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森と林業の本

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2015/05/27

テレビ番組に協力すること

福島県いわき市の株式会社磐城高箸の高橋正行さんが、今日の朝の番組に出ると聞いた。東日本大震災の「あの日わたしは 証言記録」という5分間の番組だったが、あらら、国会中継のために延期になったようだ。残念でした(-_-)。

 
 
実は、このところ私も某局のテレビ番組づくりに多少関わっていた。林業で番組を作りたいというのである。すでに取材も始まっていた。が、いよいよ、というところで中止になってしまう(延期ではなく、中止)。 企画が最終的に通らなかったのだ。だから詳細は秘すが、それを通して感じたことを何点か。
 
 
林業で番組を作りたいと言われれば、私も喜んで協力しようと思う。そしてあちらの考えている企画や取材先に関して意見も述べたし、新情報も提供した。
 
しかし、ね。これは私にとって仕事にならないのだよ。
 
たとえば雑誌の記事にするための企画を私が提案したとする。その中で「これいいね」と編集者が感じた企画があれば、当然それは私に振られ、私が取材や執筆を行うのが通常だ。たまに監修とか、責任編集といった役割になることもあるが。これは、明らかに仕事だ。ギャランティも発生する。
 
しかし、テレビの場合は、必ずしもそうならない。
企画を出したり意見したり情報提供したりして、それが「いいね!」となっても、私が取材したり、ましてやカメラを回すことはない。だからギャランティも発生しないのである。情報提供料という項目はないらしい。仮に画面に映っても、それで出演料をもらえることも滅多にない。被取材者は、善意で取材を受けるのであり、仕事ではないのだ。
かろうじて出演というケースになればギャラは発生するが、それは専門家のコメンテーターとしてだ。レポーターとかにはならない。
 
それじゃあ、私は情報ぶったくられるだけではないか(@_@)。
 
そのことがわかった時点で、私は熱が入らなくなる。時間を割いて、仮に私のとっときのネタを提供してもメリットはないのだ。だから肝部分は隠すことになる。
……それは、このブログと同じだ(笑)。無料で書き散らしているが、要を書いてはいないのだよ。(裏も取らない。間違っていても責任取らない。勝手に拙ブログの情報を引用しては恥かくかもよ。)
 
もちろん、一般に被取材者に何らかの金・物品で御礼をすることは稀だ。しかし話を聞けばその人の名を出すなりして、カギカッコ内でコメントを書く。私も新聞や雑誌の取材を受ける場合なら、そうした「売名」という恩恵がある。残念ながら、テレビではそれもほぼない。
 
 
もう一つ。これは林業番組を、という要望に関してだが。
 
狙いは、やはり新しさだ。斜陽と思われていた林業だが、新しい動きが始まり、ビジネスとしても注目できる、若者の参入も増えている……という切り口でやりたかったらしい。
 
だが、ビジネスとして成り立っているという枠をつけて考えると、機械化とか大規模化の流れを紹介することになる。なるほど、なかには利益を出して事業を拡大している素材生産業者もいるだろう。古臭い林業界とは一線を画して、現代的な映像になるかもしれない。
 
だが、それは一過性ではないか? そんな事業がいつもまで継続できるのか。
とくに大型機械の導入は一台でも数千万円もかかるわけで、まともに減価償却考えたら割に合わなくなる。結局、補助金を当てにしているわけだ。また森林資源も、大規模化すればするほど、枯渇が早まる。すでにバイオマス発電などで危惧されていることだ。
 
……実は、そうした動きは新しくもない。そもそも拙著『森林異変』を取材執筆したのは5年前だし、その時すでにその路線の危険性を指摘したはずだ。(出版は4年前)
 
だから機械化・大規模化路線は時代遅れですよ、と私は指摘するわけである。
 
むしろ新たな動きとしては、木材の質を高めて価格を引き上げるだけでなく、無駄なく使い、さらに木材以外にも収益源を生み出して、総体として利益を確保する方向である。森づくりも行って持続的な林業を構築しようというものだ。
 
 
とはいえ、何も何十年もかけて銘木生産しているところを紹介しろというのではない。
むしろ並材をエンドユーザーと結んで高く売る方法を模索するとか、市場ニーズに併せた特殊な寸法に造材するとか。馬搬やアーボリカルチャーのような伐り方、搬出の仕方で差別化を図ることもありだろう。
さらに価値が二束三文の曲がった木とか黒芯の木に付加価値を付けるか、高く売るかという工夫をすることも含んでいる。
 
Photo  
こんな黒芯材は、どうすればよいか。
 
※あえて黒い芯部分を使って割り箸をつくるという手もあるのではないか? ちなみに上記の写真は、磐城高箸の高橋さんより提供されたもの。この木からつくった割り箸を手にして、テレビに映ってほしい(^o^)。
 
 
 
しかし機械化した林業家のように、どれだけ木材生産して、どれだけ利益を出して……というような目に見える成果を見せづらい。永い年月の先に答えが出るわけで、今の時点で経営的には苦戦している事業体も少なくない。
 
それでは番組にならない……。さて、どうする。
 
どうやら林業を取り上げた番組をつくることは、私にとって仕事にならないし、林業にとっても正確な姿を紹介することは難しいのではないか。そんな気がしたのであった。
 
 

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コメント

どうも世間はあまり林業には関心がないようですね。
無理矢理番組を制作しても,関心を高めるような話題ばかりでは一過性しかない訳ですから。
もっと腰を据えて取材してほしいものですが、そういうとおそらくそんな時間と費用がないと来るでしょうね。
日本の第一次産業はこれからは輸出産業に脱皮して欲しいものです。
前期高齢者の夢です(笑ーーー、いや涙か?)

前期高齢者の夢は、第一次産業をマスコミに売り込むことですか(笑)。

林業には関心のある人はいるんです。必要なのは、マスコミ受け……というより一般受けする切り口を提供することでしょうね。真面目にコツコツ描いてもウケない。ここが面白い! と伝える方法を考えないと。それを前期高齢者にやってほしい(⌒ー⌒)。。。

農林水産業に本格的に取組み,輸出産業にすることが夢ですね。マスコミに受けるとか受けないとかは関係ないですね。
これからの縮小社会では日本国内で必要なエネルギーと食料を出来る限り自給できる循環型の社会に作り上げてゆく努力が必要です。
そのためには若者が今のうちに前期及び後期高齢者から日本の伝統や文化を引き継げるようにするシステムづくりと同時に、日本の農林産物を輸出する仕組みづくりが大切ですね。

輸出するかどうかはともかく、農林水産業で普通に食えるようにならないと、国として健全ではないですね。経済的にも、社会的にも文化的にも。
 

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