ワタミが介護事業から撤退して身売りを検討しているそうだ。一方で有料老人ホームの虐待やナゾの連続転落死事件も話題を呼んでいる。
そこで、ちょっと介護業界の現状についての記事や論説を読んだのだが、うむむむ、と唸ることしきり。
ワタミは全国に介護関係で112施設も展開している。約10年前に「介護は成長産業」と見込んで参入。美味しい食事や丁寧な応対など質の高い介護を売り物に展開していたわけだが、本業の居酒屋事業が傾いたため、あっさり介護事業は投げ出すことになったよう。
スタート時は、それなりに高い理想を掲げていたはずだが、本業が危なくなると理想など吹っ飛んだというのがことの真相らしい。
で、気になるのは、「成長産業」のはずの介護事業なのに、買い手に同業者が名乗りを出る様子がないこと。門外漢というか、新規参入を企てる損保企業などが手を挙げるだけ……。
どうやら介護事業のプロからすると、介護業界の将来性は厳しいらしい。過当競争が始まっているほか、サービス付き高齢者むけ住宅(サ高住)など低料金施設に顧客を奪われ、介護保険料も絞り込まれ……。考えてみれば、金のない高齢者の方が圧倒的に多い。
そして最大の難関は、人材確保だ。恒常的に足りないのに加えて、他者の事業を引き取っても、オペレーションの方針などが違うと従前の人材が使えず、すぐ辞める。
イチから適性のある人材を育てるシステムもなければ余裕もない。給与は安くて、定着しない。給与が安いゆえに誇りや使命感も育たない。結果として事件・事故を起こしがち。
……このような事情を知っているからこそ、ワタミの事業を買い取ろうとしないのだそうだ。
……なんか、林業界と似ていると感じた次第(^o^)。
ここ10年。「林業は成長産業」と持て囃されて、新規参入も増えた。山林の取得もかなりの規模で行われている。バイオマス発電のようなイロモノに飛びついたり、先を考えない皆伐などの生産方法を取り入れたり。
目先の利益を追ってバイオマスだとか皆伐を拡大すれば、すぐに資源は枯渇するだろう。
利益が出なくなれば、森林や林業への思い入れは弱いからすぐに投げ出すだろう。
たとえ50年100年先まで考えた理想を掲げて参入しても、本業がしっかりしていないところは、厳しい情況だ。森林事業は短期間では赤字確実だけに、理想を支える本業なしでは立ち行かない。
森林経営の経験が豊富なところ、林業・木材業界に詳しいところほど、政府の「成長産業!」音頭に慎重だ。
そして人材が重要なのはいうまでもない。慢性的な人手不足だが、簡単に増員できないのは、林業は地域性が強くて、人材育成も時間がかかるからだ。技術だけでなく、広範な知識も身につけなくては危険なのに、ちゃんと育てるシステムもない。旧態依然で理不尽な慣例にしばられている。
あげくに給与は安いというより、前時代的な日給制?
適性や十分な教育なしで現場に投入すると虐待……じゃなくて深刻な事故が起きるだろう。
林業界のワタミとか、虐待ホームはどこだ? ……なんて考えてしまったのであります(笑)。
コメント