真面目に書く
以前、出版社の編集者と話していて、
「真面目に書いた本は売れない」
という話題になった。これは反語「不真面目に書いたら売れる」という意味ではないので、勘違いしないでほしいが、ようするに力入れて、こだわって、会心の作!と著者が思う作品ほど売れない……という情けない話なのである(;´д`)。
実際、ベストセラーになった本は、実は聞き取りをまとめたものだったりゴーストライターがいるものが多い。放談して、それを練達の小手先ライターがまとめるのだ。先年のミリオンセラーもそうだし、往年のダブルミリオンセラーもそうだ(^^;)。
まあ、内容より著者の魅力ということもあるだろうが、肩に力を入れていない方が読みやすいのだろうな。だかから、こだわりの作品を、いかに力抜いて書くか、がテクニックになる。
もちろん、これは一般論である。渾身の1冊がベストセラーになることも、当然ある。ただ、思うに任せないのが世の習いなのだ。
そして私の本に関してよく言われるのは「情報てんこ盛り」だということ。扱う範囲も広くて森林・林業・山村・そして流通業界やら建設業界やら。さらに時代を遡った歴史に海外情勢……こんなに詰め込むのは、大変な作業なのだが、まさに「肩に力が入っている」。
これが本を売れなくしているのか?
……なんて疑惑を持ってしまった。
とはいえ、これは性分に近いのでしょうがないかなあ。一つのことを追いかけていると、その周辺事項に次々と眼が向き、しかも「これは外せない背景だ!」と決めつけてのめり込む。そもそも狭く深くよりは、広く深く(浅く、とはいいたくない)のだ。
しかし、総花的な本は売れにくいのかもしれない。
そういや初期の『「森を守れ」は森を殺す!』や『里山再生』(『いま里山が必要な理由』)『日本の森はなぜ危機なのか』などで扱った多くの分野の中から、割箸や森林療法やゴルフ場などを深堀して別の本を出版している。
でもって、現在進行中の出版計画は、「広く深く」(笑)。
が、一方で「狭く深く」計画も進めている。同時に出版、というわけではないが、両方を世に問うて、世間の反応を知りたい。
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選挙のウグイス嬢とか
投稿: か | 2014/07/04 07:48
田中さんの本4冊買って読みました。
「日本人が知っておきたい森林の新常識」
「森林異変」
「森林からのニッポン再生」
「日本の森はなぜ危機なのか」
で、「日本人が知っておきたい森林の新常識」は熟読させていただき、
目からウロコでした。
あとの3冊は内容的に似ているような感じだったので
(ごめんなさい、あくまで雰囲気で言ってます)ざっと目を通しただけでが、
田中さんがおっしゃる、「力入れて、こだわった、会心の作」
をはずしてしまってますでしょうか?
投稿: ken | 2014/07/04 17:37
ゴーストライターの筆力ってそれはそれとして凄いもんだと思います。
投稿: 島崎三歩 | 2014/07/04 22:22
私に「これは会心の作で、こちらは手抜きの作」と語らせたいんですか?
あえて言えば次回作が会心の作です。また最新作は『森と近代日本を動かした男 山林王・土倉庄三郎の生涯』ですが、もはや品切れ。。。
『日本の森はなぜ危機なのか』と『森林からのニッポン再生』はテーマは森と林業と山村の関係を扱っていますが、間に10年近く空いたので切り口を変えて書き下ろしをすることになったもの。まあ、『森林からのニッポン再生』が続編ということになります。
『森林異変』は、まったく上記と違う林業の最新事情を伝えたもの。まったくコンセプトが違います。
投稿: 田中淳夫 | 2014/07/05 22:58
ありがとうございます。
投稿: ken | 2014/07/05 23:57