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森と林業の本

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2015/10/17

森林総研の「土のチカラ」

昨日は、森林総研関西支所の公開講演会
「森の恵みと土のチカラ~ささえ合う森と土~」に顔を出してきた。

 
タイトルどおり、国際土壌年に合わせて森林土壌をテーマにした内容という触れ込みだった。
実際には、直接的な土のことは思いのほか少なかったのだが、私としてはちょうどよかった。 
なぜなら、今度「土壌ジャーナリスト」として講演の依頼が来ており、そこで話すネタを考えていたからである。これは使えるなあ……とメモをしながら聞いていたのであった(⌒ー⌒)。
 
001
開演前。映し出されているとおり、講演中の撮影は禁止されてしまった……。
有料ではないのだから、オープンにした方が情報も拡散するのに。ストロボたくわけでもないし。ちなみに私の講演は、オープンである。
 
 
 
さて、講演内容で、私の琴線に触れたこと。
 
まず会場からの質問で「ナラ枯れの後は、何か植林した方がよいか、あるいは放置した方がよいか」に対して、「放置しましょう」という回答が出たこと。
 
いやいや、心強い(^o^)。正直、私はナラ枯れに対して、防除とか後対策などは、何かしたくても物理的にできないだろう、という意見であったが、それを科学的に「植林なぞしなくてもよい」と断言されたのは嬉しい。しかも海外の事例も引いて、無理に植林してもろくなことがないよ、というのだから、万歳である。
 
もっとも以前の講演会では、ナラ枯れの後は、なかなか後継樹種が生えて来ずに元の植生にはもどらない……という研究結果が発表されていたと記憶するのだが?
 
会場にも、ナラ枯れ関係のパンフが幾種類か置いてあって、そこには「殺菌剤の注入による防除」や面的管理について解説しているのだ……。
防除だって、単木ならともかく面では無理じゃないかなあ。
 
 
 
もう一点。「森林と災害の変遷」についての発表があった。
ここでいう災害とは、基本的に水害(洪水と、土砂崩れ)を指すが、現在がいかに水害が少ないか、という世間の思いを逆撫でする(^^;)内容だった。
 
つまり江戸時代から明治にかけて、いかに山が荒れていて、災害が多発したか、人命や財産が失われたか、という事実を歴史的に追いつつ、戦後、とくに1990年以降は災害が激減したことを示した。もちろん、それは治水対策としてのダム建設が進んだことや、戦後の植林木が育った結果である。
 
この内容は、私も結構力説していて、『森と日本人の1500年』でも触れているのだが、本当は演者に質問したかったことがある。
 
それは、今は森が豊かになって災害が減少しているが、林野庁が皆伐推進に転じた今、広範囲な皆伐跡地が広がった場合、災害は起きないのかという点だ。仮に目安にしている1か所の皆伐面積が5ヘクタールであっても。実際に皆伐が始まったら、ストッパーは効かず拡大し続けると思う。
 
一度伐採すると、いくらすぐに植えても20年間は災害防止能力が落ちると説明したが、これから災害再発時代がやってくるかもしれない……。
 
とまあ、言質を取りたかったなあ。

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