週刊朝日の5月9~16日号で見つけたおバカ記事。
ゴールデンウィークに合わせた合併号だ。
この中に「希望の国ニッポンがやってくる」~識者9人の提言という特集記事があるのだけと、この企画自体が安直だ。
ほかに掲載されているのが「安倍内閣は原発に武器輸出を考えている」だとか、有名私大の合格高校一覧だとか、病気だボケだ、などとうんざりするような暗い記事ばかり並べているから、少しは楽しく希望の持てる記事も載せようや、どうせなら日本はすごい可能性あるんだぜ、という内容にしよう……と考えたのだろう。
まあ、それはいい。そんな記事も読みたくなることもある。が、そのためにチョイスしたのが、こんなテーマか。
「田舎に住んで日本を変えよう」「宇宙観光ビジネス」「ロボットが変える未来の姿」……いろいろあるけど、やっぱり私が引っかかったのは、エネルギーだ。
タイトルは、『豊富な間伐材で「純国産エネルギー」実現』。
ここでイチオシされているのは、木質バイオマス発電。これだけでもツッコミたくなるのだが、内容たるや……。
初っぱなから、いかに日本は樹木が生長しやすいか……というのだが、間違いだらけなのである。そもそもバイオマスの説明からしておかしい。
「日本の森林の4割を占めるスギ」だと? 一体どこからそんな数字を持ってきた。森林の4割を占めるのは人工林であり、スギはその半分以下である。
“海外の安価な木材が大量に輸入されるようになって林業が衰退”というのはどこの国の話? 外材は国産材より安価ではないし、林業の衰退はいつから、どんな経済状況の中で起きたのかもちゃんと調べてほしい。
間伐材の定義だってわかっているのか? 現在間伐材と呼んでいるのは、多くが直径20センチ以上あって立派な建材になっている。なかには樹齢80年を越える「間伐材」もあるのだ。
あげくは、花粉症の対策にもなるって……。
突っ込みどころ満載(笑)。
あんまり大人げなく批判したくないけど、そもそも筆者は本気でバイオマスエネルギーに期待しているのか。単に編集部から依頼を受けて、あらかじめ期待していた内容を取材に来た記者にしゃべっただけではないのか。
その意味では、取材した記者の能力も問題だが、それをまとめた編集者も含めて、あまりと言えばあまりの無知さと低い取材力にげっそりする。
さらに言えば、この人(識者)は本当にバイオマスエネルギーについて詳しいのか疑問だ。進行中のバイオマス発電関係の実情だって知っているのか怪しい。もちろん林業に関してもそうだ。
間伐材って豊富なの? 余っているの? 山からどうして集めるの?
バイオマスは純国産なの? 現在の計画されているバイオマス発電所の多くは海外からの輸入バイオマスを当てにしているよ。本気で国産バイオマスだけで発電し始めたら、あっという間に山は丸裸になるだろう。
ここで展開する話は、いま全国各地でバイオマス発電所を建設しようと地方を煽って回っているコンサルの論法そのものだ。
仮にバイオマスエネルギーを取り上げて「希望の国」を描きたければ、それなりに勉強してもう少し理論的に詰めるべきだ。バイオマスエネルギーで期待されているのは、あくまで熱利用であり、発電ではない。
これでは希望は抱けない。逆に脱力する。
こんな内容の記事でゴーサインを出した編集部のやる気や見識自体を疑ってしまう。
突っ込み処多すぎ
まず「バイオマス」という言葉の定義が間違い
ありがちな間違いではありますが
わざわざ,言葉の説明をするなら、少しは本気で調べろよ
植林地の保水力が劣る、安い外材、間伐が花粉症対策・・・
何ひとつ本気で取材した形跡はありません
投稿: とり | 2014/05/05 22:02
一つ一つ指摘するのは恥ずかしくなる(^^;)。
むしろ私の興味は、編集部はなぜこの人に記事を依頼した(話を聞いた?)のか、という点です。どう見ても専門家じゃない人に。
まあ、ここでもヤッツケ仕事だったんだろうな。
取材力が落ちている……というより、取材する意欲が落ちているのか。いや、よりよい週刊誌をつくる意欲がないのかもしれん。
投稿: 田中淳夫 | 2014/05/05 22:19