今宵のマイフェイバリット[お気に入り]は、ツイッターでぴりひばさんがアップした漫画である。
ここでブランド材、つまり秋田杉とか吉野杉とかの「木材市場における意味」を解説している。そして「千葉だろうが群馬だろうが、どの杉にもブランド材になれるチャンスがある!」と力説しているのだ。つまり、全国からブランド産地に木材が集まってくる現象を示している。
ま、林業界にいたら、知っている人なら当然のように知っている事実。が、私的にウケタのは、それだけじゃない。首をかしげる一般人に、
「納得いかないようだけど、木材業界に長くいたら
『ブランド名がついた時点で、品質は確かなんだし、いいんじゃないですか』
となる」
と喝破しているところ(^o^)。
そうなんだな。私もそうしたセリフを聞いたことがある。どこの原木でも、それが吉野杉なり秋田杉に化かせられる品質があると見たからブランド名を博したのだからいいじゃないか、売る方もそれで高く売れるんだし、という発言があるのだ。
正直に書けば、私もかつては「そうか、木材は産地より品質なんだ」と納得していた時期もある。ブランドとしては産地名を記しているが、本当に示しているのは品質である、と思い込んだわけだ。
厳密に言えば、見た目、つまり木目や色などがそれなりに○○杉と似ているというだけで、ちゃんと検査したら強度やら耐久性やらは産地ごとに差は出るらしい。おかげで「この産地の杉は、水に強いと聞いていたのに、最近はよく腐る」なんて証言が出てくる。
が、木材業界の人にとっては「売る時に見た目がそっくりならいい」「騙される方が悪い」ぐらいの感覚なのだろう。悪いことをしている、という自覚も薄い。
今なら、はっきり言える。これは産地擬装である。産地とかブランド名は、それを手にする人にとっては、その地域のイメージであり、木材産地の持っている歴史やら人の顔含めたドラマ全体なのだ。それに金を払っているのだ。
だから、産地擬装材を売るのはユーザーに対する裏切りであり詐欺行為である。
そして産地擬装が国産材の評判を落としていることも知るべきだ。
そのことを理解しない業界人は、もう時代遅れなんだが。。。いますね(^^;)。
現在は、かなり改善されたと聞いている。が、根絶とは言い難いなあ。おそらく、出荷レベルで別の産地を擬装されたら見破れない。
ただ、例外的なブランド材もある。
たとえば東濃檜ブランドは、厳密では産地ブランドではない。非常にレベルの高い製材を行う製材所が集まってつくった製材ブランドである。だから、決まった製材所を通さないと冠することができなかった。扱うのも原木ではなく製材だ。
東濃地方のヒノキならどれでも東濃檜と呼べるわけではない。逆に言えば全国から集めてきたヒノキ材を精密な製材をしてていねいな梱包をすると、東濃檜ブランドを冠して出荷できる。
……まあ、スタートはそうして生まれた東濃檜なんだが、今はどうなっているのか、現状は把握していないよ……。
私もこの漫画大好きでいつも楽しみにしています。書籍化して欲しいです。
投稿: 鵜方湖 | 2015/11/09 08:00
ぴりひばさんに、激励のメッセージを(笑)。
投稿: 田中淳夫 | 2015/11/09 09:04
すみません、今回のテーマとまったく関係なくて申し訳ないのですが、日曜日のNHKスペシャルで三内丸山遺跡の縄文人が1万年以上狩猟採集民として生きたのは遺跡を覆うばかりの栗林があったから、という話や、それを成立させたのが1万5千年前の植生の繊維でそれまでの針葉樹林から広葉樹林になったから、などの話がありました。田中先生の「森と日本人の1500年」には縄文時代の記載がないので、ぜひこのあたりのご高説をブログで取り上げていただけたらと思います。原稿料も払わない原稿依頼のようで大変恐縮ですが、ぜひよろしくお願い申し上げます。
投稿: しんたろう | 2015/11/09 20:40
あはは。そのうちに。
でも、三内丸山遺跡は私も訪ねて、その際に縄文時代についてはブログに書いた記憶がある。
拙著『だれが日本の「森」を殺すのか』や『森林からのニッポン再生』でも「日本はクリの国」として触れたかな。
投稿: 田中淳夫 | 2015/11/09 23:12