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2014/10/14

提唱・林床純収益説

林政学の世界に、土地純収益説と森林純収益説という二つの学説がある。

 
ようするに、林業を行う際の考え方なのだが、これらを上手く説明するのは難しい。そもそも私も、完全に理解していないかもしれない。
にもかかわらず、ちょうど明日発売になる『森と日本人の1500年』(平凡社新書)で紹介したのだが、極めて簡単に端折りながら文脈に載せて書いたので、多分、専門の研究者が読んだら「違うだろ!」と怒るはずだ(笑)。
 
まあ、それでもさらに端折りながら思い切り大雑把に説明すると
土地純収益説」は、林地を資本として、その上に植林(投資)して育て、伐採する際の収益を計算する考え方。
森林純収益説」は、森林を資本として森林が生み出すものを収益とする考え方。
 
両者は長い間論争を繰り返してきた。が、私に言わせれば、どちらも古臭い学説だね(-_-)。なんたって、収益を木材に依存する考え方が古い。しかも収益を得るまで時間が長すぎ。それでは経営の範疇からはみ出してしまう。所詮は前世紀、いや前々世紀の学説だ。
 
※また、お怒りの声がこだまするだろうなあ(⌒ー⌒)。
 
 
が、ここで私は考えたのだ。不動産としての土地、あるいはその上に生えている樹木の群=森林だけを資本に見立て、価値を見出すから無理があるのだ。
 
その間にある林床空間、さらには土壌にも価値があるではないか。
 
そもそも樹木の苗を植えて収穫するまでの期間は、あまりに人間的に長すぎて、収益として利回りを考えるには無理がある。そんなものは、おまけのボーナスに見立てたらよい。
 
森林の価値は、林床にあり。
 
林業経営は、林床で行うのである。生産・収益の舞台を主に林床と考えることで、発想を一新する。すると、まったく新たな経営が可能になるはずだ。
 
生産としては林床の方が広くて、手をかけやすく、栽培から収穫までの周期が短い。経営上は絶対に有利である。そのように考えた方が、経済活動に向いているのではないか。
 
 そこで提唱する。「林床純収益説」を。林床に生える草本もしくは低木、さらに土壌に価値を置いて経営するのである。
 
経営の基盤を林床に置く。短期間の栽培、あるいは空間そのものの利用だ。その上に繁る高木は、数年~数十年に一度収穫する程度で、その利益はボーナス扱いと考える。
 
3   
少しモデルを考えてみよう。
 
木のない土地(禿山、伐採跡地など)なら、焼畑のように山肌を不耕起栽培でソバやキビなどはどうだろう。樹木が育ってきたら、薄暗い林内で育つ作物に転換する。山菜やキノコ類、薬草が可能だろう。
 
私は、花卉の可能性も十分あると思う。日陰で育つ花木も多い。それを切り取って出荷するだげてなく、ベニドウダンなど山野草の花を鉢植えで栽培すれば、鉢ごと販売できる。
   
さらに花を販売するだけでなく、観光客を誘致して、相当な収入が見込めるのではないか。
たとえば、林床に花の美しい草木を育てる。春にカタクリ、ミツマタ、初夏にササユリ、アジサイ、秋にヒガンバナ……が咲くようにしたらどうだろう。
 
草本に限らず、林内に低木を育ててツマモノを得ることも考えてよい。そして観葉植物とか、園芸用花木、庭木も可能だ。
 
なお上木となるのはスギやヒノキなど針葉樹でなくてもよい。広葉樹を育てたら針広混交林になって、紅葉も楽しめるだろう。もちろん多様な木材も生産できる。
 
さらに牧草としてウシやヤギ、ヒツジの飼育を行う。ブタも可能だろう。
もちろん、野生鳥獣も資源だ。出没するイノシシやシカも収穫すればジビエとして出荷できるだろう。
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いずれも短期間(1~数年)で栽培・収穫が可能だから、損益計算をしやすい。しっかりした計画を立てれば投資を呼び込むこともできるだろう。
 
このように林床に草木を育てるためには、林内照度を確保しなければならないから、適時、間伐する。あくまで照度調整のための伐採だ。ただし、間伐材は販売してボーナスを得る。
 
栽培ばかりではなく、林床空間を貸し出す事業を行ってもよい。別荘や林内オフィスとか野外カフェ、アスレチック施設を設けて販売・賃貸する。一部はツリーハウスのように林床から少し上の空間を使うことも考えられる。森の中でお茶できる店があったら人気を呼ぶと思うのだが。
 
林床には多くの動植物が生息するから、生物多様性の維持にも一役買う。
そして林床には土壌も含まれる。林床の生産物は、ほとんどが土壌あっての産物だ。土壌を大切に扱ってこその林床栽培である。また林床植生をしっかりさせれば、土壌が守られるのだ。
 
つまり林床を大切にすることは、土壌を守ることであり、砂防と治山につながる。そして生物多様性という公益的機能も加えると、生態系サービスのほとんどを担うのである。加えて景観も形成する。となれば、大手を振って環境関係の助成金を要求できるだろう。
 
ここでは「土壌純収益説」を主張してもよいかもしれない。土壌の価値によって換金作物を生産し、同時に環境に寄与する。
 
 
木材生産なんぞ、林業の一部に過ぎない。木材にしたって、どうしても使い道を住宅など建築材料ばかりに固執するから行き詰まる。
 
林業は木材生産。木材は建材……。こうした固定観念から離れることで、林業にイノベーションを引き起こせるのである。
 

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コメント

 以前、町内の篤農家の裏山100年生スギ林(手が入っているようで入っていない、入ってないようで入っているような山)に散策路を入れて、択伐をして、そこでその篤農家の生産しているお茶をアイテムに、山中喫茶をやろうという話をしたことがあります。もう、4年ぐらい経ちますでしょうか。その方、今年の県の茶品評会で農林水産大臣賞を受賞しました。その方にとっては悲願の受賞で(これまで、何度も獲ってもおかしくないといわれ続けていたけど獲れなかった)したので、現在結構いい気分ですから、もう一度アタックしてみようかなあ。切り株を椅子にしたり、ハンモックをかけたり・・・。かなり明るくすれば、ヤマビルも除去できると思ったり。
 ゆったりと銘茶を愉しむスギ林。そんな価値を山に見出していた篤農家がいることもわが町のスキルだなあと思ったりしています(実際にはやっていない状況ですけど)。

当方の取り組みの件も聞いてください。
①→以前にもお話ししましたが、間伐処理地の林間で『畑山葵』を栽培する件。こちらは初期段階で失敗しました。・・・種を数千個、植え付けたのですが、発芽もしなかった。
②林地に於いて東屋を建築中です。立っている木を皮むきし、
建物の柱として利用して建築します。

●いずれも田中様発信の各種情報からヒントを得たものです。
○いずれにしても『新書籍』を楽しみにしています。

山中喫茶! それも林床利用のアイデアですねえ。
いっそ、林床でチャノキを育てるのは無理でしょうか。日除けをかける玉露のように。

山葵は難しかったですか……。種子ではなく苗にすべきなのかな。身近な山でも、ドングリからの発芽はわずかで、さらに稚樹まで伸びるのは皆無に等しいですね。それほど種子の育つ確率は低い。一方で、萌芽は強いです。

具体的な利用のアイデアはともかく、生産-収穫の舞台を林床とする発想で経営計画を立てると、まったく違った林業が成り立つと思います。

実は、茶畑の周辺のスギ林の中にはチャノキが結構生えています。あるいは、以前は茶畑だったところがスギ林になっているところもあります。
収益性(単位当たりの収穫量)を目指す場合には、特に夏季の日照量が重要で、この時期に土台となる茶葉を形成させるための光合成が大事です。
一方で、収穫の前にはアミノ酸を蓄えるために寒冷紗などで遮光する栽培方法もあります。
実際には、完全林内の山茶を作っている農家などもあったりしますので、チャノキの林床栽培は、通常収穫収益性をテーマにななければ成立しますし、もしかしたらここに付加価値ができてくるのかもしれません。ただ、お茶摘みに時間がかかるなあ。35キロ機での製茶か、手もみ茶になるかなあ。

ヤマチャ栽培もありましたからね。
光合成を考えれば、群状皆伐をして、林内に光の入る環境にしてから茶畑にしてもいいですね。その方が収穫に機械も使えるかも。

そして林内茶畑カフェを開く(^o^)。

カフェで利益が上がると、林業なんてやってられない、という事態になるかも。
実は、篤林家だったのに、林床でアジサイを育てて利益が出るようになると、林業は止めた、という林家もいます(笑)。

 裏山スギ林を皆伐して、野生のツバキとツツジを育成しながらヤマザクラとイロハモミジ(役場の駐車場の発芽を採取)を植栽して自分の好きなように遊歩道を作ったじいさんがいます。大井川鐵道の駅でイベントをやって、その客を裏山に誘致しようとした(もちろん入山料又は休憩料をとる)気配があるのですが、目論見が外れたようです。
 その方は、借金をして山を購入した方と同一人物でして、純粋に森林経営計画での補助金で借金を返済しようとしているようですが、かなり苦戦をしている模様です。
 なお、この情報は公務上知り得た情報ではありませんので、地方公務員法には抵触しません。

ツバキやツツジ、モミジ! それらが本当にキレイに咲いたり色づいたら、きっと訪問客に喜ばれますよ。
急がず、しっかり宣伝することです。いきなり入場料を取るのではなく、まず無料開放で数年人気になるのを待つという手もあります。

ぜひ、宣伝に力を貸してやってください。ネットはもちろん、大井川鉄道客にアピールすることや、旅行社に声をかけるのもいいですね。
 
鈴木さんが個人的に知った、借金で山を買って頑張っているじいさんに、めげずに頑張るようお伝えください(^o^)。
 
 

 じいさんの苦悩はしばらく続くと思われます。でも、ヤマザクラはかなり大きくなりました。見栄えがしてきました。イロハモミジはイマイチ生育は芳しくないようです。ワイルドツツジの一部は盆栽になっている株もあったりします。
 盆栽の販売でも持ち掛けて見ようかなあ。苗の販売もありだと思ったり。
 そうそう、わな猟の免許を取って、裏山のイノシシ、アナグマとも戦いを始めた様子。有害捕獲であれば報償金が出る。

本を買いました。新横浜の、老舗の文教堂。
直ぐに読み開きたいのですが、生憎、今日は活動舞台の里山森林へ向かわねばならないので、夜に楽しみます。

おお! 一番乗りです\(^o^)/。

私も、まだ書店では見ていません。これから探しに行こうかな。

AMAZONより今日出荷のメールありました。楽しみです(^^)

アマゾ~ンも動き出したか!
 
予約してくださった皆さん、今しばらくお待ちください。o(^-^)o。

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