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2015/08/16

音響生態学から見た「択伐」

「真実」という言葉がある。が、ここでいう「真実」はなかなかの曲者で、ちょっと見方を変えたり、新たな事実が見つかると、あっと言う間にひっくり返ることがある。

 
ここでは、択伐について考えさせられた話。
 
林業でいう択伐とは、森の中から木を選んで抜き伐りすることだ。間伐とは行為としては同じだが、(森の)保育より(木材の)収穫の意味合いが強い。そして、択伐による収穫は、森にもっともダメージを与えない伐り方とされる。
 
それどころか、択伐を行うことは密になった森をすかして、残った木々の生長を高める効果があるとか、一時的に林内にギャップ(開いた空間)を作り出すことで林床にも光が射し込むことになり、そこに草が生えたり次世代の芽吹きや稚樹を育てることにもつながる、と言われる。
 
つまり、択伐は収穫と同時に森の保育にもなる、健全な森づくりにもなる、というわけだ。
 
もちろん、そのためには伐る木をどのように選ぶかが非常に重要で、その技術や知識がないものが選木をすると、台無しにもなる。
 
 
……長々と前ふりを書いてしまったが、上記は択伐に関する一般論というか「常識」だ。だが、これが「真実」だという確証はない。
 
 
そんな時に「音響生態学」に触れた。これは、実は新しい学問で、音響、つまり自然界の音を収集することで生態系を調べるというもの。もともとは、学問というより音楽・芸術に近かったのだが、意外なほど音には多くの情報が含まれていることがわかってきたのだ。
 
音響生態学の始祖であるバーニー・クラウスのプレゼンを聞いていると、択伐について触れているところがあった。
それによると、伐採業者が環境に全然影響がないという択伐を行い、実際に見た目は森が傷んだところはなかった。
 
 
 
 
ところが、伐採前の音とその後を比べると、まったく違っていたというのだ。しかも25年間経っても元にもどらない、と。 (4分15秒から始まる)
その業者の行った択伐がどんなやり方だったのかわからないから確定的なことは言えないが、少なくても見た目は悪くない、25年も経っている、という点がポイントだ。にもかかわらず……。
 
 
音から択伐を考えると、択伐の意味合いがまったく変わってしまうかもしれない。あるいは、別の解釈の仕方を考えなくてはならないのか。
 
 
さて、「真実」はどちらだ?
 
 

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

択伐は、畑だった場所が自然に帰るのとは違って、人為的な要素が強いからではなでしょうか?

いくら森に配慮してやっていても、森は「あんたたちまだまだわかってないね」って言われてるような気がします。

「元に戻るのに、あともう一歩なんだけどね」って言われているような気もするんですけど。

そもそも、どんな択伐の仕方を取ったのかわかりませんし、実際に鳥類や根虫類の調査をして種の減少を確認したわけでもありません。だから確定的なことは言えないのですが、少なくても見た目は問題ないような人為の入れ方でも、大きな影響を与えてしまったもしれないという恐れは感じるべきでしょうね。

とはいえ、今のところ択伐は、もっとも環境に配慮した伐採方法だから、これに代わる方法が見つからない……かといって、伐採自体を全面的にストップさせるわけにもいかない。難しいです。

個人的には、25年程度で森林環境が元通りになるとは思えないので、択伐が「環境に全然影響がない」というのは誇張だと感じます。少なくとも短期的には。
だから、もっと長期スケール(例えば伐期齢≒50年間)や広い範囲での調査が必要なのではないか、と。
また、自然状態での森林の変化(例えば植生遷移や山火事)による生態系の変化と択伐によるそれとを比較して、両者にどの程度の差異があるのか?というのも考慮すべきだと思います。

地域によって様々な反応を見せる森と人との一筋縄ではいかない非常に微妙でデリケートなコミュニケーションの方法を地道に積み上げていくしかないんでしょうね。
 
とはいえ、人間も生きていかなきゃいけないし、森もしかり。
森に今はやりのマインドフルネスが通用すれば、うまく共存できるヒントを教えてくれるかも…

…いや、甘いか。

択伐といえども木を何本も伐って出しているのだから、完全に影響がないとは言えません。ただ、人の目には違いがわからない。
仮に生息する動植物が以前と違っていても、生物多様性が維持されているのなら(種は変わっても種の数などは変わらない)、よしとしないといけないでしょうね。
 
でも、このケースで言えば、どうやら生物多様性は25年経ってももどらなかったようです。
森とのコミュニケーションは、視覚だけでなく聴覚も嗅覚も、もしかして味覚、さらに赤外線や超音波まで総動員してとる努力が必要なようです。

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