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森と林業の本

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2015/08/06

大きすぎるウナギに思う

気がついたら8月6日だった。つまり広島の原爆記念日なわけだが……。

 
昨日が「土用の丑の日」だったことを忘れていたのである。今年は土用の丑の日が7月24日と8月5日の2回あるのだが、昨日はあまり世間は騒がなかった気がする。
 
 
私は、ニホンウナギ(とアメリカウナギ)が絶滅危惧種に指定されたことから、ウナギは当分食べないことに決めている。だから土用だろうが丑の日だろうが、とくに意識することはない。
ただ、「ウナギの干物」が開発されたというニュースに触れた。
 
ウナギは蒲焼で食べるもの、というのが日本人の習性だが、実は蒲焼になるウナギには裏がある。寸法というか重さが決まっているのだ。1匹250グラム~300グラムのウナギでないとキレイに蒲焼できないのだ。 これより小さいのは、なんとか工夫できるのだが、大きいウナギは蒲焼に回さない。皮が厚くて小骨も多いという理由のほかに、1匹分が重箱に入りきれないから料理屋から嫌われるそうだ。
 
養殖の過程で生長しすぎたウナギは、結局刻んで総菜用にするらしく価格も2~3割落ちる。
 
 
それではもったいないと、静岡県と業者が大きなウナギを干物にする技術を開発した……そんなニュースを読んで、なんか気抜けした。
 
日本の漁業は、こんな話ばかりだ。穴子も大きいものは売り物にならない。卸業界は、流通に都合のよいサイズばかりを求めるのだ。(なんか、大径木は製材機を通らないから価格が落ちる、という林業界の話にも通じるわ。
 
干物のウナギは「大名ウナギ」と名付けて静岡県内で出回り始めたそうだ。味はどうなんだろう。干物だから塩味も加味されて、蒲焼とは違ってくるのか。いや、私は食べないけどね。
 
 
 
そこで思い出したのは、篠田節子の小説だ。
深海のEEL」(「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」所蔵)である。EELは英語のウナギである。
ストーリーは、レアメタルのパラジウムを大量に摂取し体内に溜め込む巨大ウナギが見つかって、その争奪戦を描いているのだが、その中で回転寿司チェーンの元締め水産会社が登場する。
 
そこで示されるネタづくりの様子がリアルなのだ。要約すると、こんな感じ。
 
巨大ウナギは細かく切断してしまう。それを真空調理器に入れて体液を吸い出す。スカスカになった身を水でさらしてから機械でミンチにする。そこにつなぎと合成糊料を加えて、,ウナギの長焼の形に成形。そのままではウナギの風味もあったもんじゃないから、タンパク加水分解物と甘味料、着色料などを添加。あとは、これにたれを付けて焼くだけ。立派な蒲焼になるのである。
 
もちろんこれは小説の中の話だが、ストーリーには関係ない業界話として紹介される。篠田節子はきっちり取材して書く小説家だから、結構現実に行われていることではないかな……。
巨大ウナギをバラバラのミンチ状にしてまた固める……ああ、木材をチップやそれ以下のファイバーまで砕いて、それをまた固めてできるのがパーティクルボードやMDFのようなファイバーボード類。つい木材を連想してしまうのは、ボクの悪い癖(~_~;)。
 
ともあれ、現代のウナギは絶滅を危惧される魚種であることをお忘れなく。
 
 
 
 
 

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コメント

ワシントン条約で規制されているのは、アメリカウナギ(Anguilla rostrata)ではなくて、ヨーロッパウナギ(A. anguilla)ですよね・・・

ウナギに関しては、この動画が、よくまとまってると思います
https://youtu.be/NwWGc2bZDig?list=UUTT45_Tps23AWbBXoBeY1kQ
全8回と長いですが、入門として見応えあります

アメリカウナギも昨年、絶滅危惧種に指定されました。
ヨーロッパウナギはもっと前から。でも、採取できなくなったヨーロッパからシラスウナギがこっそり輸入されているらしい……。

「絶滅危惧種」という、外国人による外国の機関である日突然決定されたような事を、これまた同様ある日突然にやおら受け売りで保護を叫んで回るというのも、実際はそれなりに胡散臭い姿では有る筈なのですけれどね。外国の機関が果たしてどのような研究及び自身達が我々の国の河川で棲息状況を調査したのか、いや、果たして実際にそれを行なったのかと疑問ですが。

加え、あのような全国各地のスーパーで日常的に販売されている事はおろか、専門店の存在すら何ら珍しくない状況でしょくされている魚だという事を彼らはキチンと先ずは理解しているのかも同様に疑問ですが。

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