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森と林業の本

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2014/05/02

木登り史を振り返る

先週1週間は、アーボリカルチャーの講習会と講演会を追いかけてきた。

その点は幾度か記したが、木登りは少なからず人を夢中にさせるものだ。もちろん講習に参加した人の大半は、仕事に必要とか、今後使うためという目的を持っていたのだろうが、同時に、会場となった園地を訪れたハイカーなどが木に登っている受講生を見上げて、驚いたような感心したような羨ましいような表情を浮かべていた。みんな憧れはあるのだろう。

実は、私もかつて木登りに憧れた一人である。そこで、ちょっと振り返る。

子供のときに木に登ってターザンごっこをした……といった思い出は少し置くとして、最初に木の上に登りたいと思ったのは、大学生の時に手にとった「ワイルドライフ」という雑誌だった。そこにコスタリカの熱帯雨林に登る研究者が紹介されていた。ドナルド・ペリーである。

彼は、熱帯雨林の樹冠・林冠部の研究のため、ロープワークによる木登りを身につけ、木から木へと渡ったり、木の上にしつらえた小屋で寝起きして、樹冠生態系を研究している、といった記事だった。

それに憧れたのだ。木の上には、まったく知らない道の世界が広がっていることを知り、そこに到達する手段として……。

その思いが蘇ったのは、ボルネオ熱帯雨林の樹冠研究が始まって、ツリータワーを建てたり樹冠歩道を設けたという記事を新聞か雑誌で読んだことだった。行うのは、京都大学の井上民二教授を中心とした日本人研究者たち。

ここでは、ロープワークによる樹冠到達は、個人技に頼るため、誰でもいつでも簡単に登れるようにする、というのがコンセプトだった。その結果、タワーや樹間にかけた吊橋のような歩道である。

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そこで、取材にボルネオに飛んだ。いやあ、ロープワークを使わずに簡単に木の上に登れるこの方法はよかった。初めて樹冠に登れたのだから。

ランビル国立公園に作られた、最初の頃の研究用キャノピー・ウォークウェイ。

ほとんど防護網が張っていずに、カラビナで安全確保する。

その後も紆余曲折を経つつ、各地のツリータワーや樹上回廊を歩いた。世界的にも増えてきたように思う。観光施設にさえなった。

大阪の万博記念公園内の森に設けられた「ソラード」も、その一つだろう。

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こちらはムル国立公園内に作られたもの。

どちらかというと、観光客があるくもの。しっかり安全防護網が張ってある。

いくつもつながっていて、長さは数キロに達する。

そのほか、飛行船で上から近づくとか、クレーンに人が乗れる籠を付けて近づくという手法も開発されている。いずれも、ロープワークが上手くなくても樹冠を除けるところがミソだ。

ところが、研究現場では、今やロープワークに後戻りしているそうだ。樹上K決まった場所やコースしか見られないタワーや歩道ではなく、飛行船など大がかりでもなく、研究者が興味を持った木に自由自在・気軽に近づく技術として。結局、そちらなんだなあ。

そして関西大学の探検部が、マダガスカル島のジャングルの樹上を木から木へと1キロ移動するというプロジェクトを立てて実行した。それも取材したが、単に登るだけでなく、樹上にテントを張って生活し、隣の木にロープを伸ばして移動するとは不思議だが魅力的な試みだった。実際、1ヶ月近く樹上で生活したら、サル類が遊びに来るようになったという……。

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これが、樹上テント。

折りたたみ式で、木から木へ渡る。

 

その頃から、趣味というか遊びというか、ツリークライミングが流行りだした。ただ、この頃には私は、自ら手を出そうとは思わなくなった。

私は、「地に足を付けた活動」をしたくなったのだよ(⌒ー⌒)。登るのは怖いからね。また体力にも自信がなくなってきたからね。
こう見えても、学生時代はケービングをやっていて、多少はロッククライミングもかじっていたのだが、自分に向いていないと痛感していたのである。

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やっぱり自力で登るべき?

左は先日の生駒山のアーボリカルチャー講演会時。

右は、ボルネオ・ランビル国立公園。幹に梯子が掛けられている。

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