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2015/04/21

書評『日本の土』

『日本の土』 地質学が明かす黒土と縄文文化 山野井徹著  築地書館

 
Img002 サイドバーに掲載
 
ようやく本書を読み終えた。
 
実は、この本には妙な縁?がある。
今年2月だったか、「土壌ジャーナリスト・デビュー!」を目指して(^o^)、東京に取材に行った際に寄ったのが、本書の版元。
そして、いきなり目に飛び込んだのが本書なのだ。
 
ただし、この時期に発行されていたわけではない。本書の発行時期は、奥付によると2015年2月27日である。つまり、直前だった。この時に目にしたのは、文字通りの「見本」である。これから印刷が終わって書店に配本される前だったのだ。
 
土の取材でああだこうだと悩んでいる最中に、偶然タイトルが「日本の土」が目の前にあるのだよ。因縁を感じざるを得ない(笑)。
本来ならその場で買い求めたかったのだが、見本だから仕方がない。そのまま諦めて終わったのだが、その後無事に「土壌記事」を書き上げた。
 
そのことで、逆に本書の購入を逃してしまった。
 
ところが、つい最近、広告だったか書評だったかで目にして、おお土壌ジャーナリストは一度の記事では終わらないのだ、やっぱり買って読まねば、と求めたのである。
そして、昨夜読み上げたのである。
 
 
ああ、本書を評する前に個人的事情を(~_~;)。
 
肝心の内容だが、タイトルだけ見れば「日本の土」の総論ぽいが、実はサブタイトルにある黒土(クロボク土)がテーマなのであった。
 
ちなみに私自身は、クロボク土は何かとよく聞かされてきた言葉なのだが、あまり実感として目にしていない。本書の図によると、クロボク土の分布は関東~東北、北海道、そして九州で、近畿圏は少ないらしい。それが原因かもしれない。
 
著者は、本来は地質学者なのだが、以前より気になっていたクロボク土について追求したらしい。実際の内容は、さすがに地質学的な説明も多くて、結構難しくもあるのだが、やはり白眉は、第8章「クロボク土の正体」と第9章「クロボク土と縄文文化」だろう。
 
これまで土の教科書には、必ず書かれてきた「クロボク土は火山灰」という定説をひっくり返すのである。
 
ここで正体を明かしてしまえば、縄文時代に縄文人が野焼きを続けた(約1万年!)結果なのだった。まさに人がつくった土だったというのだ。そして縄文文化のあり方にまで言及していくのである。
 
そこに至るまでの推理は、なかなかスリリングでもある。特別土に興味を持たなくても、この古代文化のあり方、そして自然と人の関わり方を考える手立てとしても、本書を一読することをお勧めする。
 
 
なお、個人的にショックだったこと。
 
土壌とは農学の言葉で、植物の根の入る範囲の土を指すらしい。つまり植物(栽培)から示した呼称だった。地質学面からすると、表土なのだそうだ。
 
うむ。名のるべきは土壌ジャーナリストか、表土ジャーナリストか。私は農学部出身だから、土壌でよいかなあ。
 

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コメント

ご無沙汰しております。ご高評いただき、ありがとうございます。おかげさまですぐに増刷でき、3刷準備中です。

おおお、版元の社長のご登場です。これは失礼しました。

3刷ですか。羨ましい。私の本もそうあってほしいものです(^o^)。

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