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森と林業の本

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2015/08/07

記録者と時代の姿

昨日は8月6日、広島に原爆投下された日。

 
おかげでテレビでは原爆に関する番組がズラリと並んだ。70周年だからなのか、国会を巡る世情を反映しているのか、いつもより力の入った作品が多かったように思う。
 
なかでもNHKスペシャルやニュース23では、原爆投下直後の様子を再現する試みに挑戦した高校生たちを取り上げていたが、そこに動画も登場した。
 
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撮影者に関しては、特段説明がなかったが、おそらく藤波健彰 氏のものだろう。大正から昭和にかけてニュース映画を取り続けたカメラマンである。
 
彼は、多くの世界的スクープを撮っているが、戦争に限れば、多くの部隊や作戦に従軍している。最後は特攻機が突撃している様子を撮ろうと、一緒に出撃する計画まで進めていた。偵察機に乗って、特攻攻撃の様子をフィルムに納めようとしたのだ。
そのため福岡に向かう途中で列車が広島に停まった。ときは8月7日午前6時
原爆投下後1日と経たないときに現地に降り立ったのだ。
 
終戦で特攻作戦への従軍ができなかった。そこで残るフィルムをかき集めて、原爆映画をつくるため広島に向かうのである。だが、完成した映画は進駐軍に没収されるのだが……近年アメリカより返還されたのである。
 
私は藤波氏と一度だけお会いして、その後しばらくは音信があった。
もっと彼から当時の様子を詳しく聞いていたらよかったのだが……若かったからというより幼くて、その当時は、彼の残した映像の価値を十分に認識していなかった。
 
 
改めて記録者の凄味を考える。
記録する当時は、単なる一過性の出来事と思っている場合があるかもしれない。逆にスゴい大スクープと思った内容が、時代の中ではつまらないゴシップになってしまうこともあるだろう。ノンフィクションの世界でも、一断片の記録がその後の世界史の通説をひっくり返すこともある。
 
だが、なんと言われようと現場に立ち、記録しておくことが後世の大きな財産になる。その価値は後の時代に託してもよいのではないか。ずっと記録し続けていることで見えてくる世界もあるだろう。
 
 
今の私に何ができるか? 
 
やはり森林の姿を記録し続けようか。美しいだけでない、時代の姿を。今なら、今後全国に広がるであろう皆伐地の現状を見て歩くのも考えられる。
この時代、日本の林業はこのようにして森を破壊し続けたんですよ、という記録になるか、あるいは明治以来の林政を転換して日本に美林が造られ始めた記録になるか。ああ、前者になる確率が高すぎる……。

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コメント

社会全般の認識は、今でも「昔は良かった」「江戸時代は自然と調和した循環社会があって森林破壊等無かった」が大多数だと思います
「東海道五十三次の背景がほとんど禿げ山」「今の化石燃料の全ての代わりに木を燃やしていたのだから」などを折に触れて話していますが、林学関係者以外は、一般の方だけでなく研究者も含めて「初めて聞いた」というかたばかりです
ウナギの減少はその分野の研究者なら20年ぐらい前から常識でしたが、社会的に認識されたのがいつかはご存知の通りです
ジブリや江戸しぐさを始め、過去を美化したい人たちも多い中で、真実を伝えていくことは大事だと思います
まとまった情報を蓄積した書籍と平行して、一般の方への入り口として今後とも良質なブログを期待しています

ご著書の宣伝も堂々とどんどんされてください
特に初学者には他書との比較も重要で、「反対の主張している本もあるけど、どっちを買えばいいんだろう?」というニーズがあると思います
他書の(建設的)批判もあっていいと思います、「思いつき」ブログですし

記録者と広報者はまた別の役割だろうと思いますが、実質兼任しないといけませんね。
もともと拙著の宣伝になるかな、と思って始めたのが約10年前(笑)。だんだん目的はずれておりますが、意見とともに、埋もれた情報を発信する役割を得られたらよしとしています。

とにかく私は私のできる範囲で取り組むしかないのですが。

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