昨日もチラリと紹介した、東京都港区の「みなとパーク芝浦」。
完成したばかりだが、総合支所やスポーツセンターの合体施設だが、地下1階地上8階の、まあ、贅沢な造りだこと(笑)。6階に長さ200メートルのランニングコースがあるんだもんなあ。
ただ注目すべきは、「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」のモデル事業として、床や壁、天井、そして家具やら建具など、ふんだんに国産材を使用している。総量は477,32立方メートルになるそうだ。鉄骨・鉄筋コンクリートづくりの建築物としてはよく使った。
種類も、スギやヒノキだけでなく、トドマツ、エゾマツ、カラマツ、シラカバ、クロマツ……とかなり幅広い。全国の港区と協定を結んだ地域から集めたようだ。
港区は、金を持て余しているのか……と思わずにいられないほどであったが、その点は置いておいて、その木材の使い方、デザインはなかなかよい。
アトリウムだが、右の壁に注目。
よくある板をベタ張りしているのではなく、棒状に張っている。
天井。
こちらも板で密閉するような木材の使い方ではなく、板を縦に並べるという趣向。当然、その隙間から無機質の天井裏が見えるわけだが、それがなかなかよい。
3階の柵のような壁。
これも、あえてベタ張りしていない。
ほかにも壁なども、無機的なクロスの一角に木の棚がしつらえられてある。
無機素材と有機素材(木材)が上手くマッチングしている感じだ。手垢についた言葉で言えば、「おしゃれ」。
よく「木材を使いました~」と主張した建築物は、住宅にしろ公共建築にしろ、うんざりするほど木をこれでもか、と押しつけているが、あえてスカスカなのがいい。
手すりも木製……と思えたが、実は鉄製の手すりを木製カバーで包んでいるのであった。
もちろん使っている木は集成材。
これもいい。私は、下手なデザインで使われる無垢材は嫌いなのである。無理に大径木を削って使っているのを見ると、センス悪いなあ、と思ってしまう。デザインは、もったりして変化が少ない。
だいたい無垢材を使うと、その裏で捨てる木材が山ほど出る。それこそもったいないし、環境破壊だと感じる。(まあ、集成材だって、張り合わせる過程で、莫大なかんな屑を出してしまうのだが。)
私の理想の木の使い方は、少量の木材を、高度な加工技術と素敵なデザインで使って、高付加価値にすることだ。そうして山元への還元を増やせば、山元もたくさん木を伐らなくても利益を得られる。
木をたくさん使うとコストが高くなりやすいが、少量ならそんなに総額を上げないだろう。
たとえば、この施設も無理に木造建築にしてたくさん国産材を使おうとしたら、それこそ莫大な金額となり、しかも使い勝手が悪くなりかねない。
日本の山は木が余っている? なに、木は伐らずに山に残せば、自然がいいようにしてくれる。人間が管理しなけりゃ、森は健全に育たないなんてのは思い上がりだ。病んだ森も、ほんの少し手を添えると時間が解決するだろう。
むしろ、下手に木を使おうと、木を伐る方が危険なのではないか。
……ともあれ、センスのよい港区(ヨイショ)は、それを実践してくれるよい顧客だと思う。
使われた全国の木の見本。
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