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森と林業の本

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2014/11/07

保護林100周年

来年2015年は、保護林が制定されて100周年なんだそうだ。

 
保護林……国立公園から世界遺産まで保護指定の森ならアチコチにあるが、ここでは単に保護保全された森林というだけではない。
 
保護林とは、国有林内で林野庁独自に設けた保護林制度なのだそうだ。制度が制定されたのが1915年(大正4年)学術研究や貴重な動植物の保護を目的に発足させた。
 
それぞれ目的別に扱っており、現在は区分が
(1)森林生態系保護地域
(2)森林生物遺伝資源保護林
(3)林木遺伝資源保存林
(4)植物群落保護林
(5)特定動植物生息地保護林
(6)特定地理等保護林
(7)郷土の森
となっている。
 
年々増えているだが、現在(2014年)で849か所あり、総面積96万5000ヘクタールにもなるそうだ。これは国有林全体の12%以上に相当するそうだからバカにならない。
 
ちょっと驚くのは、これらの保護規定に法的根拠はないそうだ。国有林なんだから、林野庁が保護すると決めたら他者が手をつけられないからなんだろうか。しかし、保護林制度が制定されたのは、現在の自然公園法や文化財保護法の制定より古いという。自然保護を定めたのが文化財保護より早いのは、なかなか意味深いかもしれない。
 
 
ところで、これまでの保護の中身は、基本的に自然に委ねて手をつけないことだった。動植物による森林生態系の「現状維持」が目的だったからだ。
ところが来年度より、保護林に「復元」の概念を取り入れようと検討し始めたという。自然まかせでは維持できない(保護にならない)現状が生じているためである。
 
たとえば過剰伐採や放置で、以前とは違った森林になってしまった例があるほか、外来種の侵入や、シカ、カモシカ、などの異常なほどの食害も起きているからだ。このままだと保護すべき生態系を復元できない事例が目立ってきた。そうした森林は、人が手を加えないと元にもどらない。むしろ別の生態系へと姿を変えていく可能性が高いのだ。
 
具体的には、除伐や間伐、それに植林も入るのかもしれない。……いわば手をつけない消極的保護から、手をかけて守る積極的保護への方針転換である。正確に言えば、従来の方針に積極的な部分も付け加える、だろう。
 
もっとも、保護林ならどこもかしこも手を出すのではなく、来年度に向けて全国で手を加えることが必要なところを数カ所を選定するとか。森林の復元や保護には100年単位の時間がかかり、予算もかかる。
 
こういう地味な情報にも目を配っておきたい。

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