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2015/09/08

食物連鎖から食物網へ

ダーウィンの「種の起源」を紹介するテレビ番組を見ていると、

今は「食物連鎖」ではなく「食物網」、という言葉で出てきた。
 
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なるほど。食物連鎖とは、下位の生物が上位の生物(主に動物)に食べられて 、最後に頂点に立つ動物がいるという図式。ダーウィンの進化論の世界から登場した概念だろう。
かつての生態学の教科書には、必ず載っていた言葉、そして図だ。
 
しかし、現実には食べるものも食べられるものも複数あって、また時に食べられる相手が変わったり関係性が逆転する。それは連鎖というより網目のような図式になる。だから食物網か。そんな複雑な種と種の関係を指摘していたのは、ほかならぬダーウィンだという。。。。
 
つまり世間は、壮大な誤解を何世紀にも渡って続けていたことになる。
それどころか、弱肉強食とか自然淘汰の概念を人間社会に当てはめて、人種の優性主義や格差・階級社会を自然の摂理だと曲解することも行われてきた。
 
 
私も、理屈は知っていたが、すでに言葉が「食物連鎖」という言い方は古くなって「食物網」と言い換えられているとは知らなかった。ああ、旧世代だなあ。
 
しかし、肝心の理論はいまだに古いままそこかしこに根付いていないか。
 
シカが増えたからシカを捕食するオオカミを野に放てば生態系のバランスを取り戻す、とか真面目に唱えている学者もいる。
 
林業だって、いまだに外材輸入を抑制すれば国産材が売れる、という主張が根強い。だから関税をかけろとか、セーフガードを発動しろとか。外材がなければ国産材を買うと思っているのだ。
 
しかし、実際はオオカミを野に放しても、シカやイノシシはほとんど捕食しないだろう。家畜や家禽を襲う可能性が高い。沖縄ではハブ退治にマングースを放したら、ハブよりヤンバルクイナを餌にしてしまった。
同じく外材を規制しても、消費者は使い勝手の悪い国産材よりも鉄骨やコンクリートに流れるに違いない。そして木の文化は廃れて木材自体の消費量が減少するだろう。
 
「食物連鎖」は間違っていた(少なくても舌足らずだった)としたら、今度は食物網」の考え方を社会に持ち込んだら、また新しい世界観・経済観が登場するのではないか。
 
国産材の需要を増やしたければ、用途を建築ばかりに固執するんじゃなくて、さまざまな商品アイテムを増やすべきだろう。家具や生活グッズ、土木資材、内装・外装……。さらに木材から食品産業や化学産業を起こすなど「捕食者」を増加させることが重要ではないのかね。
 
いっそダーウィン林業論を打ち立てられないか……なんて夢想してしまう。
 

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