今日は吉野に仕事があって、朝から出かける。
が、なんと同時刻に谷林業が村尾行一氏(愛媛大学名誉教授)を招いての講演会を開くという。しかも朝9時から午後4時まで!
仕事は外せませぬ。吉野から谷林業の事務所まで1時間半はかかるからなあ。しかし……幸い夕方まであるというのだから、終わり頃でもよいから顔を出そう。
村尾氏とは、これまで数度お会いしているから、別に初めて会いたい! というわけではない。が、それでも固執したのは、私にとって村尾氏の本こそが原点だからである。
私は、林学科出身であるし、それまでにも森林関係の本はかなり縦横に収集して目を通している。が、頭を打たれたようなショックを受けたのが、この本だ。
山村のルネサンス(新版) 都市文化社 1986年刊
これこそ森林、林業、山村問題を縦横無尽に論じている。(ただしまとまった本ではなく、幾つかの原稿を集めたアンソロジー的である。)
それまで私がモヤモヤと抱いていた林業観を打ち砕き、山村と林業と森林の関係に目からウロコになった。それ以後、私は焼畑関係の本を買い集め、実地で焼畑の探訪を始めた。宮崎県椎葉村のほか、ボルネオのイバン族の村まで訪ねた。なぜかフルーツトマトも追いかけた。なお、ファンレターも送った記憶がある。
ちなみに、ときは1980年代、私はまだ会社員だったのだが。
いわばこの本は、私が森林ジャーナリストとなる端緒になったと言って過言ではない。
村尾氏の本は、その後もたいてい読んでいるが、近著はこれ。
ちゃんとサインをもらいました\(^o^)/。……しかし、なぜ「山村のルネサンス」も持って行かなかったのだろうと、後で後悔した。どうせなら「東濃檜物語」も、「人間・森林系の経済学」も「木材革命」も……。
残念ながら、私が到着したときは、もう講義は終わっていたのだが、その後も「独り言」を繰り返されたので、そこそこ村尾節を聞けたと思う。
また終わってからの休憩時間に囲んで話もできた。
ちなみに以前あったときは、まあ、コテンパンにやられている。こちらの素朴な林業に関した意見や知識などはあっと言う間に、林業界の碩学であらせられる村尾氏の毒舌に吹き飛ばされるのだ。
それでも、あんまりいやな気分にならないのが不思議。(もっともいやな気分になる人も多いらしく、敵が多いのはそのせいかな。。)
が、今回お会いして、村尾氏もお年を取られたのか随分丸くなった印象だ。口ぶりも優しい。考えれば80歳を超えておられるのだから。
そして、私もその分年をとっているので(^^;)、それなりに知識も身につけて、しっかり言い返す術を身につけた。
焼畑のこと。木材輸出のこと。里山という言葉の起源について。北山杉に四谷林業。山国林業。吉野杉の素性のこと。吉野林業全書のことなら負けんぞ( ̄ー ̄)。
こう私が言ったら、どう言い返されるか、ヒヤヒヤしつつ言い返す。ああ、このゾクゾク感がたまらん(笑)。案の定、ピシャッと再び言い返されたり、おや意外なことに認めたよ、とか。こんな丁々発止感覚は久しぶりだ。
ところで村尾氏は、谷林業の動きにしごく満足そうであった。「一度は日本の林業に絶望した身……」とか言っていたが、新たな希望を持ったのではないか。
なお、拙著『森と日本人の1500年』を贈呈した。ボロクソ批判されるのかも、と思いつつ、それが楽しいのよ、と私もマゾヒスティックな気分を楽しんでいる。
……ところで。今日のお昼は、川上村で食べた素麺。
メチャクチャ美味かった。川上村の素麺は、隠れた名産ですぜ。
十分に村尾先生との再会を楽しまれたようですね。
気分的にすっきりとされたでしょう。
今や、村尾から田中の時代です。
頑張って下さいませ!
投稿: しゃべり杉爺 | 2015/09/07 22:11
その間に「高桑の時代」が入っているんじゃないですか(^^;)。
投稿: 田中淳夫 | 2015/09/07 23:10