国産バイオマス燃料の目標量を引き揚げ?
林野庁が、バイオマス燃料にする国産材の利用目標量を引き上げる方針を固めた、というニュースが流れている。
それによると、現行の目標は年間600万立方メートル(360万トン)なのだが、これではバイオマス発電所が次々と稼働すると足りない。そこで、輸入燃料として主に木質ペレットやオイルパームのヤシ殻などの使われる量が拡大している。2014年度は、一昨年の2倍の23万トンに達したそうだ。買いつけ量が増えたためか、値段も上がっているという情報もある。
これでは燃料自給率の向上にならないという懸念が政財界から上がって、もっと国産材の燃料生産量を増やさせるため目標量を来夏までに引き上げる、ということらしい。
……疑問満載(笑)。おそらく現行の目標さえ達するのは難しいと思われるのに、目標値だけを上げても増産が行われるものか?
目標を引き上げるのだから、また補助金をばらまくのだろうか。ただ、いくら金を積んでも出せないものは出せない。あまり高値にしたら、建材用の木材を燃料に回すだけだろう。A材B材も燃やした方が儲かるという計算もできる。その方が楽だし。
FITに小規模バイオマス発電(規模2000kw以下)枠が設けられて、 1キロワット40円の高値になったから、その分の増産は行われるかもしれない。しかし、小規模発電所自体がまだあまり普及していない。
ちなみに、こんなニュースを気づいているだろうか。ちゃんと熱利用もする小型のバイオマス発電所も登場している。
こちらは産経新聞7月4日の長野版 。
飯田市のテーマパーク「かぶちゃん村」で、木材チップを加熱して発生したガスを燃料として用いるガス化発電装置を使った小型の木質バイオマス発電所が完成し、稼働を始めた。木質バイオマス発電にガス化発電装置を使用するのは国内では初めて。
発電所は、通信販売などを手掛けるケフィア事業振興会の子会社で、県内で太陽光発電所などを運営する「かぶちゃん電力」(東京都千代田区)が建設。バイオマス発電装置を手掛けるZEエナジー(東京都港区)が設計し、6月2日から運転を始めた。
発電所は、地元の間伐材から作った木材チップを摂氏800~950度の高温で加熱し、発生したガスをエンジン内で燃焼させて発電する仕組み。使用するチップは1日あたり7トンで年間2310トン、従来の水蒸気でタービンを回す方式のものと比べて、チップの使用量を3割ほど減らすことができ、高効率での発電が可能となった。さらに、ガス化の際に生じる排熱は、木材チップの乾燥やパーク内のイチゴ園のビニールハウスで利用する。
発電量は最大出力の360キロワットを維持できれば年間約285万キロワットで、一般家庭792世帯分に相当する電力を賄うことができる。当面、発電した電力はパーク内で消費するが、来年10月からは固定価格買取制度を利用して売電することも計画している。
私は、輸入燃料こそ、建設しすぎたバイオマス発電所の救世主と思っているのだが(笑)。
無茶に木を出して山を荒らすことを思えば、海外で使い道がなくて眠っているヤシガラなどを輸入して何が悪い。あまり自給率にこだわると、ろくなことがない。
そういや、今年の木材自給率(つまり2014年分)の発表が行われていないねえ。何か隠す理由があるのだろうか。
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ご承知と思いますが、銀座ミツバチの田中さんの指導で総理官邸で日本ミツバチを飼育するそうです。(今朝の日経)
最近、「木材と文明」を読みました。中にヨーロッパでは過去に製塩や精錬・製鉄やガラス製造・染色・なめしに木灰やタールを取るのに、市民の使う燃料と争奪戦が何度も起きていることを知りました。
用途で樹種に優劣が出来たり、その時代、時代で有用樹種が替わる。燃料には成長の早いポプラを植え、養豚のための森はブナやカシの実が求められた。
どこが力を持つのか、面白かったです。
投稿: 仁藤 浪 | 2015/07/29 15:46
銀座の田中淳夫さんの活躍は私のところにも伝わってきております(^o^)。
やはり銀座にいると、人脈がスゴいんですね。その発信力は羨ましい限り。
「木材と文明」は名著ですね。ヨーロッパに限らず、森林と木材の歴史を知るには欠かせません。
投稿: 田中淳夫 | 2015/07/29 21:11