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2015/03/13

花粉症対策には、苗より薬の開発を

林野庁が、花粉の少ないスギ苗の普及に「本腰」を入れるそうだ。

 
 
新年度予算案では、従来のスギを切って、新しい苗に植え替える場合に支給する補助金を盛り込んだ。伐採や除去、植栽などの経費に対して国と都道府県が合わせて約七割を負担する。
 
 
花粉症対策の苗は全体の約1割とあるが、正確には、2013年度に供給されたスギ苗は1581万本で、そのうち少花粉苗は201万本。全体の12,7%である。これを2年後には1000万本供給体制にするというのだが……。
 
少花粉苗とは、花粉の量が1%未満まで下げた品種のことで、なんだか「草食性男子」ならぬ草食性スギ!(……ちょっとオカシイか。)のことを指すらしいが、挿し木で増やすにしろ、そんなに簡単ではあるまい。穂を採れる母木は限られているから、無理な大量生産をしても、苗として役に立つかどうか怪しい。
 
それに品種が開発されて20年ほどしか経たないから、生長力や成長後の材質だって未だ確定していない。通常の苗は、樹齢80年以上の木から優良木を選んで、種子なり穂なりを採取する。20年未満の母木からつくった苗では、林業家だって導入に不安なのは仕方あるまい。
 
とはいえ、補助金目当ての植林も増えそう。今植えた苗が育った先を考えるより、目先の補助金を求める人が多いのが現状だ。
 ゛
 
花粉症の季節には、林野庁にクレーム電話が殺到すると聞くが、どんな返答をしているのだろう。「少花粉苗を植えていますから」と言っているのだろうか。
本音は「今から植え替えても、全部のスギが入れ代わるまで数百年はかかるので、気長にお待ちください」だと思うが(笑)。 
 
それに花粉症はスギだけでなく、ヒノキの花粉症も増えているわけだし、シラカバだススキだブタクサだと対象花粉の種類は増える一方。全部の花粉を抑えるには、1000年かけても無理だろう。そもそも実行不可能だけど。
 
 
それにしても、花粉症対策と名がつけば、どれほどの金を注ぎ込むのか。
 
 
基本は人間(プラス猿やら犬やら猫やら……)の体質の問題があるのだから、そんな体質を改善する、あるいは花粉症を一発で抑え込む薬を開発する方がまだ可能性がある。
 
ならば、林野庁が抗花粉症薬の研究に取り組んではどうだろう。スギのエキスから花粉の免疫を作る成分を抽出するとか。スギアロマで花粉症を抑えこむとか。自前で研究できなければ、研究機関を応援すればよい。
そんな抗アレルギー薬の製造のために、材料のスギを栽培する時代だって来るかもしれない。そうしたら新たな林業ビジネスになる。木材を売るより効率的で利益も高そうだ。
 
しかも林業に対するイメージアップになる。よし、林野庁予算を製薬会社に注ぎ込め!
 
……不可能だろうか。不可能だろうな(笑)。 
 
 
 

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コメント

この薬(というか、療法)は、現実的ではないですね。数年間続けて効果も確実じゃない……。しかもスギ花粉だけ。

上の「き」さんがアドレス貼ってる薬は、あなたが
>スギのエキスから花粉の免疫を作る成分を抽出するとか。
と書いているもの、そのものですよ。
自分で書いておきながら否定するんですか?

舌下免疫療法のことは知ったうえで書いていますよ。
でも、上記に記した通り、数年間かかったり、それでも全部に効くわけではないなんて、現実的ではないというのです。
イッパツで効くような薬か療法を作ったらよいのです。

既に、林業のサイドビジネスになっているので、漢方のように長く利用して頂ければ、と応援したい気持ちもあって リンクを貼りました。

今のところは、車の利用、大陸から飛来してくるものなどをとめるか、それらと花粉が合成されたものを「異物」と感じない身体をつくるか、アスファルト舗装の少ない地域で暮らすかしないと。

原因をいくつか調べると、スギだけのせいにするな! と 吠える方がおられても良さそうなものなのに、あまり森林サイドから その話が出てこないのが、不思議なくらいです。

大坂で花粉症がひどくて、吉野に来たら治った、という人がいました(^o^)。スギの本場に来たら花粉症が治るよ、と宣伝できないか。
 
実際、スギが少ない都会ほど花粉症が多いことを医学的に説明できていませんね。
ディーゼルの粉塵がいけないとか、舗装されているので花粉が常に舞っている(山村だと地面に吸収されやすい?)という説はありますが、十分な説明になっていません。

本当は、もっと反論すべきですね。……あ、テレビ局が反論側になってくれという依頼があったのだけど、断ったのだった(>_<)。
だってほかの林政も一緒くたにして反論側に回れというんだもの。

そうそう、田中さんが、やらんで 誰がやる?!
期待しちゃいます( ̄ー ̄)ニヤリ

ほんとに、山から降りたら花粉症になる人もいますし、山の知合いでは あまり花粉症だという人の話聞かないし、珍しくいた!と思ったら、高速道路が近くに通っていて、あれが出来てから花粉症が出たって言ってたりするし。

アレルギー症状は「異物」を吐き出す身体の反応です。
Cryptomeria japonica と「日本」の名を背負った日本人が日本列島に誕生する以前からある木の花粉が「異物」なんて、おかしいもの。他に原因があるに決まってますよ。
わからないなら、科学者の力不足です。
(と、おそるおそる言い切ってみました。)

だから、断ったんだって(~_~;)。

しかし、花粉症患者は理性を失っておりますから、スギは全部切り倒せ! 的な意見が飛び交っております(国会にもいるなあ)。
スギをなくしたらヒノキが、ヒノキもなくしたらコナラとかサクラとか、そのうちとうとうイネやムギの花粉症が登場するんじゃないか。
その時こそ、「全部切り倒せ」と叫んでほしい。

そうそう、媚を売らないで、脅してみればいいんです(ほどほどにだけど)
平和ボケという言葉がありますが、後から批判するのは簡単なことで、もしも、植林をしていなかったら、もしも、ダムをつくらなかったら、もしも、石油(ガス)が手に入らなかったら、入らなくなったら、もしも、林道を作らなかったら、もしもオオカミがいたら、もしも、木を伐る人がいなくなったら、もしも、木材が輸入できなくなったら(ん!これは大丈夫なほどに育ててもらっている事に感謝)と想像させる事って大切だと思うのです。花粉が少ない杉を植えても、杉を減らしても根本解決にはならない事もね。
政治家は「国民の声」に動かされ、それに省庁も乗らざるを得ない。中途半端に素人目に、つかみのいい報道ではない森林専門のジャーナリストからの発信、ますます期待しています。日本の木が手に入らなかった頃の価値観のまんま、林業も建築もすすんできているのを、変えないと。育ってきているのにね。

スギ花粉症を抑えるためスギを伐る……これは目先で動く対症療法の一つにスギません。
都知事や首相が花粉症だから?花粉症対策に莫大な税金を投じるなんて、オカシイ世の中です。

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