チェンソーアートの昨今事情
チェンソーアーティストの城所啓二さんが、大和郡山市で開かれたイベントでショーをしたので、見学に行ってきた。
とくに金魚を題材にしたのは、大和郡山が金魚養殖の地で、金魚すくい選手権で有名になっているからだが、なんと「つくるの、初めて」だそうだ。予行演習もせずにぶっつけ本番で彫りあげるのだからすごい。
目を彫るのは、細かな道具を使ってきれいに丸く浮かび上がらせ、さらに黒く塗ったかと思えば、虹彩まで描く。少女マンガの光る目の世界だ(^^;)。
見学者の中には「生きているみたい」という感想も出ていたが、たしかにチェンソーで彫ったかどうかなんて考える必要もなく、造形がしっかりしている。
チェンソーアートも普及するとともに変化している。
私が10数年前にチェンソーアートに触れたとき、これを山村ビジネスにしたら、山村住民の趣味・生きがいになるだけでなく、作品を売れば副業になるし、引き取り手のない寸足らず丸太や黒芯などが素材として売れる、と考えた。
二つ目は つくる過程を見せるショー。
ただ私は、そんなに伸びるように思えなかった。もちろん、ある一定数の需要はあるだろうが、やはり特殊なショーであり、そんなに全国各地で行うものではあるまい、また流行り廃りの流行もある……と考えた。
むしろ大会を開く方が、地域振興とともにビジネスとしても可能性がある。趣味で行うカーバーや見学者が集うことで地域に金が落ちるよう仕向けるものだ。もっとも、これだって同じ場所で開けるのは年に一度だろう。それに大会も全国で数が増えてきたから、人を集めるのは結構大変だ。
ちゃんとビジネス形態を保っているのは、私も関わった吉野チェンソーアートスクールだけだと思う。ただ吉野も、今はスクール開催日を減らしたそうだ。
となると、より完成度の高い作品にするためには、チェンソーだけでなく、電気工具を使って仕上げたり、ペインティングでよりリアリティを増す方向に行く。
もちろん、それは成熟してきた証拠だから、悪いことではないのだが……。
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城所氏は熊本でも馬の像を作っていて、現場の見学に行きました。走り出しそうな感じでしたが、チェーンソー以外の道具もいっぱい使っていて、馬の彫刻でした。(もちろん、だから悪いということではありません。)
こうなってくると、一周して円空仏みたいな単純な彫り物を作る人も出て来るのでしょうね。それはそれで楽しみな気もします。
投稿: 沢畑 | 2014/09/05 22:01
城所氏、最近は大物作品が多いようですが、今回のような数時間で仕上げる作品も、チェンソーアートの醍醐味です。でも、完成品は、通常の木彫と変わらないでしょう。木彫でも、荒い輪郭を刻むまではチェンソーを使う彫刻家は多いし。
私も勧めているのですが、いよいよ仏像を彫るようになるのではないかしら。仏師の世界に足を踏み入れる。チェンソー円空仏も魅力があると思う。
投稿: 田中淳夫 | 2014/09/05 22:13