今朝、テレビを見ていたら、いきなり林業が取り上げられていた。
森は宝の山、新成長産業としての林業、という最近流行りの切り口なのだけど、そこでメインに紹介されたのは、自伐林業。ようするに森林所有者が、自らの手で伐採等を行う方式の林業だ。小規模でも、自分でやればコストを圧縮できて利益が出る。ただし、副業が多い。
政府の石破地方創生大臣も出演して、「ともすれば大規模化や機械化ばかりを推進していた林業に、そうではない別のやり方もあることを示せるのではないか」と持ち上げる。大規模化を推進していたのは、自民党なんだけど。ただ、その路線に乗って「森林・林業再生プラン」を立ち上げたのは民主党だから、今となっては批判しやすいのかも。
ま、それはいいのだが、自伐林業が拡大していく中で、隣の集落の森林も、委託を受けて施業する話が出た。そして画面には「委託を受ける自伐林業」。
これって、言語矛盾やろ(笑)。
一般の森林所有者は作業を森林組合などに委託するから利益が出ない、という話をしておきながら、今度は自分たちが委託を引き受ける側に回るなんて。委託する側からすると、その委託料は(森林組合)より安いのだろうか。
しかも、ここまで来ると副業とは言えず専業になる可能性大だが、そうなると利益をしっかり確保できるよう計算して経営しないといけない。安易に安く請け負ったら経営が立ち行かないだろう。
ようは、自伐林家が自分の山と一緒に、周辺の山を集約化する形で施業を行うということだ。別に珍しいことではない(事例はたくさんある)が、問題は、自分の持ち山と他人の山を同じような扱いができるか、という点だ。
森林組合、あるいは林業会社・事業体が、他人の山を請け負った場合、委託料の額もさることながら、どこまで森林の将来を見据えた作業を行えるかが課題だ。目先の利益に走ると、荒っぽい施業になりかねない。そこで将来的に森を任せてもらえるのか、それとも一過性の作業請負なのかが重要になる。
いくらていねいに扱っても、来年は委託してくれないのだったらやる気を失う。また、どうしてもコストが高くなりがちな際に、自分の山なら躊躇するような荒っぽい施業を委託を受けた山にはしてしまわないか。
この場合、委託の期間も影響する。1年2年分の施業ではなく、10年単位で山を任せてもらうことが必要だろう。それも伐採だけでなく、その後の森づくりも請け負うべきだ。さもないと、自分の山はていねいに行うためコストがかかり、その分だけ他人の山を荒っぽく扱って目先の利益を確保する……というイヤなパターンに陥りそうだ。
もう一つ、懸念を感じたのは、結局、現在の自伐は「量の林業」の範疇に入っている、という点だ。
自伐自体は規模が小さいのだが、副業でもあり、また間伐主体だから搬出した材は、バイオマス用だったり、合板用などであり、材質を吟味した利用法を選びにくい。当然、材価は安くなる。やり方次第では、もっと高く売れるはずの材を十把一絡げに扱いかねない。
しかし、今の林業で真に求められているのは質の林業である。利用者に評価の高い材を出して、価格も高くすることだ。
かといって、自伐林家がユーザーの動向を把握しつつ、造材や搬出、それに木取りまで神経を配って、高度な交渉と取引をして、質の高い材を提供する代わりに高値で売るのは大変だろう。できなくはないが(実行している林家もいる。ただし専業)、少数派だ。そうした林家は、単に自伐林家と呼ぶより、プロ林家である。しかし、ほとんどの自伐林家は、その次元にはまだ達していないだろう。
私は、自伐林業の価値は、自分の山だから愛を持って取り組めることだと思っている。だから施業もていねい、利用もていねいにして高く売れる……自伐林家が委託で他人の山も引き受ける場合、それを意識してめざしてほしい。
木取りの妙。より価値を出せるよう、製材する技術だ。
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