昨年から始まった日本森林学会が選定する「林業遺産」。
次の4つ。
天然林施業実践の森「東京大学北海道演習林」
飫肥林業を代表する弁甲材生産の歴史
吉野林業
越前オウレンの栽培技術
覚えているだろうか。昨年の5月には本ブログでも最初に選ばれた林業遺産10件を紹介したが、その内容に対して、しょぼい!と腐した。いや、正確には「地味だ」だけど。
それに対して、今年は4件ではあるが、ある程度知られたところが入ったという印象だ。吉野林業に飫肥林業(弁甲材に絞っているが)、東大の北海道演習林はどろ亀さんこと高橋延清氏が手がけた森ということで有名だろう。
福井のオウレン栽培は、ちょっと林業の本筋から外れるようではあるが、林床利用の栽培では歴史があり、もっとも重要なものだと思う。
昨年の選定されたものを腐した人間としては、ようやく納得の遺産として目に止まるようになったことは喜ばしい。
この4つを眺めて感じるのは、いずれの林業地も、複層・多様性を重んじている森が入っていること。
元から天然林施業を行った東大演習林はもちろん、飫肥林業も疎植ゆえに誕生した針広混交林(三ツ岩林木遺伝子保存林など)だし、吉野林業は逆に密植の末にたどりついた低層に広葉樹が広がる混交林。そして林床のオウレン栽培は、自然林の下で薬草を栽培する見事なアグロフォレストリーである。
やはり林業の行き着くところは、効率優先の一斉林ではなく、多様な森ではないか。
ちなみに吉野林業の認定対象は、
吉野林業地としての林業景観
吉野林業の技術体系
吉野林業の中心地としての林業記念地「歴史の証人―下多古の森」
川上村林業資料館道具類展示品
吉野林業関連の近代資料群(森庄一郎著・土倉庄三郎監修『吉野林業全書』明治31年初版、北村又左衞門著・佐藤弥太郎教授監修『吉野林業概要』大正3年初版・昭和29年改訂、北村太一謹写・石橋保男発行『吉野山林 写真帳』、その他写真)
なかなか幅広い。人工植林として約400年たつ「歴史の証人」や、『吉野林業全書』が入っている。また川上村の林業資料館の展示品も入っているが、ここ、昨年放火にあって閉館中なんだけどね(^^;)……資料は燃えていませんから。
今後は、土倉庄三郎関係の吉野林業の登録に期待しよう。
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