「緑の館」という小説を知っているだろうか。
ウィリアム・ハドソンの小説で、まあ、恋愛小説と言ってもよいだろう。
南米のジャングルの奥地で出会った不思議な少女の話だが、彼女の話す言葉は、どこの民族のものでもない、小鳥のさえずりのような声だった……。
映画化もされているそうだが(主演は、オードリー・ヘプバーン)、私は高校で英語の教師に英文で読まされ、まったくキライになったのだが、その後翻訳を読むと、なんと素敵な物語なんだ! と感動した。
……そんな本のことを思い出したのは、先日の表参道・南青山で、見事な「緑の館」を見かけたから。
こちらは、ロマンスでもなんでもない、ようするに廃墟だ。ただ、緑のカーテンに包まれているだけの。これが都会のど真ん中。それもお洒落な街の一角にあるのだ。
それにしてもすごい。
見たところ、普通の住居なんだが、どこに玄関があるのかさえわからないほど、植物に包まれ蹂躙?されている。
窓も塞がれ、完全に密室だ。
近くに置かれた自転車も、緑の蔓に絡まれ、飲み込まれようとしている。
ここでは恋愛小説よりミステリーが似合うだろう。
しかし……こんな地価の高いところにも、空き地が広がり、さらに廃墟になっても撤去されない家が残されているんだなあ。
これは裏側。
周辺は駐車場になっている。
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