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2015/09/20

.国産漆と中国産漆

NHKが木曜日にやっている「所さん!大変ですよ」という番組がわりと気に入っている。

 
世のほとんど見過ごしそうな事件の中から拾ってきた不思議な事象を追いかける、というコンセプトで、なかなか渋いテーマを扱っているのだ。
 
そして前回17日に放映したのが、「あの“世界遺産”が謎の劣化で大ピンチ!? 」というもの。

(再放送はないけれど、オンデマンドで見られますよ。)

 
 
ようは日光東照宮を例に、各地で建物の修復工事後わずか数年にして塗料が剥げて生地が腐りだしたというのだ。で、謎解きは、漆塗りの部分を国産漆ではなく中国産漆を使ったから、としている。
 
どちらも同じウルシノキから採取した樹液である漆を使っているのだが、主成分のウルシオールが中国産は国産より7%ほど含有量が少ないから……という説明だ。
 
番組では、やはり中国産漆を使わず国産を……と話を向けているのだが、どうもうさん臭く感じる。
 
 
たしかに中国産漆のウルシオールは少なめかもしれないが、それで50年持つはずの漆塗りが3年で剥げるか? 
なんか騙されている気がする。漆の質より塗り方に問題があったんじゃないか。仮に中国産が漆成分が少なくて劣化しやすいのなら塗り回数を増やすなどの手もあるはずだ。
 
そもそも中国では漆の生産方法が日本と違う。
 
日本では殺し掻きと言って、10数年育てたウルシノキを数カ月樹液を掻いたら、その後は伐採する。
だが中国は通常は養生掻きと言って、次の年も掻くそうだ。それを何年続けるのか知らないが、当然樹勢に影響があって、成分にも変化が出るだろう。
 
また樹液を加工して漆に仕上げる工程にも違いがある。詳しくは書かないが、日本に来たときには劣化しているものが多い。また、混ぜ物をする話も聞いた。ひどいものは水飴を加えて増量しているというのだ……。
 
実際、日本に輸入された漆の原液を知っているが、かなり臭かった。本物の漆は爽やかなニオイがするというのに。あれは、腐敗しているんではないかと思う。テレビに写っている漆も、なんだか濁った色をしていたなあ。
 
 
さて、文化庁は、国宝や重要文化財の建造物を修理する際に国産漆を使用するように通達を出した。平成27年度から上塗りと中塗りを国産漆とし、平成30年度をメドに下地まで含めて「100%国産化」を目指すのだそうだ。
これを実現するには、年産2トンは必要らしい。 
 
漆生産を担当する林野庁は、国産漆の増産計画を作っているそうだ。もしかして、林産物にビジネスチャンス!? 
そこで現在の年産1トンを1,3トンにするという……(;´д`)。足りねえじゃないか!!!
 
が、ここでも不思議な点がある。
 
日本の漆のほとんと唯一の生産地と言ってよい岩手県の浄法寺町では、ほんの少し前まで国産漆が売れないからと減産していたほどなのだ……。
 
それに、番組でも指摘していたが、漆掻き職人の養成が急務だ。実は漆の質は、漆掻きの技術によっても変化するのだ。手早くしないと酸化してしまうし、切り込みの入れ方が悪いと木を傷めて樹液も水ぽくなる。そもそも漆にかぶれない体質でないと難しい。それなのに収入が低いために、後継者も少ない。
 
もう一つ。増産する前にウルシノキを植林しないといけないだろう。2倍にするなら2倍の面積に植えて、10年以上育てないと樹液が採取できない。
だがウルシノキは風下に立つだけでかぶれると言われるもので、あまり植林は歓迎されないだろう。しかも、ある程度平坦な土地でないと漆かきはできないから、場所の確保が大変なのである。
 
 
この番組、もうちょっと突っ込めば、もっと「大変ですよ」な暗部が出てきたのにね。
 
 
 
 
 
 

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