いつも散歩している生駒山の森林公園。
この公園内には、大小さまざまな道があるが、あちこちに伐採跡がある。
伐られたのは、コナラの大木だ。伐採されたのは、ナラ枯れで枯れた木々である。
こんな感じ。直径40㎝前後はある。
だが、この切株をよく観察すると、面白いものが見えた。
わかるだろうか。断面に小さな穴が一面(と言っても辺材部が多い)に開いている。
これこそ、カシノナガキクイムシが潜り込んだ穿孔だろう。幼虫が穴を掘って、そこかしこにナラ菌をばらまいたから、枯れるのだと言われている。
これを見ると、ナラ枯れした木から木工用の材を伐りだすのは難しいかもしれない。
さて、ここの森には、若返りを図る計画があった。コナラ林で過熟化して照葉樹林化も進んでいるため、老木を伐採して林内を明るくする予定だった。ところがこの公園でスタートしてすぐ、当時の大阪府知事によって予算が半減されたために、ほとんど行えなくなった過去がある。
ところが、ナラ枯れが蔓延したために、さすがに放置できなくなったようだ。なにしろ遊歩道沿いのコナラが軒並み枯れているからだ。もし枯れたコナラの大木が倒れて、道行く人を傷つけることになったら大騒動になるだろう。
おかげで、今は伐採真っ盛り。期せずして、かつての若返り計画が進んでいるようだ(^^;)。
伐られた後は、巨大な樹冠が除かれることで空が広くなり、地面に光が射し込んでいる。
まあ、写真のように伐採して、そのまま幹を谷に落としてしまっているところが多いけどね。本来は燻蒸しなければならないのだけど。これでは放置した幹から、またカシナガが飛び立つだろう。当面、ナラ枯れは収まりそうにない。
ともあれ、コナラがあまりに太く育っところにナラ枯れが流行して枯らしてしまうというのは、自然の摂理と呼んでよいのだろうか。
枯れる前に伐採すると多くの広葉樹は萌芽更新(切り株からの芽生えで再生)しますが、枯れたナラ類を伐っても萌芽しません。常緑の中低木種は萌芽して、貧相な林に移行しがちです。管理方針を決めるのに、先々20年のことが考えられていないのが悲しいです。枯れた木の処理に追われるよりも、被害発生前の決断の方が将来の管理予算は少なくて済みます。
ナラ枯れ伐採木は、割って薪にすると殺虫効果があるのですが、転がしておくとまたカシノナガキクイムシが羽化して被害を増やすだけです。
このことを知っている者がもっと情報発信できると良いのですが、無料冊子の配布や出前講義などを頑張っても、森林保護専門家、行政、現場との連携がうまくいかないまま、残念な処理となっていることが多いです。自然の摂理、自然、あるがまま…森林に絡めてよく聞く言葉ですが、心地よさで安心していないか、と、気になります。
投稿: 黒田 | 2015/12/24 10:39
多くの自治体のナラ枯れ対策の担当者は、知ってか知らずか、枯れてからしか伐採しません。しても、伐採幹・枝はもちろん、切株も残していますから、おそらくここが来年度以降の発生源になるでしょうね。
また生駒山に関して言えば、枯れた後によく生えているのはソヨゴやアオキでしょうか。 私はソヨゴが比較的好きなので貧相とは思いませんが(^^;)、高・中・低木そろった多様性のある森とは言えないかもしれません。
ただカシナガが在来昆虫であり、古来より太いナラ類を枯らしてきたことを思うと、こうした生態系の混乱も「自然の摂理」の一部なのかなあ、と思います。ソヨゴの森も、100年もしたらカシナガの大発生は鎮静化し、またナラ類など高木が混じって来るでしょう。
投稿: 田中淳夫 | 2015/12/24 12:08