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2014/06/01

地理的表示保護法に注目すべし

地理的表示保護法を知っているだろうか。正確には、まだ法案だが。

5月22日に衆議院で可決されたのだ。おそらく近く参議院も通過して、法律となるだろう。

地理的表示保護法は、高品質の地域産品を地名と結びつけて名称を保護しようというものだ。特許権や商標権と異なり、特定の個人・組織ではなく、地域が知的所有権保護の主体になるという考え方を取る。地域の関係者全体が保護される権利を持ち、個人や企業の独占を認めない。

簡単に言えば、ノーブランドの地域産品(基本的に農産品物)では、価格が安い方に流れるのは言うまでもないが、品質などに地域の特性があるものは、高くても売れる。そこで、地名を表示して他と差別化を図ろうという作戦だ。

決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間等が適切に管理された農林水産物に対する表示」なのである。

すでに世界で100カ国近くが導入している制度だが、もともとは、ヨーロッパで提唱された。

最初は、EUがウルグアイ・ラウンドで持ち出し、1994年に国際的な合意を得て成立している。というのも、南米やオーストラリアなどの農産物では、価格競争で勝ち目がないから考え出したのだ。しかし、酪農製品や農産加工品などでブランドのあるものは強い。チーズもワインも高くても売れる。

EUは、地理的表示によるブランド化が、商標や特許などとは異なる独自の域内農業を守る有効な手段として考え出したのだ。ブランドに自信のあるヨーロッパ諸国ならではの発想だろう。そして海外にも保護を求めている。

そしてEUは日本とのEPA(自由貿易協定)交渉の場に持ち出している。これを通さないと、EPAは通らないだろう。

しかし、アメリカや南米、オーストラリアから反発されている。TPPの交渉にも引っかかっているらしい。

今回の法案は、保護対象の線引きなど具体的な基準には踏み込んではいない。政令やガイドラインづくりにゆだねたのだろう。だから通ったとも言える。今後、細部を決める際に揉めるのではないか。

残念ながら、ここに木材が入る気配はない。そもそも林業関係者に、地理的表示の保護という発想がある人物がいるのか。そして、今回の法案のことを知っているのは何人いるだろうか。

もしかして望んでいないのかもしれない。吉野杉、秋田杉、木曽檜なんて自慢できる地域はわずかだからだ。品質保全の自信もないのかも。。。何より量をさばくことばかり考えているようだから、ブランド化も邪魔なのかもね。

だが、長い目で見たら、輸出も視野に国産材のブランド化や、輸入木材の歯止め違法木材対策としても重要な武器になる可能性がある。

……法律ができてから、「気がつかなかった」ということのないように。

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政策・行政関係」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。

なんとなくですが、木材のブランド化を指向している地域は、既に地域団体商標制度で登録してるんじゃないかと思います。
資料を一読した限りでは、商標が先行する場合の扱いはよく分からなかったのですが、出願者が地域と品質、特色の因果関係を担保することになると、既に登録済みの商標にも影響を与えるかもしれませんね。

吉野杉、吉野桧、吉野材は既に商標が先行していますが、地域と品質、特色との関連性を改めて問われるとになると、ちょっと工夫が必要かもしれません。登録時に多少揉めたところでもありますし…

おそらく地理的表示の狙いは輸出入でしょう。つまり海外の産品との差別化なので、国内の市場しか意識していない国産材は、気にかけていないのでしょうね。
ただ法律で規定する、保護する、という姿勢は、なかなかインパクトあるのでは?

「熱帯雨林を守り、違法で持続不可能な漁業を止めるため、生産方法のハッキリしないものは輸入させません」というお題目で、EU域外にお金を流さないための方策では?
輸入食品(農水産物全体?)へのポジティブリスト政策とも同軸ですね
石油などのエネルギーは仕方ないにせよ、農水産物を自給できると、国富の流出はかなり防げますよね
自由貿易を堅持しつつ、非関税障壁と言われない形でEU域内の産業を守る、賢い方法です

日本でも「農林業は国土を守る」とか言ってるけど、田中さんが指摘して来た通り、ヨーロッパでは考えられないような大面積での皆伐が普通で、河川水質に配慮していないことは明白です

里山資本主義ではエネルギー「一部自給」を主張していますが、もっとも簡単なのは農林水産物ですね。コンマ以下のエネルギーより食べ物なら結構な金額が自給できる。そして域内に循環経済をつくりやすい。
非関税障壁にならず、上手く域外商品を締め出せる。

EUはやっぱり賢いなあ、と思います(^o^)。
日本は、漁業が資源を枯渇させつつあるし、林業も危うい。私がヨーロッパでは基本的に大面積皆伐をしていないと記すと、「いや、こんなにある!」とむきになって伐採事例を探してきます(ーー;)。漁業も、「日本は資源を守っている」と大嘘つくし。漁獲制限なんぞ、誰が守っているのか。鰻は、そのうち絶滅するかもね。

里山資本主義みたいに、結局、本に書かないと世論は変わらないのかも
タイトルは「EUに学ぶ森と海の持続的利用」なんて?

「里山資本主義」がウケタのはNHK番組だったほか、やはりネーミングでしょう。

どうせなら「EUに学ぶ合法的に“外国”を締め出す方法」
「EUに学ぶ正論吐いて自国が得する方法」
ですな( ̄ー ̄)。

話がずれて申し訳ありません。「ヨーロッパでは考えられないような大面積での皆伐が普通で」とありますが、ヨーロッパではどの程度の広さで皆伐しているのでしょうか?

以前も書いた記憶があるんですが、ドイツやスイスなどでは原則皆伐禁止です。北欧はやっていますが、最大5ヘクタールとか。
ただし、違反していたり、いろいろ抜け道はあるそうです。それでも1か所100ヘクタールを越えるような皆伐地がいっぱいある日本とは比べてはいけませんね。

「海外産品の締め出し」は自由貿易に反するのでタイトルとしてはNGでしょう

「里海」は無い、と思ってるんですが、田中さんはどう思いますか?
里山は、密度を制御して、高密度での生産性の低下を防ぐ、というところがコアだと思います
しかし、海では、特に沿岸では、高密度による生産の低下はほとんど実例が無いのではないでしょうか?
日本の沿岸域の生物生産は、密度よりも嵐/大波による転石や、河川の出水による一時的な塩分の低下、ヒトデやウニなどの動物による捕食といった、いわゆる撹乱じゃないかと思うんですが

まあ、森林ジャーナリストの守備範囲外でしたね
すいません

原則皆伐禁止の国があるんですね。
ありがとうございました。

いや、本のタイトルは、これぐらいがいいんです。真面目なこと書いても注目されません。「安い外国産品を締め出せ!」ぐらい書いてもいいかな。

里海は、一部にあります。以前、里海の研究者に取材しましたが、想像以上に海浜は人によって改変されています。それも昔から。
コンクリート製の今の堤防・突堤ではなく、石を積んだ突堤などは非常にバイオリアクターとして働いている。また漁村の生活用水の垂れ流しや、漁獲物の一部の投棄が、海の富栄養化に貢献(悪い意味でなく)していて、沿岸の生物生産量を増やしていたようです。漁村周辺の狭い範囲ですが、無視できないレベルで影響を与えていたことが知られています。さらに地上から流れ込む土砂などの影響も含めると、人が影響を与えた海は決して小さくないでしょう。

里海の研究者に聞けば、そりゃ里海はある、というでしょう
しかし、少なくとも現段階では里海はない、というべきでしょう

1)里山管理や林業で行われているような、人為的密度操作による生物生産の向上は、海ではない、という点に反論は無い訳ですね

2)栄養塩については、親潮と黒潮ではまるきり濃度が違いますし、富栄養化による貧酸素化と栄養塩の再溶出もあるので、制御はほとんど失敗しているのが現状と思います
1、2のうまくいった事例(海ではありませんが諏訪湖とか)はあるかもしれませんが、私は過分にしてデータはほとんど見たことが無いので、教えていただけませんか

それから、海ではよくデータとして漁獲量が使われますが、漁獲量(トン)は、操業していないとデータが無い、単位(漁獲努力量、船の隻数/トン数、操業人数、習熟度といった分母)が計量不可能、といった問題があり、国際的には「単位努力量あたりの漁獲量CPUE; Catch Per Unit Effort)」という単位にして誤摩化しています(関係者全員があきらめているし、他に数字にしようがないので仕方ない)
また、動力船の普及(明治中〜昭和初期)、ナイロン漁網の普及(関東大震災時は定置網は麻などの天然素材だったようです)などの漁獲技術の進歩もあるので、それらをまたいだ漁獲量の比較は出来ません

そういった検証を踏まえると、私は判断材料が無いので「あるとは言えない」と思っています

私が里海の研究者と言ったのは、正確には海洋生態学者です。少なくても貴方より理屈だけなく現場(海浜)をよく調査していると思いますよ。
 
里山の定義も範囲も定まっていないのに、「人為的密度操作による生物生産の向上」を持ち出しても意味ないでしょう。(だいたい反論はないとどこで決めつける?) 
私はアマゾンやボルネオにも里山空間はあると書いて、一部で批判されましたが、これも定義のずれです。また日本の里山の姿も、現在見直しの最中です。

私も海洋生態学者ですよ
毎日海を見ながら勤務して、もう5年目かな
学部は水産学部を卒業しました

定義しないと科学的議論にならないので、あえて定義してみました

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