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森と林業の本

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2015/01/25

林業発祥は縄文時代!?

拙著森と日本人の1500年』で、林業の発祥について考察している。

 
そこで付けた林業」の定義には、
 
1、木材の社会的需要。自分の家などの自給自足的木材調達は含めない。
2、輸送手段の確保。遠くの産地より木材を伐り出して運ぶ組織と技術がある。
3、木材の加工技術の存在。目的の長さに合わせたり、角材、板材、さらに目的の形に加工できること。
4、木材の調達が持続的であること。
 
この4つが揃わないと林業は産業として成り立たない、とした。
ただ4番目の持続性は、大昔なら天然林から伐り出しても森林全体の生長量に追いつかないから自動的に持続できる。いよいよ消費が激しくなっても森林の蓄積があるため、木材が枯渇するまでにタイムラグがある。そこで林業の古代発祥としては先の3つを考えればよいとした。
 
そして古くは邪馬台国が登場してから大和政権が誕生する飛鳥時代まで(古墳時代)を林業発祥の目安とした。
もちろん地域を狭めれば、弥生時代の集落(クニ)にも、先の3つの定義に納まる林業的な働きはあっただろう。弥生時代の建築物には、それなりの大きさがあって木材加工を行った部材が出土しているからである。 
 
 
さて、ここでこんなニュースがあった。
 
Dscf6943 1月23日の朝日新聞。
石川県の能登町で発掘調査が行われていた真脇遺跡にあった川跡とみられる幅4メートルの溝で、多数の板材とともに角材が出土。そこにはホゾが刻まれていたというのだ。
 
見つかったのは長さ91センチ、幅16センチ、厚さ約7センチの角材。樹種はアテ(アスナロ)らしい。肝心のホゾは、先端に長さ10センチ、太さ6センチだそうだ。しかも芯去り材だという。大木から角材に製材したことになる。
 
真脇遺跡は6000年前から2000年前まで続いた集落跡とされるが、この出土物の年代は、約3000年前。縄文晩期らしい。なお遺跡の中には巨木の柱を円周上に並べた「環状木柱列」の遺構も見つかっているから、結構大きな権力機構と、組織力があったのだろう。
 
まだ完全に発掘が終わっていないのでわからないが、おそらくこれに対応するホゾ穴を開けた角材もあるはずだ。つまり木材加工技術が存在していたのだ。しかし、鉄器など金属がまだ伝来していないはずの縄文時代だ。石器で加工したのだろうか。かなりの精度だが。
 
3 発掘風景
 
 
となると、少なくてもこの遺跡のあった集落では、「林業」が成立していたのかもしれない。長きに渡って存立していた集落なら、木材需要も絶えることなくあり、それを調達する技術者集団も生まれていただろう。伐採や搬出、輸送技術があり、個人のものとは思えない建築物を建てていた……。
 
 
林業の発祥は縄文から!
 
さっそく書き直さないといけないなあ。
『森と日本人の1500年』が売り切れて、再版が必要になったら改定するよ。だから早く売り切れてくれ(~_~;)。
 
2 今も平積みされている立派な書店。(ジュンク堂なんば店)

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