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2014/07/31

CLT建築物の見学

昨日は、東京の勝どきで開かれた「2020年に向かう、新たな森づくりシンポジウム」に参加してきた。

 
なんだか大臣やら官僚やら財界人やらが並ぶ仰々しいシンポだが、私の目的は、女優の南沢奈央を見ること……ではなくて、会場に建てられたというCLTの建築物の見学であった。
なんでも「都市部では初めてとなる業務用施設」があるという。私は、とにかくCLTを肉眼で見たい、写真に撮りたいと思ったので参加したのである。
 
CLTに関する私の意見は、これまでも書いてきたが、そのうちまとめて語ることもあるだろう。ここでは、あくまで今回目にしたCLTの建築物について語ろう。
 
ひと言で言えば……大失敗ではなかったか。
 
今回のイベントは、東京にCLTの施設を建てて、世間にCLTの認知と普及をめざすのが目的だとしたら、まったく効果が見込めない。
 
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施設は、なんと倉庫の中に建てられている。天井がつかえているようにも見えるが、隅にあるので全体像が見えない。
 
それだけではない。写真でも多少わかるだろうが、この建物、CLTだけではなく半分は合板なのだ。とくに2階部分は。
 
内部も合板がやたら目立つ。開口部はCLTでつくれなかったらしい。
もちろん時間をかけて加工したらつくれるはずだが、急いだのかやっつけ仕事だったのか、開口部に面したところはみんな合板なのだ。
 
 
これでは、CLTの宣伝にならない。そもそも、部屋の内部にはなぜかLVL(単板積層材の展示が。。。

  
 
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内部もたった一つの換気扇のために、みんな合板。
 
わずかに? 見えるCLTも、色の悪いこと。だんだら模様だ。
 
これでは「あらわし」にはできないから、まともな住宅やオフィスなら内装材が必要だろう。それを木材でやるのかクロスなのか、新建材なのかはともかく、CLTの木肌はみっともない、と感じさせた。
これは外装部分も同じだ。CLTそのままを露出すると、デザイン的には情けない建築物になるだろう。
  
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それに宮崎県日南市のオビスギを使ったようだが、表面に気根の跡が点々と……(-_-)。
  
なぜオビスギを使ったのだろう。乾燥も大変だったろうに。
 
 

 
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そして接合部。
 
なんだ、この隙間は。間に挟んだのは、LVLだろうか。スカスカだが。
 
  
仮設家屋を思い出した。2年しか持たない……。

 
こんな建築物見せられて、CLTの宣伝になるのか。。CLTって、こんなものしか建てられないの?という宣伝になったかも。
 
見学会というのは理屈ではない。訪問者に実物を見せて、その見た目の感想が大切であることをわかっていない。どんなにCLTが有望な建材であると力説されても、目の前に良いものを見せられなかったら、心の奥底で馬鹿にする。推進意欲が湧かなくなる。


ほかにも言いたい点はたくさんあるが、お披露目の施設としては、あまりにもお粗末。
 
見学者も落胆した様子がありあり。エアコンのない倉庫で4時間にも渡るシンポジウムが続き、頭が朦朧とした。そのうえに、この建物である。
 
ただし私は、シンポ中でも中によく入っていた。写真を撮るふりして幾度も出入りした。
なぜか。このセミナー棟だけがエアコン効いて涼しかったからである(^o^)。

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コメント

化粧バージョンの3層積層板(Jパネル)なら見た目の感じもよくて、現しにいいような気がします。

Jパネルは、構造計算もできるようになっています。カタログにそれが載っていたりします。

実はJパネルは直交に3層集成していますから、ある意味CLTと同じなんです。CLTの場合は、たいてい5層か7層ですが。

ただJパネルは、価格が高いですね。となると、国産材でCLTをつくればJパネル以上の価格になるはずで、それをいかにクリアするつもりか疑問です。

ヨーロッパのCLTはいかほど?400€(発値)と言われてますが、これに商社口銭、輸送コストを乗せても、国産材CLTよりははるかに安いはずです・・価格が高い分、補助金出すからどうでしょう?では普及しませんよね・・型枠工が不足しているなら大型公共建築物に使うのがCLTの目指すとこじゃないでしょうか?
3階建て程度じゃ魅力を感じませんが・・

国産CLTの価格がいかほどになるかわかりませんが、おそらく輸入CLTよりかなり割高になるのは間違いありません。そして性能もおそらく上。素材がホワイトウッドやレッドウッドですから。使用実績もたっぷり。

国産ものに補助金つけたらWTO違反ではないでしょうか。

さて勝ち目があるでしょうか(勝ち目があると思っているのは誰でしょうか)?

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