増産しようと大面積皆伐をしたり、A材を合板用に回したり……。

ああ、想像しただけで気が滅入る。

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政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

収穫間伐の施業が中心になってきましたから、増産の必要がわかった時に即応するのは難しいのではないかと思います。
経営計画で樹立者は達成しなければならない面積がありますから、粛々とその方向で間伐施業を進めます。ですから、生産量は増えてきません。皆伐と間伐での事業者収益があまり変わらないとすれば、森林立木在庫は持たないでしょうし、計画の順守を優先するに決まっています。
今回も、遅きに失しましたが8月後半から森林所有者、事業体の両方い皆伐施業を勧めましたが、3か所ぐらいを開拓できた程度でした。悩ましい限りです。

ごぶさたいたしております。
東北で桜が開花するのはもうちょい先で、このじれったく微妙なお待たせ感が北海道でもない、東日本でもない、「東北」なのでしょう。

最近、facabookでこのようなNGOサイトのニュースが回ってきました。

「アスクルの《安心して使えない》格安コピー用紙 ―紙原料向けの植林がインドネシアの熱帯林と暮らしにあたえる大きな影響―」
http://www.jatan.org/?p=2927

いまさら言うを待たず紙は森林資源からもたらされるものです。使用される木材の伐採が適法か、本当に持続的かといった検証と判断は、本当にきめ細かで詳細なチェック(そのための気力!といったものまで)が求められるものですね。どこの国の、どんな機関の、誰の研究結果を「根拠」として信頼するのか……。

そんな時にとてもタイムリーな更新記事でありました。
「ただし。これを素直に喜べないのは、違法木材の可能性を理由に輸入を禁止したら、そのロジックは国産材にも向けられることだ。国産材も合法を証明しなければならない。」という言で、透徹した判断とはこうであるという指標を示していただいたように思います。

鈴木様
そうか、森林経営計画上の縛りもありますね。日本の林業界が市場の需要に即応できないのは、昨今の価格暴落と暴騰の時も示したとおり。
仮に長期的に増産する計画を立てても、輸入量の増減にびくびくしながらになるでしょう。チャンスをピンチに! が得意だから……。

渡辺様
ご無沙汰しています。またお会いしたいと思っていました。東北からの大きなうねりを感じたい……。
さて、アスクルのコピー洋紙に関する記事は、私も読みました。あれもインドネシアの森林認証を受けた原材料を使っているんですね。だから合法どころか「環境に優しい」お墨付き洋紙です。それでも、このように突っ込まれる。
しかし、海外の認証を突っ込む前に、国内の合法証明体制を構築し直した方がいいです。

違法材20%の根拠が一切示されていませんね。
また国別の違法材の割合は、マレーシアについては2008年しかなく、インドネシアは2008年のデータがあるものの改善しているとして20%と仮定、中国はデータが無く不明、と、かなり雑な推定と思いました
違法伐採の取り締まりには、近年は衛星写真の活用が進んでいて、アマゾンで日本の衛星が活躍している、と去年あたりニュースで見たように思いますので、5年前よりは違法材は減っていると推定するのが妥当と思います
数値計算だけなので、違法材の割合を20、10、5%でそれぞれ推定してはどうかと思いました
結論として、国内への影響は過大評価と思います

よくチェックしましたね。私は、そうした数字のところから挫折しました(^^;)。まあ、仮説の上の推論、ということはわかります。

中国は、ロシアからの輸入(密輸?)が多いほかは、ニュージーランド材が増えているから、違法割合を推論することは可能でしょう。また機械的に外材減った分が国産材に置き換えられると期待していますが、非木材素材に移る可能性も高い。とくに供給不足で価格が上がれば、非木材に流れるものも増えるはず。

それでも、国産材にそれなりの恩恵を与えるでしょう。何より合法化が進めば林業現場も変わらざるを得ない。そこに期待します。

論文に使っているデータが古く、現在の日本への影響はほぼ無い、と思います
特に、この想定のキモである違法伐採については、決定的に状況が変わっていると思われます

1)マレーシアでは2008年から衛星による違法伐採の監視を開始しています
http://www.illegal-logging.info/content/malaysia-uses-satellite-fight-illegal-logging-report

2)衛星取り締まりの効果ですが、アマゾンでは衛星監視が始まった2008年以降、伐採面積がおよそ半減してます
http://www.theguardian.com/environment/2013/nov/15/amazon-deforestation-increased-one-third
従って絶大な効果があると思われます

3)ただし、アマゾンで使われていた衛星である「だいち」は2011年に止まっています
http://www.jaxa.jp/press/2011/05/20110512_daichi_j.html
先のグラフで2012年以降に伐採面積が増えているようにも見えますが、このためかもしれません
もしそうなら、衛星の有効性を実証しているとも言えます

4)マレーシアの衛星はどこのか分からなかったので、精度(=地上分解能)や撮影間隔が分かりませんでした
もしかしたらアマゾンほど効果はないのかも
しかしグーグルですら高精度の写真を提供している時代に、違法伐採を見逃すほどの衛星なんてあるんでしょうか?

以上を総合すると、衛星監視が始まる前のデータで推定している件の研究は、日本への影響を過大評価していると考えます

おおお、ここまで検証しましたか。
これで論文書けますね(^o^)。

たしかに島本論文の精度が低いのはわかりましたが、現実問題として違法木材は、まだまだ入ってきています。とくにインドネシアやロシアは。ここに取り上げたのは合板だけですが、製材もアブナイのはかなりあるでしょう。
違法木材問題を、既存の統計だけを使って描こうとすると無理が出ますね。現場を歩いている人の聞き取りなども必要だと思います。

検索自体は5分でしたので、論文にはならないと思います

結論として、マレーシアについては、衛星の効果は十分でない可能性があります

1−1)アマゾンでの例では、従来の衛星が雨雲の下を見られなかったため6ヶ月の雨期の取り締まりが不十分であったが、「だいち」では雨雲に左右されず観測できるセンサーを積んでいたため、効果が上がった
http://www2.jica.go.jp/hotangle/america/brazil/000820.html

1−2)マレーシアの衛星は「だいち」ではないらしく(LANDSAT-7?)、最近でも「絶望的」「Googleを活用しよう」とか言ってるので、効果はそれほどではないのかも
http://www.illegal-logging.info/search?search-selector=on&query=satellite+illegal+logging&title=&field_term_author_name=&field_region=3494&from[date]=&to[date]=&items_per_page=20&sort_by=created

1−3)アマゾンと同じ事業をJICAが「2010年度から3年間の予定でアジア、中南米、アフリカの国々を対象に、日本とブラジルが第三国研修を実施」していた(1−1のリンク参照)が、2011年10月で「だいち」が止まった

以上より、2008年以降も状況は根本的には替わってないのかも
というわけで、昨日とは真逆な結論になりました
今年か来年だったと思いますが、「だいち」後継機の打ち上げと本格運用が待たれます

それと、島本論文(論文?これで査読通るんですか?)と同じフレームで、アマゾン違法材が市場(アメリカ?)に与えた影響、つまり衛星取り締まりの強化の効果を、2008年以前、2009-2011年、2012年以降の統計を比較することで検証できると思います(これは本当の論文になりそう)
実際の統計で辻褄の合うモデルを作ってから未来予測すればいいのでは?(この点でも島本?論文?は水準以下では?)

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