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森と林業の本

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2015/03/24

樹木を知らない造園家・論

そろそろ各地でサクラ(ソメイヨシノ)の開花宣言が出始めたが、こんな記事を見つけた。
 
 
毎日新聞 3月23日  桜・開花したけれど……東京の名所ピンチ
 
 
JR中央線・国立駅前から延びるサクラ並木が有名な国立市。それと交差する「さくら通り」は、約50年前にソメイヨシノ約180本が植えられ、春は花のトンネルが目を楽しませる。だが11年、腐った木が倒れて車を直撃する事故が発生。歩道も盛り上がった根によるでこぼこが目立ち、市は道路改修に合わせて16年度までに並木の半数を、残りは10年以内にすべて植え替える計画を立てた。
 
これに市民の一部から「歴史的な景観が失われる」と反発の声が上がった。市は伐採を倒木などの危険がある34本にとどめる計画に改めたが、今年1月にはサクラ4本を切ろうとした市職員らに約20人が抗議し、作業が中断した
 
一方、沿道の高齢者からは「歩く時に危ない」との声もあり、市は今月に入って、今季の花見シーズン後に伐採を再開する方針を決めた。だが、木の延命策などについてさらに話し合いを求める住民側との溝は埋まっていない。
 
 
記事はまだまだ続くが、私が引っかかったのは、この太字箇所である。つまり、サクラの伐採には反対がつきものということ。「サクラ1本、首一つ」と言われる通りだ。
 
このケースの詳しい事情は知らないが、腐って枯れ掛けたサクラも伐るなと言うのはどうしたものか。根が伸びたら舗装も盛り上がるだろうし。反対する市民は、実はサクラのことも樹木のことも、さして興味なく、普段見ている「景観」が変えられることを嫌がっているだけではないか。 
そういえば、私は昨年のYahoo!ニュースの記事の冒頭に同じことを書いた。
 
 
 
 
 
実は、樹木のことを知らないのは、市民だけではない
 
そもそも論になるが、ソメイヨシノを街路樹にするのは問題が多いのだ。寿命もさほど長くないし、成長は早いし。そして、根の広がりを十分に確保していないことも問題だろう。
にもかかわらず、ソメイヨシノばかり植えてきた行政の担当者、助言すべき造園関係者ともに責任はあるだろう。
 
 
先日造園関係者に聞いたのだが、「造園家は、樹木のことも土のことも知らない」そうだ。
庭師がエラソウな表情で、依頼主に話しかけにくくしているのは、樹木のことを聞かれたら困るから。
「最近、木に元気がないのはなぜ」と聞かれても、「水のやりすぎ」「水が足りない」「肥料が足りない」ぐらいしか応えない。応えられないのである。
 
加えて、土のこともまったく知らない。庭でも公園でも街路樹でも、土に気を配ることはない。仕様書どおりに真砂や赤玉土と堆肥をテキトーに混ぜるだけ。だから植えてから何年経っても生長しない樹木だってある。
 
……以上は聞いた話で、本当かどうか私は確認のしようがないのだが(~_~;)、たしかに造園家の誰もが樹木に詳しいようには思えない。
我が家に出入りする庭師は、樹木の生長に無頓着に剪定してしまいげっそりした。
また、道路際の緑地にマツを植えておきながら、その下に草花を植えている現場もあって、苦情を言ったことがある。貧栄養土を好むマツの下に肥料たっぷりなんだからマツは枯れてしまう。……実際、後に枯れてしまった。
 
そもそも庭が好き、草木が好きだから造園の道を選んだ人より、単に勤めた職場が造園関係だっただけ、というケースが多いようだ。
 
樹木医も増えているし、本当に草木が好きで生理や生態に詳しい人もかなりいるはずだが、適正配置ができていないようだねえ。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

農作物のうち果樹や茶は樹木です。
農作物となると栽培技術、栽培技法として研究や実証、そして現場での実践がなされています。
元々の土質や排水、土壌改良、基盤整備、剪定作業などといった人為的なモノと気象や地形、方角や周辺環境などを踏まえた栽培技術が地域や集落単位、親子、親せき友人関係などで伝承、昇華されています。
街路樹や庭木などは収入所得にはあまり関係がないので、一部の特別な場合を除いて真剣な情報伝達や情報収集、試行錯誤が行われないのかもしれませんね。わが町の茶の生産現場では、伝統もありますが、やはり生活がかかっていますので真剣です。

農家は、農作物について当然詳しいでしょう。林家もスギやヒノキに関しては詳しいですよ。でも、ほかの木、とくに雑木はよく知らない。

そして造園家は、枯れたら植え替えるのが仕事なんですね(~_~;)。苗を植えて育てることはあまりしないし、生長しなくてもいい(しない方が剪定も楽?)からかもしれません。

この件の反対運動には「知ってる」造園業者の方がついているようですが。
伐ることが良い悪いの感情論ではなく、何に価値を見出してどう管理するか?を議論してもらいたいですね。

ほお。市も樹勢は診断はしたそうですが。

まあ、サクラだと議論もなぜかテンション上がるみたいです(~_~;)。

診断って樹木医の立場上すごく難しいと思います。
要は責任取れるの?ってことです。「倒木の危険があります」というのはたやすく、「大丈夫」っていうのは思ってもなかなか言えないものです。

なかなか政治的ですね(~_~;)。
 
でも、やはり伐採に反対運動が出るのはサクラならではでしょうか。スギ並木を伐ると言ったらどうなるか。賛成の歓声が上がるかもしれない(>_<)。

以前何かの本で、弘前の公園では、桜はバラ科なのでリンゴと同じ様に手入れ(剪定等をして)をして、「染井吉野」も寿命を延ばしてると読んだ記憶があります。
桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿という中で、同じバラ科で不思議に思ったことがあります。

同じ科だという.だけで、サクラをリンゴと同じ手入れをするとは乱暴ですね。全然違った性質を持つこともあるだろうに。この場合はたまたまよかっただけでは。。。

いっそサクラとバラを同じように扱うとか。

青森の弘前城公園では毎年冬に桜の剪定をしています。
http://www.hirosakipark.jp/sakura/2014/03/4077.html

弘前城公園での桜の剪定は、明治維新後に困窮した士族に配布された林檎の木についての士族たちの生存を賭けた試行錯誤の結果としての剪定ノウハウの上に成り立っています、桜に林檎の剪定ノウハウを取り入れた過程、その前の困窮士族の苦闘、そもそも弘前城公園に桜がなぜ植えられたのか、などを『サクラを救え―「ソメイヨシノ寿命60年説」に挑む男たち』(2001年、平塚晶人、文藝春秋)が描いています。

ほう、本になっていましたか。よほどの成功例なんですね。
 
困窮士族のリンゴづくりの苦労は、私も何かで読みました。そういえば日本最古のリンゴの木を見に行ったこともありますよ。

造園業者が学習するのは、剪定の方法論だけで、樹木の栄養・土壌環境については、全く知りません。ある病院の芝生に業者が樹木の苗を植えましたが、1年で半数が枯れました。理由は簡単で、芝生の草が樹木の成長を妨げる物質を出しているからです。

興味深いのは、樹木の事を知らないのは、造園業者だけではありません。大学の農林関係の教授サマ達も同様です。樹木の生育には、地面の温度が大きく影響するのですが、それを研究した論文が皆無です。(笑)

国立の話に戻りますが、住民が怒っているのは、適切な診断無しに、”造園業者”がテキトーに”診断”して、健康な樹木までを伐採しようとしたからです。ちなみに、診断した造園業者が伐採を請け負う事になっているので、”何でもかんでも伐採”すれば儲かる訳です。それに住民は怒っているのです。

ちなみに、国立の住民は、自治意識が非常に強く、数年前には10階(だったかな?)の建築中マンションを裁判所に訴え、7階くらいに減築(建てたものを壊して減らす)させた事がありました。

ちなみに、多くの国立市民にとって、根っこは邪魔ではありません。(あって当たり前のもの)国立大通りの桜には、根っこが地面に出ても良い様に、広い地面が確保されています。

ニュースなどで、”桜が邪魔”という場面は、道が狭い所です。実は、国立の市街地は、国道20号線に隣接しているので、時々、迂回車が細い道を通ります。市民にとっては、邪魔な車なので、桜が”通せんぼ”してくれる事を願っています。

それを”邪魔だ”というのは、一部の国立市内の業者のクルマです。それらの主張を市長が鵜呑みにしたのでしょう。

国立の市長なら、住民の声に耳を傾けて当然の筈なのですが、どうやら今回の市長は”田舎のおっさん”タイプで、”怒鳴れば人は言う事を聞く”と思っている人です。

極めて異例なのは、桜の伐採が進まなくなると、市長が伐採業者と共に現れて、住民を激しく叱責した事です。(いつの時代の市長サマだよ(笑)) これが問題を大きくした原因です。

本来、首長は住民の意志の代表である筈が、”オレが支配者”と勘違いしたジイイが起こした騒動です。それに尽きます。

これは私見ですが、恐らく、市長は造園業者からリベートを受け取っていたと推察されます。(田舎では当たり前ですが、国立でやると見事に看破されるのです)

次の市長選では、必ず落選するので、この様な事は起きないでしょう。(笑)

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