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2015/05/22

「地形から読み解く日本史」って?

たまたま見つけた別冊宝島2326。

 
竹村公太郎の「地形から読み解く」日本史  宝島社
 
Photo
 
簡単に説明すれば、地形とか天然資源の面から日本史を分析したムックである。
竹村氏は、建設省の官僚で、国交省退官後は文筆業に就いている。
 
 
内容をいくつか紹介すると、古代の奈良盆地には奈良湖と呼ぶべき巨大な湖があった、という点から神武東征伝説や、飛鳥時代の藤原京や平城京の成立から政争まで解き明かしたり、大坂冬の陣における真田丸(真田幸村が奮戦した砦)の狙いを分析したり。
さらに江戸の町の誕生、江戸時代の流通システム……と進み、明治時代までを語っている。
また一部はピラミッドなど海外のネタもあり。
 
 
一つ一つが従来にない解釈も多く登場するから、楽しめるだろう。そこそこ歴史好きで通説に通じている人なら、とくに目を引くはずだ。
 
ただ、ちょっと強引すぎる。古代に奈良湖があったことは私も知っているが、それは飛鳥時代まで引っ張るのかというと???だ。たしか有史前の話ではないか。それに、それぞれの解釈を一説としては面白いが、断定されると疑問も出てくる。 ほかにも、面白いけど無理のある主張が目立つ。書き手におくゆかしさを求めたい。。。なお書き手は編集部発のライター4人である。竹村氏が直接執筆したわけではないだろう。
 (あとがきは、竹村氏を持ち上げすぎ。「炯眼の士」ぐらいはいいが「神の目を持つ」なんて書かれるとねえ。それだけで引いてしまう)
 
 
地形とか資源(森林、水、地下資源など)から歴史を切り取る視点は、それなりに斬新だ……というか、拙著『森と日本人の1500年は、まさにそのつもりで執筆したのであった。
 
そう思って読むと、「森林資源を求め遷都した桓武天皇」の項目に、平城京の造営に使われた建材の量や薪炭の消費量が記されているが、これは拙著に掲載したものと同じだ。私は、たまたま発見した新開毅氏の論文から引用したのだが。
遷都の理由に森林資源枯渇の可能性があることも、拙著に幾度も記している。
 
さらに江戸期に森林資源が全国的に枯渇寸前だったことも。
 
そう思って参考文献の欄を見ると、ちゃんと森と日本人の1500年が入っていたよ(;´д`)。
 

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