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森と林業の本

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2014/07/22

自治体の“気概”

本日は、某県の林務関係者勢ぞろいの研修セミナー。

 
手づくり感たっぷり(^^;)の運営であったが、気持ちよく講演をさせていただいた。
で、終わってから質問を受け付けると……。
 
みんな、質問より「ブログ読んでます!」と言うのである。うわっ、昨日書いた内容がもろ公務員の話だからなあ。今夜は書きづらい(書いてるけど)。
 
面白いのは、終了後話しかけられたのだが、「林野庁がいろいろおかしな施策を言ってくるが、どう対応したらいいか」であった。
 
これは、私の方が聞きたい。
 
なぜ、法律でもなく従う義務のない国の施策に盲目的に従わねばならないのか。抵抗しないのか。
 
別に喧嘩しろと言っているのではない。(してもいいけど。)
その施策は、こちらではコレコレの理由で難しく、むしろこういう手を考えております……的な対応したらダメなの? それこそ林野庁の人を教育するつもりで。
 
もし上から目線で「国が決めたから。上司が言っているから」と盲目的に“命令”して来たら、腹の底で罵りつつ、のらりくらりとかわす術を身につけてもいい。
 
「そういえば、以前は列状間伐ばかりしろと言ってきたけど、結局うちの県ではほとんどしなかったんですよ」
 
おお、それでいいではないか。
 
「今はコンテナ苗を植えろばかり言ってきます。でも、植える場所がないし、まだ苗をつくっている最中で植えられる状態にない」
 
林野庁の担当者は、どれほどコンテナ苗を植えられたか、という実績がほしくて都道府県に無理強いしてくるだけだろう。しっかり林業の現場のことを教えてやりたまえ。まあ、あちらは林業の現場の情報なんぞに興味ないかもしれないが。
 
ちなみに列状間伐やコンテナ苗がいけないというのではない。それぞれの土地の特性に合わせて行うべきであって、「上から言われたから」と盲目的に行うな、というだけだ。
施策の原点は何か。森や林業をよくすること、地域をよくすること。この原点に寄り添って捨拾選択しようよ、というだけだ。
 
……私なんぞ、勤め人時代は毎日編集長と怒鳴り合いしていたけどね。(懐かしモード)
 


そう言えば、明治初年、国は幕府や藩、そして寺社から取り上げた山林を元に官林を作り上げた。で、どうしたか。
 
売り払ったのである。野放図に金さえだせば、誰でも山林を民間に払い下げ、その後どのように伐採しようが構わない、という通達まで出している。無理やり取り上げた山林を売って金にするとは盗人猛々しい……というか盗人そのものだが、森林経営をする気がまったくなかったのだろう。
 
だが、猛烈に反対した県がいくつもあった。何かと抵抗して山林を払い下げなかったのである。藩時代の山林行政が当時はまだ残っていて、野放図に伐採することの危険性を認知していたのだろう。
やがて払い下げを主導した大蔵大輔(次官)の井上馨が失脚したことで、官林払い下げは止まった。
 
しかし、本当に実行され続けたら、今の国有林はほとんどなくなっていただろう。そして林野は荒れ放題になったかもしれない。マトモな林野政策もつくられなかったに違いない。当時の県知事たちの気概に拍手したい。
 
 
今の自治体にも“気概”をもってほしい。
 

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コメント

なるほど…勉強になりました。

ちなみに県が抵抗したのが国有林の全てではないですよね?

もちろん、多くが売り払われました。また売れる前に井上馨が失脚した部分が多いでしょう。止めたのは、大久保利通です。外遊から帰国したからですが。

私は、ある考えを述べたところ、
上部の自治体の幹部の5名に取り囲まれて、
屋外で30分以上指導をいただいたことがあります。

その皆さんも、いまとなっては私の考えの方に傾いてくれているようで、あの時いうことを聞いて、無理強情に舵を切らないでよかったと思っています。

自分の判断が正しいとは限りませんが、主張をすることで、コトを一度思いとどめて、自分たちの実際問題を検証する時間が必要だと思います。とくに、補助金制度や林業施策が猫の目のように変化している時代においては・・・・。

山の成り立ちは一時で崩れるという危険性がありますが。崩れた状況を戻すのは至難の業です。いまやらなければもうだめだとか、いろんな情報や周辺の勢いが気になっちゃって、合わせないと置いてきぼりになっちゃうので、ビビりますが、自治体職員は、特に市町村職員はない経験をちゃんと森林組合や地元を林業家や林業者と話をして決めていく方がいいと思います。

ご苦労さまです。
その「上部自治体の幹部」が何を考えて「指導」されたのかはわかりませんが、それが技術上の意見の相違を戦わせたのなら結構だと思います。むしろ歓迎すべきかも。
しかし、さらに上部の行政組織の通達とか、あるいは自治体内の上司の命令とか方針を何がなんでも守るためだとしたら……醜いですね。

主張すべきは主張して、折り合うところは折り合って、しかし、どこかで後戻りできる道を残しておく……至難の業ですが、頑張ってください。

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