このところ「あさが来た」と土倉庄三郎の話題ばかり続いたが……。
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サントリーホールディングスがまた、森を手に入れたニュースが流れていた。
同社の九州熊本工場は、すでに水源域「天然水の森 阿蘇」を設定しているが、約116ヘクタールを追加して、総面積を約388ヘクタールに拡大したそうだ。
これは、サントリーが飲料メーカーであり水こそビジネスの原料だから、自社工場で汲み上げる地下水を育む森林面積を整備していく計画を立てているからだ。計算では6000ヘクタール程度の水源林を整備したら、汲み上げ量に匹敵するらしいのだが、今では2020年までに1万2000ヘクタールを目標にしているそう。
林業を本業としない会社の森林整備として、サントリーの取り組みは、もっとも成功した事例ではないかと思っている。
なぜなら担当者は「これはCSRではない。我々の商品の原材料の調達だからビジネスの一環だ」と言っていたからだ。
私は某ビール工場で、「地下水だけでは足りないので、水道水をさらに濾過して使っています」という言葉を聞いたことがあるのだが(~_~;)。まあ、揚げ足取りをせずに、森林整備への情熱をよしとしよう。
実は、このご時世、どんな産業なら森林に投資してくれるか考えたことがある。あくまで投資としてだ。一過性のCSR(社会貢献)や資産として森林を寝かすのでは、いつ投げ出すかわからない。
ようするにビジネスとして、林業の振興に寄与してくれる企業はどんな業界なら可能か、というのを考えていたのだ。それは、かつて吉野では「借地林業」と言われて行われた形態なのだが……。
そのためには、森林が生み出すもの(精神性なども含む)と本業がリンクしないといけない。少なくても森林が利益や会社組織にプラス要因(会社のステータスとか福利厚生とか社員の士気を高めるとか)につながらないと投資とは言えないだろう。
たとえば建設業は木材という点で大いに関係あるのだが、どうも森林に興味を持つところは少なそうだ。住友林業はハウスメーカーとして稼ぎながら山林を持っているから、このケースに当てはまるが、むしろ例外だろう。それに住林の家は、ほとんど外材製だし。
建材は安く調達する発想が強くて自前より価格優先に買いたたく方向に走りがちなのか。
また大手不動産会社も、森林を持っているところは少なくないが林業経営までに至っていない。ほとんど資産管理程度だ。
マテリアル(鉄・非鉄金属)会社の中には森林を持って整備しているところもある。これは経営にプラスというより鉱山で山を破壊している罪滅ぼし?
一時は有効なのは、宗教法人ぐらいしかないかと思ったこともある。宗教団体ならば寺院などの用材確保だけでなく、森から神性を得るためとか、霊園事業とか、いろいろ展開できるではないか。
この可能性は今も否定していないが、大規模な森林所有が可能な宗教法人の数は多くないだろう。小さな寺院や神社が小規模でも、ていねいに森林を整備する意欲があればよいのだが。
そこで思い至ったのは、医薬品など遺伝子産業。新たな有用遺伝子を探すのに、森林内の生物が使えるからだ。今は熱帯雨林や深海底などを狙う業者も多いが、最近は遺伝子資源の国外持ち出しを神経質に取り締まり、また利用時にもロイヤリティーを要求する国家も増えてきた。
しかし、未知の微生物などは日本国内にも山ほどいるのだ。森林土壌や植物寄生型の菌類・細菌類は広大な未知空間なのである。だから、森林を所有することで自社だけがじっくりと調査・探索するフィールドを持つ価値はあるのではないか。
そして、もう一つの可能性として、水関連の酒や飲料メーカーや食品関係だろうな、と考えた。食料メーカーは、農業に投資した方がより近く、森林には結びつきにくい。だが飲料や水関連企業は水源涵養の発想から有望かも、と思い至ったのだ。
サントリーはまさにその一つに当たる。ただ森林を所有するのではなく、あくまで森林整備に協力する提携関係というのが弱いと感じるが。
ほかにも水関連の会社なら結構あるはずだ。酒や飲料のほか、ミネラルウォーターを扱う会社もある。そんな会社のどこか、森林投資しませんか。森林を購入するとか、99年間租借するとか。外資でもいいよ(⌒ー⌒)。ただし、真面目に林業に取り組むことが条件だ。
本気で森林経営をめざすなら、応援しますけどねえ……。
住林さんも自分とこの社有林の国産杉を搬出して新築住宅の杉に使ってるなら、まさしくCMどおり森を育てているんですけど、実際は・・・。
いかに日本の杉が搬出コストと見合っていない値段になっているかを知っているなら、住林さんが自社で経費をかけてわざわざ伐採するわけないですからね。
30年ほど前は住林さんも地松梁丸太を使ってくださっていたのでこれ以上は口を塞ぎます(笑)
森林ビジネスに関しては国産松業者としては雌松から生えてくるマツタケが高級になればなるほど、松山を買う業者が増えてくるかなぁと思いましたが松くい虫で近場で入れる山がマツ枯れになったこととマツタケが高級すぎて売れないのかあんまり聞きませんね。
50年ほど前は伊賀でも赤目滝や青山などマツタケ取り放題みたいでしたから、きっと生駒のほうでもマツタケ生えまくりだったと思いますよ(笑)
投稿: 山崎木材有限会社 | 2015/10/01 07:14
住林もまったく自社の山の木を使っていないと言い切るわけではありませんが、住宅建設と森林所有があまりに乖離していますね。
生駒山でマツタケ、取り放題だったそうですよ、父の少年時代は(笑)。今は松林そのものが少なくなりました。
投稿: 田中淳夫 | 2015/10/01 10:34