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森と林業の本

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2015/07/10

山崩れ現場にたどりつけ!

兵庫県の丹波市に取材で訪れた。

 
丹波市と言えば、昨年8月に集中豪雨による甚大な水害が発生したところ。川の氾濫に留まらず、山も各所で崩れて森林被害も莫大だ。1年経とうとしている今も復旧工事が行われているという。今年も豪雨に見舞われなければよいが……。
 
というわけで、取材終了後に災害現場を訪ねてみることにした。なんでも、今、復旧工事をしているそうだ。
 
だいたいの山崩れ発生地域は地名で知っている。問題は、ピンポイントで山崩れの現場にたどりつけるか、だ。
 
車を下りて聞き込み。
「災害復旧工事? あそこの道は終わりましたよ。川も終わったし、山は……知らないなあ」
 
あれ、意外と山の現場は地元の人も知らない(~_~;)。
 
そこで山裾を歩く。そして足跡を探す。アスファルトの上に残るかすかな土の靴痕。。。
ニオイを嗅ぐ。きっと山崩れのニオイがするはずだ(ホンマか?)
道端の草を観察する。どこかに人が分け入った痕跡があるはず。
 
ふんふん。ここの草の乱れは、きっと山人が分け入った痕だ。林業人特有の草の踏み方だ(ホンマか?)
 
その痕跡を追って私も分け入る。ちゃんと長靴に履き替えているのだ。
 
長く人が通っていないような草に覆われた杣道に、最近歩いた感触があった。草の上に土がついている。 
畑に出た。ここを越えて、あの土手を登ったに違いない。私には「見える」のだ。
 
ほら、土手の上のブッシュを抜けるとスギ林があった。その間を進む。林床に転がる枝や間伐材の様子から人の通ったルートを読み取る。
 
クンクン。ニオウぞ(しつこいようだが、ホンマか?)
 
険しい急斜面も何のその。用意した軍手を付けたら、どこでも登れるのさ。昨日から降り続いた雨のおかげで泥だらけだがね。
 
泥をえぐった痕を発見。人が登った証拠だ。道のない山を登ったということは、きっと災害現場に向かった人がいるのだ。
 
おっ、かすかなチェンソーの響き。ほら、間違いない。現場はこの奥だ。
 
チェンソーの音を頼りに少しずつ方向を修正しつつ、進む。鬱蒼とした放棄林だが、森の奥に少し明るいところが見える。きっと、山崩れを起こして木々がなくなりギャップができたのだろう。
 
お、ついに道に出た。いや、道ではなく林内車の通った痕なんだが、間違いなく、この奥に人はいる。チェンソーの音もどんどん大きくなるよ。
 
……目の前にごっそりえぐられた谷が見えてきた。ここだ。
どうだ、いつもの遭難で鍛えたテクニックにかかれば、初めての山でも崩壊地の現場までたどりつけるのだ。
 
 
027 こんな現場。
 
見れば、左手は放棄ヒノキ林(と言っても、かなり雑木が入っている)で、右手は完全な雑木林。コナラが多いかな。そして、抜けた谷はあきらかに雑木林側。ヒノキも縁部分は巻き込まれて倒れているが、圧倒的に雑木が倒れている。しかも土砂と倒木がぐちゃぐちゃになっている。
世間のジョーシキとは逆に、天然林の方が災害に弱かったようだ。
 
そんな中、作業をする人。
 
040
 
伐る前に、木肌の泥をブラシで拭いつつ、バーを入れている。泥をそのままにして木を伐ったらチェンソーの刃が欠けてしまう。
 
ごくろうさんです。倒木を3、4メートルに刻んで崩壊地下部に積み土留めにするのだそうだ。単に刻んで処理するのではないらしい。しかも、計測して本数を記録しなければならない。補助金を使うからだ。その手間を考えると、(私には)気が遠くなるほどめんどくさい。
 
正直、いくら丸太を積んでも土砂は流出するだろうし、むしろむき出しの地表に早く草を生えるようにできないか。難しいよなあ。
 
 
その後、この崩壊地をどうするか話したのだが、ギャップになっていて日当たりはいいし、倒木だらけでシカも近づかないらしい。
 
ならば、育苗場はどうだ!ここでスギ、ヒノキだけでなく広葉樹の苗を作るのだ。今後、皆伐が増えれば需要は確実に出てくるから、売れるぞ。
土留めに見せかけてシカ柵を作ればよい。苗なら3~4年で出荷できるから回転も早い。所有者からタダで崩壊地を借りて、こっそり苗を生産して売るビジネスを展開しよう。
 
……という話で盛り上がったのでした(^o^)。
 
 

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コメント

帰り道にちゃんと遭難したのですよね? 期待しとります。

我が遭難テクニックを駆使すれば、遭難も意のまま。帰りは、中華料理店に3時間ほど遭難したかな……。

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