このところ、散歩に出ては棚田を観察している。田植えが済み、水面が美しい季節だ。そして涼やかな水音がする。
水の張られた田んぼには、どこもオタマジャクシやミズスマシが多い。が、私の探しているのは、別の生物だ。
これ。
田植えの終わった水田によく泳いでいる。
カブトエビ。
カブトエビをご存じだろうか。すばしっこくて、形も動きもオタマジャクシに似ているが、完全に節足動物の甲殻類である。ただし、名前から連想するようにカブトガニに似ている。形もカブトガニをエビにしたようだ。甲羅を背負い、ひっくり返すと、エイリアン的な足がぞろぞろと並んでいて、身の部分は少ない。
これも生きている化石と呼ばれて、カブトガニと同じほど古い形質を残す。(ちなみに絶滅を危惧されるカブトガニは有名なのに、身近なカブトエビはなぜ知られていないのだろう。)
ここから三葉虫を連想してもおかしくはない。
すくうと、こんな感じ。
水の中を泳ぐが、実は姿が見られるのは今の時期だけ。夏前には田んぼの水が抜かれて姿を消す。ただしその前に卵を残す。その卵は乾燥に強くて、干からびた泥の中でも何年でも平気で過ごす。そして、再び水が張られると孵化するらしい。
面白いのは、生駒の田んぼでも、ぞろぞろいる水田と、全然見かけない水田があること。
水系が違うと侵入できず歴史的にいない地域があるのか、あるいは水田へ分布するには人が持ち込む必要性があるのか。
そのためか、カブトエビのいない田んぼの農家に聞くと、意外と知らない人が多い。こちらがびっくりする……。別に希少種でもないのだが。逆に「タガメならいるよ」と言われてしまった。タガメの方が希少じゃないかよお。。。
ちなみにカブトエビは除草効果が高いと言われている。雑草や浮草のような小さな植物を食べるし、常に泳ぎ回って泥をかき回すので生えにくくするらしい。
私がもぐりの教師をやっていた頃、(この経歴については追求しないこと。その方が身のためだよ。世の中には知らない方がよいこともあるのだ ̄ー ̄。)、田んぼのカブトエビを観察していて、生徒から「カブトエビ先生」と呼ばれたのだった。。。
今の季節、棚田には空も雲も溶け込む。たまには鳥やUFOも映る。この映った空の下にどれほどの生物がいるのか想像してみるとよい。
コメント