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森と林業の本

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2015/04/10

山高ければ谷は……コラボの可能性

人生、谷あり山あり、浩子あり……

 
あ、これは谷山浩子に対する私の思い入れ標語だった(^o^)。
 
人生、谷あり林あり、業(カルマ)あり……
 
これは、吉野の谷林業の社長交代に寄せた私の言葉(⌒ー⌒)。
 
 
今回紹介したいのは、
 
山高ければ、谷深し
 
これに「人生」はついておりませんが、先日の緑地雑草科学研究会総会で行われた講演で、講師の稲垣栄洋・静岡大学教授が講演のしょっぱなに使った言葉。
講演そのものは、
雑草科学の視点から害虫問題を考える-斑点米カメムシ防除の事例をもとに-
 
という、極めて専門的な、それもニッチなテーマだったのだが、上記の言葉は、山とは研究領域を指しており、各専門分野の研究が高度になればなるほど、その合間の学際的分野(谷)が深くなってしまい、気づかないことがいっぱい、ということを説明している。
 
 
講演は、特殊な事例を取り上げているように見えて、なかなか奥深かったのである。
 
 
稲垣教授は、本来は雑草学が専門だが、静岡という地域で水田のカメムシ防除の研究を課せられた。カメムシの中でも、アカスジカスミカメという種類が、近年激増しているからだ。これが稲に着くと、米に食痕の斑点が付いて売り物にならなくなる。
 
その研究の過程で、害虫(昆虫)の専門家と雑草の専門家のコラボが行われた。これまで水田だけ、畑だけ、果樹園だけ、と分断して行われていた害虫防御を、雑草と昆虫の両側から見ていくプロジェクトだったのである。
そして、実は全体を見回すことで防除に別の視点と方策が浮かび上がってきたのだ。
 
耕作放棄地の中の2種類の雑草と、法面などの土留めの目的で蒔かれた牧草(イタリアンライグラス)が、これまで目立たなかった虫(アカスジカスミカメ)を大発生させて害虫に仕立ててしまうメカニズムがわかってきて、同時に防除のために行うべき草刈り方法……などが指摘される。
 
研究としては地道な積み重ねながら、なかなかスリリングで、推理ゲームの謎解きのよう。
 
 
私は、この生態学的な論理は、森林政策や獣害対策にも通じるものがあると感じた。
 
たとえばイタリアンライグラスは、林道の法面にも多用されている。それがイノシシやシカの餌となって生息数の激増につながり獣害を発生させる……というメカニズムに通じているのだ。
 
 
森林生態や林業政策にも、この手のコラボが問題を浮かび上がらせ、解決策を生み出す可能性を秘めているのではないか。
 
もちろん、最近はようやく林業と建築家のコラボ程度は行われるようになったが、谷はもっと深いのかもしれない。そこで、もっと離れた異分野をつなぐと面白い。意外な解決法が見出せるのではないか。
 
たとえば数学者が森林景観を理論づけたり、そこから下刈りや間伐技術を導き出せるかもしれない。美しい数字の配列は、実は立木の配置や幹直径と樹間に相関を見つける可能性がある。それが森林生態系のもっとも適切な樹種の分布になる……とか。
 
あるいは心理学者を林業施策の立案に参加させることも必要ではないか。
今の政策は、補助金という金をぶら下げて誘導しようというものばかりだが、それが行き詰まりを見せているのは林業家の心理を読み取っていないからではないか。。。
 
ほかにも、消費者心理に長けた百貨店のバイヤーとのコラボ。
宅配便の在庫管理担当者を山の作業現場に連れて行く。
農業者に森の中の林床で農作物をつくる研究をしてもらう。
いろいろ考えられるぞ。
 
 
山高ければ、問題が根深ければ、その谷も広くて深い。(やっぱり谷、山、ひろ……か。。) 
林業政策は、各課題の谷間にあり。学際研究ならぬ異業種をつなぎ、谷を埋めるシステムづくりを考えてみてはどうだろうか。

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