森林へ外部から資金を導入する方法だが、こんな例もある。
東京の林業界では有名になった株式会社東京チェンソーズが、「
東京美林倶楽部 」というプロジェクトを立ち上げたと聞いた。
これは1口5万円を投資して会員になり、3本のスギやヒノキの苗木を購入する。それを30年かけて植え育て(その作業は東京チェンソーズが担当)、そのうち2本を間伐して家具や玩具にして出資者に還元する。残りの1本は残して美林をつくろう、という内容だ。また会員になると、さまざまなイベントに参加して、森と親しむ。
詳しくは彼らの
「東京美林倶楽部」サイト を見ていただきたいが、昨秋スタートして第1期100口はすぐに完売、現在は第2期を募集しているらしい。
最初に聞いて、これはウマイ仕組みだなあ、感じた。100口が売れた(会員になった)ということは、これで500万円の資金が集まったということだ。今後、植林や育林の手間と経費はいるとはいうものの、最初に大きな資金を手に入れたことになる。それは仕事と雇用を生み出す。
やはり巨大な個人資産が溜まっている東京にあるのが強みかもしれない。
もちろん、30年先にちゃんと実行できるのかという担保の面で見ると不安はある。火事や天災、病虫害、獣害などで育たなかった場合もありえる。それでも、少なくても2本分は、ちゃんと育てなくてはならない。何よりも、経営が持続的でなければならない。30年後、会社がなくなっていたらシャレにならない。
もし還元できなかったら、林野庁の「緑のオーナー制度」と同じになる。
緑のオーナー制度は、材価が落ちているのに単に伐採して市場に売るだけだったから元本以下しか還元できず、裁判沙汰になっている。
ただ、現金で返すわけではないことと、30年の永きに渡ること、そして1口5万円の小口であることから、還元が少なすぎるという不満は出にくいのではないか。(出資して契約したことを忘れてしまう人も出るかもしれない。会費として払った認識ではないか。)
それに素材を市場に売るのではなく、商品にするのだから、受け取れれば満足度は高いだろう。
森林を維持するには、どうしても先払いの資金がかかる。いわば運転資金のようなものだ。ただし、期間は数十年もあるから、利息を考えると割に合わない。
だから現状では、行政の補助金に頼りがちになる。しかし、これこそ林業をビジネスではなくす元凶ではないか。何より税金を「返さないでもよい補助金」として私有財産に投入するのは倫理的にどうかと思う。
もちろん「投資」だから、事業が失敗したら返さない(その点が融資と違う)ことはありえるが、返済を金銭でなく別の「満足」という手もあるのだろう。
ちょっとニッチな手法で、おそらく大きな物件を動かせないだろうが、森林投資を日常化させる呼び水にはなるのではないか。
前回は、長期資産としての価値を認めさせて投資を呼び込めないか、とアメリカの例で紹介したが、日本では金銭的な見返りを保証するより、このような「満足」で還元する投資方法も考えられるわけだ。
とにかく、あの手この手を尽くすことだ。林業も産業だと自負しているなら、産業の血液とも言える資金の流れを確保しなければならない。
ありがとうございます。
投稿: 青柳孝 | 2015/05/19 22:45