今日の朝日新聞の科学欄で、「アメリカ最初の人類」を取り上げていた。(ここでいうアメリカ人とは、 USAではなく南北アメリカ大陸に住む人類という意味である。)
この記事によると、アメリカにはベーリング海以外にも複数の渡海ルートで人類が新大陸に渡ってきたという研究が進んでいることを記している。
なんとタイムリー! 実は昨夜読み終えた本には、まさにそのことを記されていたのだ。
「
衝撃の古代アマゾン文明」
実松克義著(前立教大学社外学部教授) 講談社
この本には仰天の事実がいくつも記されている。その中では末部に置かれているのだが、アメリカ人はどこから来たのか、という素性である。
一般にはベーリング海峡を渡ってきたモンゴロイドと推測されているが、氷期が終わったのは1万1000年前。それ以前では北アメリカを覆っていた氷床を越えられない。当然、中南米に人類が到達するのはその後になる。
ところが、南米の方にはそれよりはるかに古い遺跡が多い、という事実がある。北米の方が新しいのだ。
しかも南米パタゴニアで見つかった遺跡の中には、3万年以上前のもあるという。ほかにも1万年を越える遺跡や遺骨は多くて、なかにはアフリカ人の特徴を備えたものまである。
そして新聞にも紹介されているのが、ワシントン州で発見された9000年前の遺骨(ケネウィック人)は、DNA解析によるとヨーロッパ系の遺伝子を持っていた。
もしかして、最初のアメリカ人はアフリカから渡ったのかもしれないし、ヨーロッパから渡るルートがあったのかもしれない。
ただ、結果的にアジア系の人類が全土を覆って定着するのだが。。。(そして中世にヨーロッパ人がアメリカ全土を征服するのは、皮肉な結果とも言える。)
ところで、本書の主題である衝撃の事実は、アメリカにおける先史文明の存在だ。マヤよりインカよりチャビンよりオルメカより古い文化がボリビア・アマゾンのモホス平原にあったというのだ。
そして、その時代は1万年以上前だという。……
このような説を紹介するとトンデモなオカルト説かと思われがちだが、すでに数多くの遺跡発掘の成果なのである。南米はもちろん北米やヨーロッパの研究者たちも、次々と参入して調査が進んでいるのだ。すでに多くの論文が出ている。そもそも征服したスペイン人の文献にさえ高度な文化を持つ集落がたくさんあったことが記されているというのだから、一笑に付す代物ではない。
日本には、その情報さえ伝わっていないのかもしれない。
しかもモホス文明は恐るべき成熟度をもっていたらしい。氾濫原につくられた人工の丘・ロマは2万以上あるらしい。それも小さな集落から何ヘクタールもの巨大台地まで。そこは水没しないから森ができ、動植物の宝庫になっている。
加えて数多くの正方形の人造湖と、それを結ぶ直線の道路と運河……など興奮する内容ばかり。
そこで巨大な農場を開発したこと。養魚池があったこと、運河による水運もあったと推測できること……。なんだか途方もない話だ。
しかし、グーグルマップで
モホス平原の衛星写真を見ると、本当に四角い人工的な形をした湖が連なっている。氾濫原に点々とある森がロマだろうか。航空写真でも、直線的な畝が伸びた農場跡が見つかるようだ。(さすがにグーグルではわかりにくいが、直線は見える。)
そして面白いのは、アマゾン各地の表面に分布している土壌テラ・プレタである。一般に熱帯雨林気候の土壌は痩せているが、この土は黒く肥沃だというのだ。どうやら人為的に野焼きして有機物を堆積した人工土壌だということがわかった。それがアマゾン全土の約1割を占めるというのだ。
これって、例の『日本の土』で紹介しているクロボク土と一緒ではないか? 土壌ジャーナリストとして食指が動くではないか(笑)。
ついでに言えば、モホス平原からは1万年前の地層から縄文のある土器も出土している。縄文式といっても日本の縄文人がつくった土器とまったく同じというわけではなかろうが、ほぼ同時期に同形式の土器をつくっていたのである。
そういや日本の古墳は、基本的に土を積み上げた構造(表面に葺き石があった)で、ロマと似ていると言えるかもしれない……。
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