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森と林業の本

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2014/10/26

栃木の「皆伐」補助事業

栃木県で皆伐に補助金を出す事業が進んでいることをご存じだろうか。
森林資源循環利用先導モデル事業」と名付けられており、今年度の新規事業として、森林組合ほか林業事業体と製材業者、それに工務店などビルダー3者が協定を結んで、民有林を皆伐する事業に助成するのだそう。具体的には協定を結んだグループに、皆伐1ヘクタールあたり32万円を助成する。
 
そして決まったのは、12グループで事業面積計25ヘクタール。森林組合など「川上」が代表となり、製材業者と工務店が参加したもの。皆伐は14年度内に行うそう。
 
 
「川上」「川中」「川下」までをグループ化することで、安定的な取引形態を構築し、民有林の利活用を促進させる……いやあ、よい計画じゃないか。設計に合わせた造材と製材が行えるほか、合板用やバイオマス用にも分別できるだろう。それに六次産業化にもつながるし、木材の流れに合わせて適正利益を分配できるし……。
 
ただ疑問は、なぜ皆伐なんだろう、ということだ。
 
栃木県内の民有林面積は約12万ヘクタールで伐期が来ているのが7割に達することが根底にあるらしい。。そして安定的な取引を構築するのが目的とある。そして皆伐で全量搬出を促し、木材のフル活用を目指す……という。
 
でも、それがなぜ皆伐なんだ
 
 
誤解のように記しておくが(これまでも幾度か記した通り)、私は皆伐に反対ではない。時と場合によって皆伐が有効な施業になるところもあるだろうし、また皆伐から植林への技術を残すためにも必要だろう。また伐採跡地の草原も意外と重要だ。イヌワシの餌場にする、なんて計画もあるが。経営的にも、生態学的にも、皆伐はあってもよい。
 
しかし、補助金が出るのは、皆伐だけ……。
 
たとえば強度の間伐や群状択伐なども選択肢に入るのではないか。ようするに木材の安定供給ができればよいのなら。
 
今回は、皆伐面積もしれている。12グループで25ヘクタールということは、1か所2ヘクタール程度ということだ。(私は、皆伐する単位は1ヘクタール程度が限度じゃないかという思いはあるが、そこまで厳密に言わない。地形や地質を選んで5ヘクタールくらいまでなら仕方ないかな、と思っている。)
しかし、なんだか皆伐が条件で、皆伐すれば補助金がつくというのが先走ると、今後どんな皆伐が広がるか気になる。栃木以外の県が物真似で始めるかもしれないし。
 
皆伐というのは、ようするに主伐=収穫なんだろうが、民有林にとって最大の収益事業だ。そこに税金注ぎ込むのか……。お金儲けしたら補助金もらえますよ、というのは、なにかしっくりこない。ビジネスの規範が崩れるような気がする。いわゆるモラル・ハザードだ。
 
なんだか、林業関係の政策は、今後、皆伐補助に向かう先駆けことを暗示しているようだ。その先駆け的な意味を持つのだろうか。
 
ヘクタール32万円という額が、施業上はどれほどの意味を持つのか私の感覚ではわからないので教えてほしいのだが、これは伐採への補助金? それとも再造林費用?  
 
せめて皆伐跡地の計画をしっかり定めることは絶対必要だろう。
単に植林すればいいだろ、ではなく、獣害対策に下刈り、除伐……と10年くらいは世話を見るプランを作ってほしい。いわば長期伐採権制度だ。しかも、そのシステムに製材所や工務店まで参加するなら面白い。
 

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