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森と林業の本

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2015/01/06

「森林総研」のCLT特集

年明けから、急に各新聞やテレビニュースでCLTが盛んに報道され始めた。国会質疑にも登場したらしい。

 
もっとも内容は、なんら新しい部分はなく、単にCLTという建材に林業復活が期待される……と言ったもの。昨年は専門分野か、せいぜい産業界のネタとして語られていたCLTが、突然各社一斉にとなると、意図的なものを感じざるを得ない。
 
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ちょうど森林総合研究所の発行する機関誌「季刊森林総研」27号 にCLTの特集が組まれていた。
 
ざっと目を通す。なかなか上手く、CLTの紹介をしている。
 
欧州におけるCLTの現状紹介もある。どのように登場したのか、どんな使い方をしているのか。社会的な面にも触れている。
 
が、日本の状況に移った途端、いきなり物性ばかりの羅列になる。
接着剤の話やら、ヤング係数がどうだとか……。
 
もっとも知りたい素材となる原木の性質や価格については触れていない……。
 
本当にスギ材がCLTのような直交貼り付けに向いた木質なのだろうか、という点をもっと追求してほしかった。もともと強度は弱いし、含水率が高すぎる。ラミナの製造には手間がかかると同時にコスト高になるはずだ。
 
トウヒなどでつくられる欧州産CLTとスギCLTとでは、当然性能差は出るだろう。もし欧州産の方が性能が高ければ、国産CLTはビジネスとして成り立つのか。価格も、同等にできるとは思えないが、仮にするためには原木価格を相当抑えないといけないはずだ。
 
ここに記されているのは、建材としてのCLTの機能で、経済面や林業界のことは抜け落ちている。
 
 
それでも、多少面白い点として、
 
断面積当たりの強度性能(耐荷重性能)や弾性係数(耐変形性能)は木材そのものと比べて必ずしも高くありませんが、断面積を大きくすることで、これらの性能を高めています。
 
ところが、
 
幅や長さを非常に大きくすることは、日本は輸送上の問題から限界があります。
 
これは、ヨーロッパでは巨大なCLTが使われるが、日本では寸法が大きいパネルにすると、トラックや道路事情から運べないことを示している。
つまり、CLTでビルをつくることはあまり期待できない。結局、小さめのパネルにして建築物の壁や床に使うことになるのだろう。
 
……これって、今でも厚物合板でやっていることじゃない? つまり、合板の需要を奪うことになるだろう。
本当にCLTが国産材の新需要を生み出すことに結びつくのか、ちゃんと説明していない。
 
  
  
結局、CLTが林業にどのように結びつくのか、誰も論じていない。建材として魅力があるのは、建築業界の話。ところがニュースになると゛なぜか「林業再生の切り札」となる。なぜCLTが林業再生になるのか説明してほしい。
 
木材需要が増えるから? 国産材が? 
上記の推測のように、実は合板に取って代わるだけかもしれないし、輸入CLTばかりになるかもしれない。そもそも建材需要そのものが、今後伸びるのかどうか疑問がある。
本当に増えるのか検証した研究は誰もしていないのか。
仮に需要が増えても価格が問題だ。
 
みんな、気がつかないのか。薄々気づいても触れないことにしておくのか。
 
林業界と建築業界の乖離は、ここでも進んでいる。
 
 

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コメント

号令をかけているのは、建築業界でも林業界でもないのだと思います。
どちらも、どうせぇちゅうねんと思っておられるやもしれません。

そうかもしれませんね(笑)。私の取材でも、建築業界の人は、あんまりのっていなかった。林業界は様子見かな? 

結局、積極的に旗を振っているのは、木材加工業の一部と、政治家だけかもしれない。

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