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2015/03/19

林業雇用~山村が過密から過疎になった理由

かつて拙著で、「山村はかつて過密だった」というテーマで記事を記したことがある。(『伐って燃やせば「森は守れる」 』、『森林からのニッポン再生 』ほか)

 
過密だった時代とは、太平洋戦争直後を想定している。あきらかに山村は、キャパシティを越える人口を抱えていた。
この点を解説し始めると長くなるので省略するが、簡単に言えば、戦災で焼けた町から仕事と食料のある山村へ移り住んだ(疎開ほか)人が多かった上に、海外植民地(台湾、朝鮮半島、樺太、満州、南洋諸島……)からの引揚者が入植したからである。 
 
それが昭和40年代以降、再び減少へと転じて、ついには過疎と言われるようになるのはどうしてか。
 
これまた詳しく論じ出すと長くなるので省略する(~_~;)が、ここでは一つの要因として林業の技術革新があったことに焦点を絞って考えてみたい。
 
 
具体的には、伐採にチェンソーが導入されたことと、搬出に森林鉄道、さらにトラック輸送が広がったことだ。
 
それまでの手挽き鋸と、修羅、木馬、筏流しが廃れる過程で、生産効率が飛躍的に上がった。当然、生産量が同じなら雇用が減らせるわけだ。
たとえばチェンソーの効率は、鋸の10倍以上と言われる。言い換えれば、これまで10人で行っていた伐採を一人で行えるようになった。修羅を組み立てたり、木馬を曳いたり、筏を組んで流したり……の人員も林道を入れてトラック輸送になれば削減させられるだろう。
つまり山村は人口が減っても、林業は十分維持できた。むしろ人口減少は山村の扶養人口を適正値にもどす過程だった。
 
ただし当時は、木材生産量を増大させていたので、効率が上がり余剰となった雇用を切らなくてもよかった。より木材生産の拡大に注ぎ込めたのだ。
チェンソー自体も、十分に使えるまでに性能がアップするには時間がかかり、鋸を使っていた杣人が徐々にチェンソーを扱う技術を身につけて扱う余裕もあった。
さらに町の復興と、高度経済成長の始まりから商工業の労働力が求められ、農山村から出る
人々を吸収できた(町が人材を強引に吸引した)から、余剰人口はだぶつくことなく村を出たのである。
 
 
だが、現在進めている林業機械化……高性能林業機械の導入などを見ると、より生産効率を高めることを目指しているわけで、さらに林業の雇用を奪っていくだろう。しかし、代わりとなる仕事口は山村内にはない。より一層の人口減を押し進めることになる。
 
 
そこで、自伐林業のようにローテクにした方が、林業雇用を増やして山村の活性化になるという声が出る。機械化・生産性アップのアンチテーゼだろう。
 
もちろん生産効率が落ちるわけだから、利益も減る。それをどう維持・確保するかが課題だ。請負ではなく自伐にすると、外注代がそのまま収入に振り返られるという論法もある。しかし、その策は万能ではない。小規模・家族的経営ではマネジメントの低下を招き、ロスを増やすだろうし、材価下落への対抗策にはなり得ない。材価を上げるような生産を自伐で行うのは至難の業だ。
 
しかも日本の木材需要が縮んでいるうえに、技術革新のスピードが極端に早まっている。また求められる木材の質も、流行によって早く移り変わる。
すると現在の機材や材質がすぐに陳腐化する。作業や販売のシステムがガラリと変化すれば高価な機材も搬出ルートも、すぐ古くなるだろう。売れ筋の商品もすぐ移り変わる。かつては高値だった磨き丸太など役物も流行遅れになって売れなくなったように……。このスピードに、林業人が適応することができるだろうか。
 
 
林業の機械化が行き着く先は、無人林業かもしれない。機械(ロボット)が伐採搬出を行う。そして造林までやってしまう。
そんな世界になれば、林業に必要な人材は、ロボットの管理者と企画立案部門だけだ。加えて交渉・営業部門ぐらいかもしれない。山村に人がいなくて林業が可能になるだろう。
 
林業人として生き残るには、クリエイティブな部分(企画)とコミュニケーション部門(営業等)を強化しないといけないだろう。いや、両分野のスキルを身につけた人だけが、林業人=フォレスターになれる。
 
Photo 明治時代の林業現場。
 
もちろん、それでよいとは少しも思っていない。
むしろ、そこまでして林業は専業で生き残らねばならないのか、とさえ思う。ならば山村に暮らすことと林業を営むことは、切り離して考える時代が来ているのかもれない。
 
……実は、こうした雇用の崩壊は、林業だけの話ではない。21世紀は、この世の中の職業すべてが、従来型のスキルでは生き残れないのではないか、と感じている。もちろん、ライター・ジャーナリストも……。
 
 

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コメント

 植林という作業をロボットで出来るような研究している人いるのでしょうか?興味あります。苗木は無人機(ドローン)で自動的に補充。

残念ながら知りません。
でも、欧米では進んだ器具があります。日本のように鍬で穴掘って……という旧態依然の方法ではなく、杭を打つように差し込むもの。これを重機を田植え機械のように改造して、斜面を植林できるようにするのは可能ではないかと思います。
伐採しながら、その後にすぐ植えるとか。。。

苗木のドローン輸送は可能ですね。吉野ではヘリコプター輸送していたけれど。

日本遺産の街に相応しいまちつくりを考えています。千年の過去が、森が育む素材から涵養されたことに抵抗感がないことから、林業界に恩返し(?)の意味を少しだけ込めて、北条執権邸跡の常盤邸の復元、野村総研跡地の木造立て替えによる整備活用を
民力でトライすべく下準備をすすめています。
此処に、林業大手、林業行政の協調を取り込みつつ工夫しています。が・・・、田中さんの記事に出会い、我が意と重なるものを見、
一度、鎌倉で、おめに掛かりたく存じます。何しろ、「森 !」と名の付くことは、ロビンフッドしか思い浮かばないヤロ~です。今日庵
 鎌倉酔狂 拝

鎌倉に最後に行ったのは5年前かなあ。奈良と鎌倉は、古都つながりでしょうか(^o^)。

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