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森と林業の本

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2014/11/19

生きる切り株

生ける屍……という言葉はあるが。

 
本日も、三重の山中を歩いてきました。
で、見かけたのがヒノキの切り株。
 
通常、切り株とは樹木を伐採した跡だから樹木の死をイメージする。これが萌芽が伸びるような広葉樹とかウラスギだったらともかく、ヒノキでそんな例はない。
 
と、思っていた。
 
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だが、生きるヒノキの切り株というのがあったのだねえ。上記の写真では、一件伐られて枯れたように見えて、樹皮の切り口がわずかに盛り上がっている。これは生きているからだそうだ。
 
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これもわかりやすい。内部の材(心材、辺材とも)腐り始めているが、樹皮部分(形成層)は分厚く盛り上がり始めている。
 
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最後は、材は腐ってなくなりつつあるが、樹皮だけ生きている。一部成長しているようだ。このままいけばヒノキの器ができるかも。
 
なぜ、伐られて枝葉がないのに育つのだろう。どうやら菌根菌の影響だそうだ。菌根菌は、生きている植物の根につく菌類の一種だが、これは菌と植物との間で栄養素を交換し合う……つまり共生している。この場合、ヒノキは葉で合成したデンプン等の栄養素を菌に提供することはできなくなったはずだが、律儀に菌は、ヒノキの根に栄養を送り込んでいるらしい。
 
そのおかげでヒノキの切り株も生き延びていると考えられるという。
 
生態系は、なかなかしぶとい。弱肉強食に見せかけて、実は共生して弱った生き物を支える仕組みも備えている。もちろん菌根菌にとっても、ヒノキが枯れたら自分たちの生存が脅かされるからだろう。
 
 

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