SINRA(シンラ)復刊2号が発売されている。隔月刊の11月号だ。
今号のテーマは、「森のいのち」と題して、クマとシカが教える森の未来、と謳っている。
一読して、旧シンラぽさが少し出てきたかな、という印象。復刊1号は、なんだか「田舎暮らしの本」みたいだった(笑)。
表紙やグラビアから、ヒグマやツキノワグマの写真がオンパレードで、記事には旧シンラ的なウンチクも並ぶ。また、シカも登場するが、どちらかというと切り口は、狩猟。ジビエ肉のアップも美味しそうだし、ハンターの心意気?も詳述している。狩りガールも多数登場している。
何よりスタンスとしては、日本ではクマもシカも増えている! としていることだ。間違っても「クマは絶滅寸前」なんてことは言わない。増えている理由も、ようは里山が崩壊して森が増え、餌が豊富になったこと。
全体として、真面目に、本気にクマとシカに向き合っているという点で、好感を持てたのだが、ところどころツッコミどころもある。
増えすぎたシカ対策としては、狩猟のほか、「オオカミを放て!」なんて噴飯ものの主張を真面目に取り上げているのは論外だが(笑)。生態学や歴史的事実を無視している。こんなの、囲み記事ぐらいにしておけばよかったのに……。
それでも、重箱の隅をつつくつもりはないよ。私は心が広いし、全体としては伝えたいことを間違っていないし、何よりシンラにはシンパシーを感じているからね……。エヘッ
ただ、どうにも妙な点を指摘しておこう。
左の記事は、クマが増えた理由を記した文の一部。
「日本は、国土の森林面積が約70パーセントの、世界第3位の森林大国である。」
この記述、なんかオカシイ。国土の森林面積? 世界第3位? こんな表現おかしくないか。
普通なら「国土面積の約70パーセント(67パーセントと書いてほしいところだが)が森林」だろう。
そして世界第3位というのもヘン。
森林面積が世界に比してそんなにあるわけない。ロシアとアメリカとブラジルと……中国だって日本より森林面積は多いはず。ようは森林率なんだろうが、これだって厳密には日本より高い国はたくさんある。
たとえば、こんなグラフもある。
島嶼国など小国の場合は、ちょっとの森林面積でも森林率が高くなるし、逆に国土が広いと森林率を上げるのは大変だ。
ようは、主要国の中でとか、OECD諸国内では、と付けないといけない。
だが、より不思議なのは、「国産木材の利用は0,53パーセント」となじみのない数字を出している。これはなんだ?1パーセント未満とは何を意味しているのか? 木材自給率なら、28パーセントとか、約30パーセントと記せばよい。
ずっとシンラを読み進めると、124ページにこんなグラフがあった。
どうやら、この右グラフからの引用らしいが、このグラフ自体がヘン。
どうやら全森林蓄積のうち、1年間で伐採している量を記しているらしいのだ。それが日本は0、53パーセントになるという。
日本は、大雑把に40億立方メートルの森林蓄積があり、1年間で2000万立方メートル前後しか木を伐採していない……だから蓄積が多すぎると示したいようだ。
しかし普通なら、1年間の生長量に対して、1年間の伐採量の割合を示すべきだろう。年間1億立方メートル育っているのに伐るのは2000万立方メートル……つまり20パーセントしか伐っていません、と説明した方が納得しやすいのではないか。
それに、グラフには日本以外の国の割合が書いていない。これでは比べようがないではないか。
アイルランドやポルトガルが上位なのは、森林が非常に少ない国なのに過剰伐採しているのかもしれないし。この割合が高いことは、決してよいことではない。むしろ森林にとって危険なのである。
なんか、勢い余って理解しないままというか、付け刃にデータをいじくったというか、せっかくの本筋の記述を狂わしてしまいかねないじゃないの。
以上、重箱の隅をつつきました(⌒ー⌒)。
私も『SINRA』買いました。松家さんの連載を読みたいがためですが。森林に関する記事は田中さんが取り上げるだろうと思っておりました。(笑)
これからも重箱の隅をつついてください。神は細部に宿るといいますから。
投稿: 松浦茂 | 2014/10/02 16:20
松家さんの連載とは、通ですねえ……。経歴を見ると、元新潮社の編集者なのか。それがいきなり北極圏(@_@)。
細部にこだわり続けて、木を見て森を見ず、にならないよう気をつけますm(._.)m。
投稿: 田中淳夫 | 2014/10/02 16:48
木を見て森を見ず、な森林ジャーナリストも困ってしまいますが、クマを見て森を見ずな某愛誤団体も、クマったもんです。
投稿: 昔鳥獣担当者 | 2014/10/04 15:21