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2015/07/09

日本の森林価値はサウジアラビア並

海外の森林への投資事業を行っている人からの情報。

 
資料によると、日本の林業の投資対象としての価値は、4段階の最低ランクだった。これは、そもそも森林がほぼない中東の砂漠国家と並んでいるそうだ。
 
日本は国土の7割近くが森林で、世界に冠たる森林王国……なんて言葉が空々しくなる事実が金融の世界には知られているのだ。
 
考えてみれば、投資対象に考えるとなると、当然ながらリターンの予測が必要なわけだが、日本の林業界では見込めない、というか先行き読めないからだろう。だいたい、「緑のオーナー制度」とか公社・公団造林のような案件~いずれも基本的には森林に投資する事業である~がことごとく破綻している現状がある。
 
つまり、金融業界の目で見れば、日本列島には森林は存在しない(笑)。
 
 
ただ、この情報を教えてくれた人の「意見」としては、人件費が日本以上に高い欧米などで生産される木材が、輸送費を含めても国産材とあまり変わらない価格だということは、国産材の中間コストが相対的に高いということを意味している。
それなら、適切な「産業化」「効率化」を図れば競争力を取り戻せるはず。
 
まったく、そのとおりである。ただ、それができないのも現状として事実。物真似的に大規模化・機械化を進めても、競争力は高まらなかった、というより国産材への需要増加は限定的だった、ということだ。
 
それでも木材自給率が15年で2割前後から3割まで上がったのだから、よくやった、と言えなくもない。 
しかし、そこでは持続的でない木材生産を行い、結果的に森林所有者には還元されなかった。利益をだしたのは素材生産業と木材産業だけ……これは、このモデルでは投資者にリターンをもたらさないということになる。つまり投資対象として売り込めない。
 
 
それでも、と私は予測する。林地の価値がサウジアラビア並に落ちた今だからこそ、投資対象になりえるのではないか。ただ同然の林地に投資して、整備して価値を上げる……というビジネスは可能になる。
 
今後日本でも、ファンドのような大資本が森林を所有もしくは長期賃借し、プロの林業家に経営委託して価値を上げるケースは出てくるだろう。
一方で資産として森林を資産として保有するだけの法人も、増えるだろう。
その隙間を埋めるような「自伐」林業も広がるだろう。
 
林業全体のパラダイムが、大きく動き出すと想像する。
 

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コメント

過去から林地を所有しているだけなら、何もしなければ費用はタダ同然ですから、何もせずに放置するでしょう。売りたくなるような価格であれば売るかもしれませんが、安い価格では決して売ることはありません。林地を所有するだけで、それ相当のコストが発生するならばなんとか買い手が現れるまで林地の価格を下げようとするかもしれませんが、安い固定資産税、下流域に被害を与えても何も責任が及ばない以上、安くしてまで林地を売るようなことはありえません。これは国の基本的な政策の問題でもあります。決して林地はタダ同然ではありません。

これは多分戦後なんでしょうが、本来は山林といえば立木の価値だったものが、土地の価値と錯綜してしまったんでしょう。

とはいえ、山林を処分したがっている人は非常に多くなりました。それこそ「タダでいいから持って行ってくれ」と私も言われたことがある。持っていけないけど。
完全に無料ではさすがに無理ですが、山を持っていることに負担を感じている人は潜在的に相当増えました。

田中先生

いつも真剣に拝見しています。
田中先生の広範な人脈による、森林を様々な立場の方々の価値観を掘り下げて分析評価される情報は、狭視なわたしをいつも考えさせバランスを得ています。そんな中で、今日のブログは経済側からみた視点だと読ませていただきました。・・・が、
どうしても途中から気分が悪くなり、感想を書かねばとなりました。
砂漠化するとは生物が居なくなることと同義であるならば、現在も日本は砂漠国より遥かに豊かな生存権を有しているということでしょうか。田中先生のライフワークもそこにあることは熟知しています。
生きる手段としての経済であるならば、本末転倒の経済優先で生命が脅かされることは全く逆方向の進化となり、決して豊かにもなれず、ごく短期的な物欲を満足するだけでしょう。気分が悪くなったのはこのせいでしたが、緑の山は生命源であるように世界有数の生命資産価値をかろうじて保持している日本が今あることを知っています。

中東のような森のない国と同じレベル、というのは、あくまで投資対象を探す金融関係者の価値基準です。さまざまな視点があることを知ることが重要です。
多様な生物がいることの価値は、また別の視点だし、ほかにも木材の質やら量で計る価値もあるでしょう。森林から得られる有用な遺伝子資源の種類で価値を定めてもよい。

ただ日本の森林に投資価値を認めない金融関係者も、一人の人間としては森が好きな可能性があります。週末は森を散策しているかもしれません。

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